メガマックファンのための笑えるスペシャルサイト「MEGA MACSHOW」(日本マクドナルド)やFlash技術を駆使した地図検索サービス「スゴイ地図」(リクルート)など、常に新しいクリエイティブ、新しい ユーモアに挑み続けているのが(株)コスモ・インタラクティブの阿部淳也氏である。クリエイティブすることが好きで、ユーモアがとても大切だと語る阿部氏 に、さまざまな話を伺った。
第2話 細かい演出には徹底的にこだわる
——阿部さんの手掛けた最近の仕事を教えてほしいのですが。
阿部●最近では日本マクドナルドさんの「メガマックショウ」という映像を使ったリッチコンテンツ(実はバックエンドも相当すごい)をやらせてもらいました。
このサイトはまったくゼロから企画をして、マクドナルドさんに提案してやらせてもらったものです。要件定義、デザインやFlash実装はもちろんのこと、キャスティング、撮影ディレクション、編集、システム(APIや画像生成アプリ)構築も含め全て内部でやりました。ちなみに脚本は私が書いています。ほぼ100%自分達で考えたものをやらせてもらったので、タイトなスケジュールでしたがメンバー全員、超ハイテンションでしたね。プロジェクトを通してとても楽しかったですね。
サイトは今年の1月に発売し、大反響だったメガマック好きのためのファンサイトで、メガマックが再販されるまでの間、さらにメガマックを好きになってもらうために立ち上げたコミュニケーションサイトです。5月の段階でメガマックショウブログを公開し、メガマック再販までの間、メガマックやマクドナルドさんの小ネタを掲載したり「メガマックショウ」の制作風景などのレポートをしたりしながら、噂づくりを始めました。
その上でメガテリヤキ発売のタイミングである6月に「メガマックショウ」をグランドオープンしました。メガマックのイメージである上陸感やアメリカンスタイルが根底にあるのですが、これをアメリカのTV番組仕立てで表現しました。アメリカ人が日本や日本人を勘違いした映画をつくっているように、ここでは逆に日本人がアメリカやアメリカ人に対するイメージを全開で勘違いしたかたちで思い描いてつくってしまったTV番組ということがコンセプトになっています。
なので、主役のニックがハワイの免税店で買い物をした話をしたり、料理人のスティーブとの会話の中でノリつっこみをしたり、ありえないことを描いています。番組の中ではメガマックのもつ「メガ」なイメージと強烈な印象をサイト上の「ユーザのコメントによって積み上げて世界最大のメガマックをつくるコーナー」と「約150種類の食材を組み合わせて自分だけのメガマックをつくることができるコーナー」の体験によって増幅させ、さらに好きになってもらい店頭に足を運んでもらおうということを目指しました。結果的には、かなり強烈に印象に残る、愉快なサイトになったと思います。
あと、最近はリクルートさんのお仕事をよくさせていただいて、ちょっと前になってしまいますが、インタラクティブアワードをいただいた、「スゴイ地図」は国内初のフラッシュを駆使した地図情報サービスサイトで、コンセプト、UI、デザイン、演出(インタラクション含む)、技術的な面など、各方面からいろいろな評価をいただいています。
Flash技術を駆使した地図検索サービス「スゴイ地図」(リクルート)
また、ANAさんの国際線予約インターフェイスで「エコ割カレンダー」というサイトもやらせていただきました。プレジャー層といういわゆる遊びで海外に行くお客さんをターゲットにしたインターフェイスなのですが、飛行機での空の旅をイメージしてもらうために、基本画面はコクピットのイメージになっていて、飛行場の風景が見えています。そこから目的地を選ぶと、飛行機は空に向かって飛び立ち、目的地の写真が表示されます。これによってユーザに旅行先を想起させ、少しでも旅行の楽しさを頭の中にイメージしてもらうようにしました。
