ケータイWEB制作相談室 第2回 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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WEBプロダクションのための
ケータイWEB制作講座


右)吉田悟美一 (株)イオス 代表取締役社長 url. www.e-o-s.net/ ケータイショッピングモール「ブランドマニア」運営

右)吉田悟美一 (株)イオス 代表取締役社長(url. www.e-o-s.net/) モバイルサイトプラットフォーム『Rockbird』(url. www.rockbird.jp/)開発・提供。ケータイショッピングモール「ブランドマニア」運営
左)中谷健一 トリムタブJAPAN(有) 代表取締役(url. www.trimtab.jp/)モバイルマーケティングコンサルタント。トリムタブジャパンでは、ケータイWEBマーケティング担当者のためのお役立ち情報をPCのメールニュースレターにして配信中。「モバイルWEBマーケティング戦略ノート」(不定期刊、購読登録(無料))



第2回
ケータイサイト制作をはじめるにあたって


企業がケータイWebの制作に本腰を入れる動きを見せている一方で、これまでPCのWeb制作をメインとしてきた制作側にはよくわからないことが多いのがケータイWebの制作の世界。クライアントとの打ち合わせで、スタッフが拾ってきがちな「ケータイWebの疑問」をボスとスタッフのQ&A形式で紹介する。社内の実践問答集としてご活用いただきたい。

ケータイサイトの利用者はどんな人?

スタッフからのQ1
ケータイサイト利用者って、実際、どんな人が多いんですかね?
マーケティングの資料集めてても、ちょっと実感わいてこないんです。
ボスの回答例
一般的にはやっぱり若年層が多いみたいだな。
特にECサイトは若年女性や若い主婦層の利用率がダントツだ。
しかし、「ケータイサイト利用者」ってくくるのはよくないんじゃないか?
利用者はシーンごとにケータイを利用してるって考えたほうがいいぞ。

<本文1>
解説
現状、単純にケータイサイトとPCサイトとを比較すると利用者は若年の女性層に偏っている傾向がある。実際に筆者が運営するケータイサイトでも、利用者を年齢別に見たときには15~25歳が6割以上と最多となり、男女の比を見ると女性が多い【1】。

【1】あるケータイサイトの会員層データ
【1】あるケータイサイトの会員層データ

またFOMAやWINなどの「第三世代端末」と呼ばれる比較的通信速度の速いケータイ端末からのアクセスが多いのもこの層に見られる傾向だ(パケット代定額制プランを利用している)。クライアントの想定顧客のプロフィールが、男女別・年齢層別に多様である場合、あるいはターゲットの顧客層を選択してフィジビリティスタディなどを行う場合、まずはいわゆるF1層(20~34歳の女性)を意識したコンテンツやサイトの企画を立てるのが定石といえるだろう。

また、ケータイの利用者には大きく2種類ある点に着目してもらいたい。ひとつはPCを持たず、ケータイのみでインターネットにアクセスする層、もうひとつはPCを利用してはいるが用途や状況によって使い分けている層である【2】。ある女性向けのECサイトでは、昼間にPCからアクセスして商品の検索や検討をし、同じ利用者が夜にケータイからアクセスして購入ボタンを押すケースが多いという。この事例では時間帯や環境、使い勝手に応じてPCとケータイとを使い分けている利用シーンが見えてくる。

【2】総務省による平成17年「通信利用動向調査」の結果(http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060519_1.html)を見ると、Web利用におけるケータイとPCの使い分けの実態がよくわかる
【2】総務省による平成17年「通信利用動向調査」の結果(http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/060519_1.html)を見ると、Web利用におけるケータイとPCの使い分けの実態がよくわかる

現状、企業のケータイサイトを積極的に利用するのは、このようなマルチ利用者が多い。「ケータイサイト利用者」という特別な利用者像をとらえようとすると、課題を見誤る可能性もあるので注意したい。PCとケータイとを連動して利用されることを前提としたとき、どんなサービスを展開するのが必要なのか、という視点からのシミュレーションや戦略立てが重要である。

蛇足ながら、ケータイ端末の多機能・高機能化に伴って「インターネット利用はケータイのみ。PCは使わない」という利用者も増えているようだ。筆者の体感値ではあるが、主力であったティーンエイジャーに加えてこれまでネットとの親和性が比較的薄かったガテン系の仕事に従事する男性層がこのタイプで、無視できない存在になってきた。

また同様に、団塊世代の主婦層でも積極的に利用され始めている。「いますぐ」、「ちょっとだけ」、「チラシを見て」という人がネット利用するのに、PCはむしろ不便なツールなのだろう。ワンセグ放送やお財布ケータイなど、より利用頻度の高いサービスのスタートによって、ケータイはますます日常生活で手放せないツールとなる。ケータイサイトも今後より広い層で利用されていくのはまちがいない。

ケータイサイトのデザインはどの程度自由なの?

