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1年生デザイナーの1週間



1年生になったら~ 1年生になったら~♪  ということで、デザイナーという職業に憧れる読者のみなさんに先駆けて、一足早くデザイナーになった先輩デザイナーの1週間を追いかけるのが、このコーナーです。夢を現実にした新人デザイナーの仕事と生活ぶりは実際どのような感じなのでしょうか? 毎月第3週に、その曜日の出来事を毎日更新でお届けします!


今月の1年生デザイナー

矢部佳奈子さん(ジュン・キドコロ・デザイン)

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木曜。JKDで手がけた新刊をちょっとご紹介。


7:00 起床

エリックは少し寝坊。「どうして起こしてくれなかったのよう。ひどぉ~い。」と、文句を言われる。エリックは日本語の言葉遣いがたまにおかしい。日本語学校で勉強はしたけれど、初期段階で日常会話のほとんどを私から吸収しているせいか……どこか女言葉なのだ。仏語講師の仕事をしてますが、授業中は滅多に日本語で話さないため、たまに話すと生徒さんから笑われることもあるそうです。が、あえて直さない。



エリック、朝のシャワーから出て独り言。「不思議だけど、今日は昨日より起きるのは遅いのに、今は早い。理由は、ヒゲ」。????? ヒゲ剃りしなかった分、シャワーの時間が短かく済んだってことか。理由がわかってるなら、不思議なことなど何もないではないか。朝は寝ぼけてるのか、よくひとりで呟いています。しかも変な日本語で。


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▲朝食の風景。バゲットは固いので齧るとこんな顔になります。「そんな写真撮るなんて、ひどぉい!」(エリック)


9:10 会社へ


10:10 出社&掃除

会社の本棚です。今までにデザインをした雑誌や本やがたくさん並んでいます。


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▲ジュン・キドコロ・デザインで手がけた本の数々


絵本や児童書がたくさん。子どもが遊びに来ても、きっと楽しいラインナップ。ボスの城所さんはハードボイルドな外見なのに、かわいいデザインのものもたくさん作っている。人は見た目で判断できない。奥が深い。



この本、売れているらしいです。クリスマスプレゼントにいかがでしょうか。


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▲『おおきな木』シェル・シルヴァスタイン著、村上春樹訳(あすなろ書房)


村上春樹さんの新訳については賛否両論あるそうですが、私はこちらの方が好きです。原書の雰囲気が残ってる気がします。タイトルまわりのデザインも原書に近い雰囲気になっています。ちなみに絵本のタイトル文字は、けいこさんがよく作っています。いいな。



絵本のタイトルデザインは、一般書籍とはまた違うアプローチが必要なんだそうです。子どもの感性に訴えるものを作るということかしら。いつか私も担当できるようになりたい。生まれた時からずっと繋がっていて今の自分があるはずなのに、子どもの頃の気持ちは大人になると忘れてしまいがち。知識が増えると、失う感受性もある。少し悲しい。両方欲しいと思うのは欲張りなのだろうか。子どもの頃に読んだ本は、その後の思考回路にかなり影響すると思っています。子どもの頃に、私もこの絵本に出会っていたかったという本に、たまに遭遇します。



講談社の「15歳の寺小屋」シリーズ。


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▲『15歳の寺子屋 ひとり』吉本隆明(講談社)


吉本隆明さんで10冊目となる「15歳の寺子屋」シリーズ。全部並べると、カラフルできれいなシリーズです。一応、私が担当させていただいてます。人生の先輩たちが15歳のみんなに語りかける自分の青春時代について。薄い本なので、それほど深くまで言及してませんが、25歳でも35歳でも45歳でも読んだらいいと思う内容です。人生なんて自分の分しか送ることはできないのだから、少しでも知る機会があるのなら、たくさんの人の人生に触れてみたい。いろんな生き様。正解は、ない。それが、ときどき、つらい。



12:50 お昼ごはん

事務所で電子レンジと電気ポットを同時に使ったら……なんとブレーカーが落ちた。初めてのこと。壊したのかと思ってヒヤヒヤした。城所さんは悔しそうです。事務所を作る時に、配線にはかなり気を配ったらしい。パソコンが一気に全部落ちたら一大事だから……どうやら給湯室は盲点だったみたい。経営者って大変だと思う。いろんな事に気を配らなければならない。デザインが出来るだけでは経営者にはなれないんだと、実感したお昼休み。