「エコ割カレンダー」(ANA) 飛行機のコックピットになっている
普通は予約画面というと機能的で事務的な手続きのものが多いですが、単に予約するだけではなく、せっかくなので遊びにいくというイメージを膨らませてあげることで、ユーザはこれまで以上に気持ちよく予約ができる。そういった細かい演出を大事にしました。
——かなり細部まで凝ってつくっているんですね。
阿部●そうですね。チーム内ではそれを「隙間産業」といっているのですが(笑)。もしかすると誰も気づかないかもしれないところに、すごく細かいギミックや演出を入れたりしますね。
先ほど話した「メガマックショー」でも、メールを送ってサイトを友達に教えるというコマンドがあって、それをやるとキャシー(主役のニックのアシスタントの張りぼて)がジェット噴射をしながらスタジオから飛んで行くんです。たぶん大半の人はやらないので気がつかないままだったかもしれませんが、一度やった人は2度、3度はやってみたくなると思います。
グローバルメニューに関しても、選択すると、生きているようにジャンプし、ゴムのようにくねりながらくるくると回るのですが、CGから起こしているなど、かなり時間をかけてつくっています。番組の映像もユーザが訪問する度に見せるパターンを変えたりしていました。他にもおそらく見て頂いたユーザの気がつかないかもしれない、いろいろな小ネタを仕掛けまくっています(笑)。でも気がついた人はかなり誰かに教えたくなるはずです。少しやり過ぎなのかもしれないですが。そういうところに異常に力を注ぎますね。
あと「スゴイ地図」もデザインや細かなインタラクションなどのインターフェイスにはこだわっているのですが、特にアイランドというTOPページにある島には懲りまくっています。最終的には12ヶ月+1ヶ月分をつくったんです。公開当時はアイランド上に花環がおいてあったのですが、Flashで拡大してよーくみると、その花環に「祝リクルート」って書いてありました(笑)。おそらく誰もそこには気づかないし、見ないんでしょうけどね。もし気がついたらうれしいし、クスッとするでしょう。
他にも、秋にはアイランドでサンマを焼いているとネコに取られてしまったり、冬にはTOPページで雪合戦ができるバージョンもありました(笑)。3回相手に当てると、超巨大な敵のツル人間(アイランドの住人)が登場します。10発連続で当てないと倒せないんですね。ここまでくるとゲームの裏コマンドみたいなもので。毎回つくっているうちに、徐々にリクルートさんのご担当の中で、次は何がくるのか異様に期待値も高まってましたし、それに気がついたユーザはすごく喜んでくれているみたいでした。実はやり始めたら止まらなくなってしまったという説もあります(笑)。
ちなみに基本的にこれらは私たちからクライアントに提案し、実現したもので、機能面だけを考えるのであれば、必要な部分ではないのかもしれないのですが、常に楽しいもの、面白いものがつくりたいと私たちは考えていて、機会があれば時間は無くとも可能な限り、そういったアイデアを提案し、盛込んでいくようにしています。まあ、案件にもよりますが、クオリティが高いのは当然として、一つ一つのアイデアや細部にまでわたる演出などに、どれだけこだわれるかが僕らの勝負しどころだと思っています。
——Webをプロデュースするうえで、阿部さんならではのこだわりはありますか?