スタッフからのQ2
見栄えのいいケータイサイトってあまりにも少ないと思うんですが、
ケータイサイトのデザインってどれくらいの自由度があるんですかね?
ボスの回答例
デザインの自由度そのものはかなり高くなってきている。
しかし対応する機種を広げるほど、制約が重くなってくるんだ。
ところでお前のケータイ、最新型か?

解説
最新のケータイ端末では、PC用のWebにひけをとらないデザイン表示が可能になった。FlashやCSS対応(具体的にはtableタグによる背景色指定、背景画像挿入、フォントサイズ指定等)など、かなりデザイン性を意識したページ制作ができる環境が整っている。画面サイズではVGA(480×640ピクセル)液晶を搭載する端末も登場し、写真や文字などがより高精細に表現できるようになってきた。

しかしここで問題となるのが、ケータイ独特の「機種依存」問題である。「特定キャリアの最新端末のみに対応」とするなら、Flashや画像を多用したページは何の問題もない。ところが、できるだけ多くの機種で、しかもマルチキャリア(すべての携帯電話会社)に対応するサイトをつくりたいとなると話はまったく別になってくる。

そもそもキャリア・機種ごとに記述言語やサポートされている画像ファイルフォーマットが異なり、同キャリア・同時期発売のものであってもハイエンドモデルとローエンドモデルとでは機能に大きな差があるのがケータイブラウザの特徴なのだ。ケータイサイトのデザインの自由度は、対応端末のバリエーションとトレードオフの関係にあるといってよい。

デザインの自由度と対応機種の幅とを両立させるなら、あらかじめ複数のデザインを用意しておき、アクセスしてくる端末を判別して表示可能な最適コンテンツを表示させるという方法をとるしかない。制作コストや更新時の手間にも影響する部分なので、まずはクライアントの解決すべき課題を再確認し、コンテンツ内容と対応機種の範囲とを再検討することをお勧めする【3】。

【3】各キャリアの端末に合わせてあらかじめデザインを複数用意し、アクセスしてきた端末に最適なコンテンツを表示させる
【3】各キャリアの端末に合わせてあらかじめデザインを複数用意し、アクセスしてきた端末に最適なコンテンツを表示させる

ちなみに最近では全Flash対応のケータイサイトなども出現し、最新端末の利用者の間ではリッチでデザイン性の高いサイトに人気が集まっている。「イケてるケータイサイトを見たことがない」という意見は、実は一昔前のケータイ端末を利用している(非リッチコンテンツが表示されている)スタッフからの意見だったりする。注意が必要だ。

ケータイサイトのユーザビリティってどこに気をつけたらいいの?

スタッフからのQ3
ケータイでもユーザビリティって大事ですよね。
何にどう気をつけたらいいんでしょう?
ボスの回答例
たとえばケータイWebは通信がつねに安定しているとは限らない。
PC-Webでは想定しないようなユーザーへの配慮も必要なんだ。
しかしマニュアルがあるわけじゃないし、ケータイは進化も早い。
目と手と頭使って、自分で法則見つけてこい!

解説
ケータイにはケータイのユーザビリティの法則がある。たとえばお店の案内サイト。住所・電話番号などの文字情報、来店方法説明テキスト、MAP画像がそれぞれ別ページでリンクになっていたりする。ケータイWebが普及し始めたころは「1画面の情報を小さくしたほうがアクセスしやすい」、「ケータイは画面が小さいので、たくさんの文字を詰めると読まれない」と言われていた。このセオリーを基準にすれば「合格」だが、いまどきのケータイコンテンツとしては完全に「不合格」だ。

第三世代端末が主流となっている現在、コンテンツのダウンロード時間は格段に短くなった。一方で電波状態が不安定でアクセスできなくなるトラブルは相変わらずである。通信状態が良好なときに必要な情報をまとめて1ページの情報としてダウンロードできるほうがはるかに便利だ。画面メモしておくのにも都合がいい。

逆にページ遷移を短く区切ったほうがいい場合もある。会員登録時など連続してフォームに文字入力するケースがそれだ。ケータイのブラウザは入力された文字をキャッシュできないのでうっかり「戻る」ボタンを押すと入力項目がクリアされてしまう。また無事に入力して「送信」ボタンを押しても通信状態不良でエラーとなることがある。いずれの場合も利用者は再び文字を入力しなくては先に進めない。入力をあきらめる人も出てくるだろう。「文字入力フォームは1画面にひとつ」とすれば、エラーの場合でもダメージは最低限に抑えられる。

しかしケータイ端末やブラウザの機能進化は激しく、ここに書いたノウハウも含めて、過去・現在の「正解」が永遠に正解であり続けるわけではない。そういう理由からなのか、そのたぐいの「マニュアル」としてスタンダードがあるわけではない。できる限りさまざまなケータイサイトを巡り、それぞれのユーザビリティを検証しながら自分なりの法則を見つけ出す喜びを感じてほしい、というのが筆者の本音である【4】。

【4】いろいろなケータイサイトを巡り、ユーザビリティを検証し、自分なりの法則を導き出すことが大切
【4】いろいろなケータイサイトを巡り、ユーザビリティを検証し、自分なりの法則を導き出すことが大切

ケータイサイトのためのサーバ環境ってどうなの?

