第5話 大笑いより、くすっと笑えるのがいい | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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タイトル画像、第11回Webプロデューサー列伝 中村博久

メガマックファンのための笑えるスペシャルサイト「MEGA MACSHOW」(日本マクドナルド)やFlash技術を駆使した地図検索サービス「スゴイ地図」(リクルート)など、常に新しいクリエイティブ、新しい ユーモアに挑み続けているのが(株)コスモ・インタラクティブの阿部淳也氏である。クリエイティブすることが好きで、ユーモアがとても大切だと語る阿部氏 に、さまざまな話を伺った。

第4話 大笑いより、くすっと笑えるのがいい



——阿部さんのクリエイティブの源はなんでしょうか?

阿部●そうですね、実際のところ、いまは時間がなくて他の人よりいろいろなWebサイトを隈無くを見ているかというと見ていないですし。雑誌もたまに気になるものは読みますが、人と比べるとそんなに読んでいないかもしれないですね。こういうインタビューを受けていて、執筆なんかもしていていうのも何ですけど、正直いってWeb関係の雑誌もあまり読まないし。でも、インタビュー記事なんかは読んでみると結構面白いですよね。他の人が今何を見ていて、どのように考えているのかが分ったりするので。だからといっていろいろと遊んだり、飲んだりしてるかというと、仕事と家族のことばかりですし(笑)。

そういう意味で言うと、10代20代の経験が大きいいのだと思いますね。子供のころはとにかく、ものづくりが好きでした。自宅の裏が父方の実家で看板屋だったので、いらない材木をもらってきて、釘と金槌で年中トンカントンカン、今考えるとなんだかわからない独創的なおもちゃをつくっていました。釣りなんかも大好きで、ルアーなんかもバルサ材を削ってつくりましたね。興味本位でインターホンや洗濯機をばらして、怒られたこともあります(笑)。とにかくファミコンより、外で遊ぶのが大好きな子供でした。
10代後半から20代の頃はダンスにはまっていて、本気でダンスで生活しようかなって思ってたんですね。当時はサラリーマンやりつつだったんですが週に2-3回クラブに行って踊りまくって、公園やスタジオで練習して、たくさん遊んで、音楽を聴いて、海外にも行って。そういう経験が今になって役にたっているのかもしれないですね。

——今後やりたいことはありますか?

阿部●まずはWebの領域にとどまらない、ブランディングなどのクリエイティブ領域全般を任せてもらえるような仕事をしてみたいですね。数年後にはWeb出身の人がCM撮ったり、コミュニケーション全体を組み立てる中心の役割を担える時代がくると思っています。そういった広い領域に関して、もっと多くの人たちとコラボレーションしながら、モノづくりにチャレンジしてみたいですね。

今やっているWeb制作に関して言うと、これまで積みあげたもののことをより鮮明にしていくために、僕らのもつ価値観や解決の糸口を探るプロセスをクライアントに伝えたうえで、一緒に同じ方向を向いて、ときには衝突しつつ考え抜くことで、最終的にはきちんとしたモノづくりをしていければと思っています。

やはり大切なのは、僕らが「どんな価値観を持っていて、どんなプロセスで、どんなモノづくりをする」かだと思っています。だって、他の人たちと同じだったり、誰が作ってもいいものだったら、なにもうちがつくらなくてもいいでしょうし。他と違うユニークさがあるからからこそ僕達なわけで、今後も僕らなりの価値観やアイデアで、もっとすごいもの、面白いものをつくりたいですね。

それと、老後は(笑)今とやってることは全く異なりますが、絵本が好きなので絵本作家をやってみたいです。特に好きなのは中川李枝子さんと山脇百合子さん姉妹が書く絵本で、20冊位持っています。いつかそんな絵本を書いてみたいですね。

——阿部さんなりの独自の価値観というのはなんでしょう?

阿部●笑いですかねえ(笑)。大笑いじゃなくて、少しクスって笑う感じでしょうか。クスってするけど。すごく印象に残る笑いってありますよね。バカ笑いしてもあまり残らない笑いもありますし。少しクスって笑うけど、ずっと心に残る笑いですね。そういう笑いが好きですね。

——最近、次々と新しい技術がでてくるのですが、どのように情報を整理したらいいのでしょうか?