阿部●まずは当たり前のことなのかもしれませんが、ユーザにどんな体験をさせたいかですね。サイトはイメージやコンテンツ、デザイン、機能や構造など、構成する要素はあるものの、大切なのは文脈だったりします。ここにはとてもこだわりたいところです。これは実はWebに限ったことではなく、どんなメディアやどんな場面でのコミュニケーションであっても同じことだと考えています。
また、要素のひとつひとつ細部のにわたりこだわり抜いて、アイデアも含めて、やはり世の中に出ているものよりも先をいかないといけないと思っています。かといって、クライアントあってのことですから、あまり先を行き過ぎてもだめで、少しだけ先をいくようにすることは常に意識していますね。
これはこの業界で僕らなりの価値をきちんとつくっていかなければならないことにもつながります。それと、常に「楽しいもの」を「楽しくつくりたい」と思いながら日々仕事していますね。
(取材/蜂賀亨 撮影/谷本夏 )
阿部●最近では日本マクドナルドさんの「メガマックショウ」という映像を使ったリッチコンテンツ(実はバックエンドも相当すごい)をやらせてもらいました。
このサイトはまったくゼロから企画をして、マクドナルドさんに提案してやらせてもらったものです。要件定義、デザインやFlash実装はもちろんのこと、キャスティング、撮影ディレクション、編集、システム(APIや画像生成アプリ)構築も含め全て内部でやりました。ちなみに脚本は私が書いています。ほぼ100%自分達で考えたものをやらせてもらったので、タイトなスケジュールでしたがメンバー全員、超ハイテンションでしたね。プロジェクトを通してとても楽しかったですね。
「メガッマックショー」のキャプチャー画面より
左が主役の“ニック”右がハリボテのアシスタント“キャシー”
サイトは今年の1月に発売し、大反響だったメガマック好きのためのファンサイトで、メガマックが再販されるまでの間、さらにメガマックを好きになってもらうために立ち上げたコミュニケーションサイトです。5月の段階でメガマックショウブログを公開し、メガマック再販までの間、メガマックやマクドナルドさんの小ネタを掲載したり「メガマックショウ」の制作風景などのレポートをしたりしながら、噂づくりを始めました。
その上でメガテリヤキ発売のタイミングである6月に「メガマックショウ」をグランドオープンしました。メガマックのイメージである上陸感やアメリカンスタイルが根底にあるのですが、これをアメリカのTV番組仕立てで表現しました。アメリカ人が日本や日本人を勘違いした映画をつくっているように、ここでは逆に日本人がアメリカやアメリカ人に対するイメージを全開で勘違いしたかたちで思い描いてつくってしまったTV番組ということがコンセプトになっています。
なので、主役のニックがハワイの免税店で買い物をした話をしたり、料理人のスティーブとの会話の中でノリつっこみをしたり、ありえないことを描いています。番組の中ではメガマックのもつ「メガ」なイメージと強烈な印象をサイト上の「ユーザのコメントによって積み上げて世界最大のメガマックをつくるコーナー」と「約150種類の食材を組み合わせて自分だけのメガマックをつくることができるコーナー」の体験によって増幅させ、さらに好きになってもらい店頭に足を運んでもらおうということを目指しました。結果的には、かなり強烈に印象に残る、愉快なサイトになったと思います。
あと、最近はリクルートさんのお仕事をよくさせていただいて、ちょっと前になってしまいますが、インタラクティブアワードをいただいた、「スゴイ地図」は国内初のフラッシュを駆使した地図情報サービスサイトで、コンセプト、UI、デザイン、演出(インタラクション含む)、技術的な面など、各方面からいろいろな評価をいただいています。
Flash技術を駆使した地図検索サービス「スゴイ地図」(リクルート)
また、ANAさんの国際線予約インターフェイスで「エコ割カレンダー」というサイトもやらせていただきました。プレジャー層といういわゆる遊びで海外に行くお客さんをターゲットにしたインターフェイスなのですが、飛行機での空の旅をイメージしてもらうために、基本画面はコクピットのイメージになっていて、飛行場の風景が見えています。そこから目的地を選ぶと、飛行機は空に向かって飛び立ち、目的地の写真が表示されます。これによってユーザに旅行先を想起させ、少しでも旅行の楽しさを頭の中にイメージしてもらうようにしました。
「エコ割カレンダー」(ANA) 飛行機のコックピットになっている
普通は予約画面というと機能的で事務的な手続きのものが多いですが、単に予約するだけではなく、せっかくなので遊びにいくというイメージを膨らませてあげることで、ユーザはこれまで以上に気持ちよく予約ができる。そういった細かい演出を大事にしました。
——かなり細部まで凝ってつくっているんですね。