スタッフからのQ4
ケータイサイト構築のために
特別なサーバの環境・仕様ってあるのでしょうか?
ボスの回答例
想定される負荷にもよるが、できれば専用にチューニングしたサーバ環境が望ましい。
既存の高負荷のサイトのサーバ構成・環境を参考にすればいいんだ。

解説
基本的にPCとまったく異なるサーバ環境が必要というわけではない。しかしケータイWebは一般的にPC-Webと比較して1ページの情報量が少ない。ページあたりのDLデータ容量が少なくなるぶん、ページが小分けに分割され、セッションの回数は多くなる傾向にある。結果的にPC用のWebと比べるとトラフィックが集中しやすくなり、サーバ負荷をかけることになる。

また、Q2で指摘した「機種依存問題」の解決手段としてダイナミックなページ生成システムを利用する場合、データベースサーバにはより大きな負荷がかかりやすくなるので注意が必要だ。場合によってはサーバ負荷を考慮してコンテンツ構成そのものをを検討し直すという対応もあるだろう。

特にキャンペーンサイトなどの場合は、いつでもどこからでもアクセスできるケータイという特性上、アクセス集中の度合いはPC-Web以上である。ケータイ用のサイトと言えどもあらかじめロードバランサーなどの負荷分散対策をしたサーバ環境が必要なのだ【5】。

【5】ケータイサイトのアクセス集中度合いはPCサイト以上。ロードバランサーなどを組み込んだサーバ環境が必要になる
【5】ケータイサイトのアクセス集中度合いはPCサイト以上。ロードバランサーなどを組み込んだサーバ環境が必要になる



ケータイCOLUMN
ネットレイティングスの「サイトセンサス・アットモバイル」が好評
ケータイサイトの利用状況をリアルタイムに把握


ASPですぐに始められるケータイサイトのアクセス解析
ケータイサイトをビジネスに活用している企業なら、PCサイト同様にユーザーのアクセス状況を把握しておく必要がある。

ネットレイティングス株式会社の提供している「サイトセンサス・アットモバイル」は、ケータイサイトのアクセス状況を測定する解析サービスだ。ASPで提供されているので、新たに解析用サーバや専用ソフトの購入の必要がなく、測定対象となるページに計測用に一行のタグを埋め込むだけで始められる。解析結果は契約者専用に用意されたサイトにブラウザでアクセスして見ることができるが、PC版の「サイトセンサス」を利用しているなら同じ画面でPCサイトのアクセス状況を見ることができる。

マーケティングに必要なデータをより詳細に取得可能
集計区分ごとのPV数やセッション数、利用端末の種類はもちろん、ユニークユーザー数の把握や入口あるいは出口ページ別の経路ランキングまで見られる経路解析まで行える。特定ページを通過したセッションだけを抽出・解析するなど、より詳細な分析が可能なので、モバイル・マーケティングに必須となるデータが取得できる。

また、従来、モバイルキャリアから提供されるアクセス状況に関する情報や、サーバログ解析による結果の抽出にはタイムラグが生じていたが、サイトセンサス・アットモバイルでは集計は数時間で行われ、そのたびにデータサマリがアップデートされる。しかも集計時間は、オプションによりさらに短時間で行えるようになる。このことで、よりリアルタイムに近いアクセス状況の把握が行える。

どこでも持ち運べるケータイ向けのキャンペーンなどは、その効果が即効的に表れることが多いが、サイトセンサス・アットモバイルならリアルタイムなアクセス状況の把握により、いち早くユーザーの反応をつかむことができる。本格的なモバイル・ビジネスを始めるならぜひとも活用したいサービスだ。

期間内のユニークユーザー数を時系列に分析可能。
期間内のユニークユーザー数を時系列に分析可能。
PCサイトの解析結果も切り替えて表示できる

DATA
▼ 価格
SiteCensus@Mobile
月額料金 10万5,000円(税込み・月間300万PVまで)
▼ 問い合わせ先
ネットレイティングス株式会社
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-25-18 渋谷ガーデンフロント
TEL 03-4363-4201
http://www.netratings.co.jp/



本記事は『Web STRATEGY』2006年9-10 vol.5からの転載です


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