阿部●引き出しの数ってことじゃないですかね。はじめの段階から全てを追いかけてこなしていくのは、情報の量からいっても無理な時代ですから、いかに引き出しの数を増やせるかってことじゃないでしょうか。必要なときに引き出しをあけて、そこを深堀りするってことはやりますね。

ちょっと前だとAS3.0がでたので、デザイナーと一緒にAS3.0のイベントに顔を出したんですよね。それが終わった後に、Flashまたやろうかなって言っていたら、スタッフから、「僕らの仕事が無くなるので止めてくださいって」いわれて(笑)。でもディレクションする上でも知っておかないと駄目だと思うし、制作が好きだから興味はあるし、そのために可能な限り引き出しにしまっておくようにしています。

あと、基本的にはそういった技術や情報が好きということは重要でしょうね。自分は関係ないと言ってはだめだと思うんですよね。プロデューサだろうがフロントがメインのディレクターだろうが、システムの人と話をする時に、ある程度のことを知っていて話をすると、向こうへの伝わり方も違うってきますし。プログラマーやSEと話す時にも、こちらに知識がある程度あると、向こうもそれに対していろいろと答えてくれるし。だからこそ、引き出しの多さが大事なんじゃないでしょうか。

実は僕も前の会社の時に、SEっぽいことを半ば強制的にやらされていました。しかしながらその時の経験が引き出しの中にあるので、逆にいまは役にたっていますね。サーバーのこともわかるし、プログラムのこともある程度わかりますから。

ただし、プロデューサやディレクターが技術だけを追い求めるのは少し違うと思いますね。あくまでの技術は何かを成し遂げるためのツールであり、手段ですから。それに実は自分たちが考えるほど、世の中の人たちって思ったほどついてきていないってこともありますよね。自分達は「先を急がなきゃ」って思っていても、実は意外と急いでなかったりする。クライアントの与件でとても凝ったリッチコンテンツをつくりたいと言ってきたのに、そのターゲット層である若い子達はモバイルしか持っていなくて、PCをそれほど使わなかったり。最新の技術で、斬新なものを作ったけど、実はそれはつくり手のエゴでないかなど、きちんと立ち止まって考える勇気も必要だと思います。

——今後やりたことはありますか?

阿部●最近、リクルートさんをはじめ、いろいろなAPIが使えるようになってきているので、それをもっとうまく使っていきたいと思いますね。それはクライアントさんの案件かもしれないし、自分達で考えるサービスかもしれないですが、せっかく世の中にデータとしての資産があるので、それをいろいろと組み合わせて有効に使いつつ、自分たちならではのインターフェースを考えるとか。やりたいことはたくさんあるんですが言ってしまうと真似されたりもするので、内緒にしておきます(笑)。

それと、実は来年の春をめどに、新たな会社を立ち上げようと考えています。はじめのうちはこれまで培った経験上、Webを中心としたコミュニケーションプランニングとWeb制作がメインになるとは思いますが、最終的には様々なクリエイティブを手がけられるようなクリエイティブエージェンシー的なポジションを目指していければと考えています。みなさん応援宜しくお願いします!!




(取材/蜂賀亨 撮影/谷本夏 )









[プロフィール]
阿部 淳也 (アベ・ジュンヤ)
Cosmo Interactive Inc.
執行役員
クリエイティブチームプロデューサー

自動車メーカにて車内のユーザインターフェース周りの設計を8年間手がけた後、IT事業部異動。Webデザイン、Flashオーサリングなどを手がけると共に、テクニカルディレクターを経験。
2004年よりCosmo Interactive Inc.に参加。多くのWebサイト立ち上げにプロデューサ、クリエイティブディレクターとして携わる。
2005年よりRIAコンソーシアム幹事会員、2006年より理事会員、UI関連WG運営委
員。MdN Web Straegy、Web Creators、など雑誌での執筆実績多数。2007年東京
インタラクティブ・アド・アワード入賞。

[主な事例]
リクルート「スゴイ地図」
リクルート「L25.jp」
ANA「エコ割カレンダー
▼日本マクドナルド「MEGA MAC SHOW」 (公開終了)

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