阿部●そうですね。チーム内ではそれを「隙間産業」といっているのですが(笑)。もしかすると誰も気づかないかもしれないところに、すごく細かいギミックや演出を入れたりしますね。
先ほど話した「メガマックショー」でも、メールを送ってサイトを友達に教えるというコマンドがあって、それをやるとキャシー(主役のニックのアシスタントの張りぼて)がジェット噴射をしながらスタジオから飛んで行くんです。たぶん大半の人はやらないので気がつかないままだったかもしれませんが、一度やった人は2度、3度はやってみたくなると思います。
グローバルメニューに関しても、選択すると、生きているようにジャンプし、ゴムのようにくねりながらくるくると回るのですが、CGから起こしているなど、かなり時間をかけてつくっています。番組の映像もユーザが訪問する度に見せるパターンを変えたりしていました。他にもおそらく見て頂いたユーザの気がつかないかもしれない、いろいろな小ネタを仕掛けまくっています(笑)。でも気がついた人はかなり誰かに教えたくなるはずです。少しやり過ぎなのかもしれないですが。そういうところに異常に力を注ぎますね。
あと「スゴイ地図」もデザインや細かなインタラクションなどのインターフェイスにはこだわっているのですが、特にアイランドというTOPページにある島には懲りまくっています。最終的には12ヶ月+1ヶ月分をつくったんです。公開当時はアイランド上に花環がおいてあったのですが、Flashで拡大してよーくみると、その花環に「祝リクルート」って書いてありました(笑)。おそらく誰もそこには気づかないし、見ないんでしょうけどね。もし気がついたらうれしいし、クスッとするでしょう。
他にも、秋にはアイランドでサンマを焼いているとネコに取られてしまったり、冬にはTOPページで雪合戦ができるバージョンもありました(笑)。3回相手に当てると、超巨大な敵のツル人間(アイランドの住人)が登場します。10発連続で当てないと倒せないんですね。ここまでくるとゲームの裏コマンドみたいなもので。毎回つくっているうちに、徐々にリクルートさんのご担当の中で、次は何がくるのか異様に期待値も高まってましたし、それに気がついたユーザはすごく喜んでくれているみたいでした。実はやり始めたら止まらなくなってしまったという説もあります(笑)。
ちなみに基本的にこれらは私たちからクライアントに提案し、実現したもので、機能面だけを考えるのであれば、必要な部分ではないのかもしれないのですが、常に楽しいもの、面白いものがつくりたいと私たちは考えていて、機会があれば時間は無くとも可能な限り、そういったアイデアを提案し、盛込んでいくようにしています。まあ、案件にもよりますが、クオリティが高いのは当然として、一つ一つのアイデアや細部にまでわたる演出などに、どれだけこだわれるかが僕らの勝負しどころだと思っています。
——Webをプロデュースするうえで、阿部さんならではのこだわりはありますか?
阿部●まずは当たり前のことなのかもしれませんが、ユーザにどんな体験をさせたいかですね。サイトはイメージやコンテンツ、デザイン、機能や構造など、構成する要素はあるものの、大切なのは文脈だったりします。ここにはとてもこだわりたいところです。これは実はWebに限ったことではなく、どんなメディアやどんな場面でのコミュニケーションであっても同じことだと考えています。
また、要素のひとつひとつ細部のにわたりこだわり抜いて、アイデアも含めて、やはり世の中に出ているものよりも先をいかないといけないと思っています。かといって、クライアントあってのことですから、あまり先を行き過ぎてもだめで、少しだけ先をいくようにすることは常に意識していますね。
これはこの業界で僕らなりの価値をきちんとつくっていかなければならないことにもつながります。それと、常に「楽しいもの」を「楽しくつくりたい」と思いながら日々仕事していますね。
(取材/蜂賀亨 撮影/谷本夏 )
[プロフィール] 阿部 淳也 (アベ・ジュンヤ) Cosmo Interactive Inc. 執行役員 クリエイティブチームプロデューサー 自動車メーカにて車内のユーザインターフェース周りの設計を8年間手がけた後、IT事業部異動。Webデザイン、Flashオーサリングなどを手がけると共に、テクニカルディレクターを経験。 2004年よりCosmo Interactive Inc.に参加。多くのWebサイト立ち上げにプロデューサ、クリエイティブディレクターとして携わる。 2005年よりRIAコンソーシアム幹事会員、2006年より理事会員、UI関連WG運営委 員。MdN Web Straegy、Web Creators、など雑誌での執筆実績多数。2007年東京 インタラクティブ・アド・アワード入賞。 [主な事例] ▼リクルート「スゴイ地図」 ▼リクルート「L25.jp」 ▼ANA「エコ割カレンダー」 ▼日本マクドナルド「MEGA MAC SHOW」 (公開終了) |