14:00 『SALUS』インフォメーションページ

『SALUS』のインフォメーションページの原稿が来る。『SALUS』は、以前は関口さんと水野さんでやっていて、半年ぐらい前から、私もやらせてもらえることになりました。インフォメーションのページはいつもドキドキします。テキストのナカグロやダブルコロンの全半角や、文字ヅメの設定やら……そういう細かい文字周りについて、けっこう見落としがちで、いつも「よし!」と思って出すと、後からたくさん赤字が入って自分のダメっぷりを思い知らされる。たぶん校正の仕事は私は向いてないだろうな……。今回こそは、と立ち向かう。水野さんは、こういう細かいところによく気がつきます。仕事が丁寧。



16:00 オビの修正

すでに色校も出ている『ふたりのサンドウィッチ』のオビに追加の原稿が入る。急いで取りかかる。なんやかやと、なかなか手が離れない、この絵本。終わりまであと少し。



17:00 『スコアブック』中見出しについて

細かい直しが入りつつも、オビの再入稿完了。『スコアブック』次巻の中見出しの原稿をもらう。『スコアブック』シリーズは、伊集院静氏による、小学生の女の子・ミサキが野球チームを作る話です。中見出しの文字は小学生の女の子の書き文字風に作っています。一年前、前任者の岡本さんが産休に入ったときから、私にバトンタッチして、その書き文字を書いています。途中から担当しているため、岡本さんの筆跡に似せて書かなければならず、さらにむずかしい。実は巻を重ねるごとに自分の筆跡に近づけようと目論んでいたのだけど……講談社の担当者さんはすぐに変化に気付いたらしい。はあぁ、がんばったのにぃ。まあ、筆跡なんて簡単に真似できないから、サインというものが成立するのですね。


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▲『スコアブック』シリーズの表紙と中見出し


さらに、次の仕事をもらう。くもん出版の新刊本、小学校中学年むけの児童書です。鬼子母神のお話らしい。雑司ヶ谷の鬼子母神堂を、今年の夏に散歩したのを思い出す。



まずは、本文組みと章見出しのデザインです。城所さんに、物語の概要とデザインのだいたいの指示をもらう。本文組みを始めからから作るのは、久しぶりのこと。シリーズものだと、前に作ったフォーマットを流用してしまうことが多い。本文組みを最初から作るのは、物語がここからちゃんと本の形になっていく始まりのようでちょっとうれしい。書体と行間の印象で物語のイメージもけっこう変わるものだから。



19:30 退社



20:30 帰宅→すぐに外出

帰宅後、すぐにお米のおすそわけ(重い)を持って、待ち合わせ場所まで自転車を飛ばします。お渡し相手はスミスさん(と言っても、純粋な日本人)。

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▲映像ディレクターのスミスさん。ピース!


スミスさんは主に音楽PVやCMを撮っている映像ディレクター。その昔、彼の作品に何度か出演したのがきっかけで、仲良くなりました。以前、私の参加しているユニットのPVも作ってもらう感じで話が進んでいたこともあったけれど、偉い人やメンバーのなんやかんやで話が流れてしまって、気まずくなってしまったこともあった。でも、今は良いお友達。おいしいバゲットやかき氷を求めて、あっちこちふたりで出歩いてる。



スミスさんは面白い。ちょっとネガティヴなところがまた面白い。フジファブリックのシュールなPVは、だいたい彼の作品です。甲本ヒロトの『天国うまれ』のPVも素敵です。切なくも笑える。哀愁メキシカン。ヒロトに「かなわない夢はない」と歌われると、そんな気になるから不思議だ。そんなさまざまな想いを映像に詰め込める、スミスさんの笑いのセンスが大好きです。今は少しヒマみたい。どなたか仕事を……。私の風邪が完治したら、また一緒にどこか行く約束をして、家へと戻る。



21:30 帰宅

家のドアを開けると、何やらかっこいい音楽が! DJクラストの動画を見ながらエリックがノリノリ。来週末、代官山UNITで行われるドラム&ベースのイベントのゲストDJ。ロブ・スミスも来日予定。楽しみです。しばし、ふたりで盛り上がる。LOVE & PEACE & MUSIC☆



26:00 就寝



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