ケータイWEB制作相談室 第4回 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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ケータイWEB制作講座


右)吉田悟美一 (株)イオス 代表取締役社長 url. www.e-o-s.net/ ケータイショッピングモール「ブランドマニア」運営

右)吉田悟美一 (株)イオス 代表取締役社長(url. www.e-o-s.net/) モバイルサイトプラットフォーム『Rockbird』(url. www.rockbird.jp/)開発・提供。ケータイショッピングモール「ブランドマニア」運営
左)中谷健一 トリムタブJAPAN(有) 代表取締役(url. www.trimtab.jp/)モバイルマーケティングコンサルタント。トリムタブジャパンでは、ケータイWEBマーケティング担当者のためのお役立ち情報をPCのメールニュースレターにして配信中。「モバイルWEBマーケティング戦略ノート」(不定期刊、購読登録(無料))



第4回
ケータイサイト実制作の疑問編


これまでPCのWeb制作をメインとしてきた制作側にはよくわからないことが多いのが、ケータイWebの制作。クライアントとの打ち合わせでメンバーが拾ってきがちな「ケータイWebの疑問」を紹介するシリーズの第4回。今回はケータイサイトの実制作にかかわる疑問についてお答えしていこう。

コンペで提案が甘いといつも落とされるのはなぜ?

スタッフからのQ1
ケータイサイトに詳しいクライアントに何度かコンペで提案しているのですが、いつも落とされます。
理由を聞いたら「おたくの提案、ちょっとサイト構成のツメが甘い」と言われました。
何がいけないっていうんでしょう?
ボスの回答例
PCサイトの「いい」「悪い」はお前も見分けられるようになっただろ?
同じようにケータイサイトにも「いい」「悪い」があって、見る人が見たらすぐにわかるものなんだ。
「ケータイサイトは、ただつくるのは簡単だが、ウケるケータイサイトをつくるのは難しい」と言われている。
ケータイ特有のさまざまな制約と折り合いをつけながら利用者に支持されるサイトをつくるには、コツがある。
いろんなサイトをたくさん見たり、実際に使ってみることだ。きっと、だんだんわかってくるはずだ。

解説
ケータイサイトのページ作成は、押さえどころ(キャリアや機種による仕様の差に対処するソリューション)さえわかってしまえば、あとは難しくない。たとえばケータイサイト構築のASPソリューションを導入するなら、サイト作成そのものはほとんどワープロ感覚になってしまうだろう。

しかし作成が簡単だからといって、だれもが利用者ウケするサイトをつくれるわけではないところが難しい。また、そこがケータイサイト制作のおもしろいところでもある(蛇足ながら、筆者はよくこれを「俳句」にたとえている。制約された表現空間の中に情報を盛り込むのは、時に長い文章を書くよりも難しい。しかしその奥深さが楽しいのだ)。

ケータイサイトには独特の「利用者をひきつける」要素や特徴があり、それらが盛り込まれているかをチェックするだけで期待できるサイトになりそうなのかどうかが、おおよそわかる。その一方で「利用者をうんざりさせる」とか「サイト運営上好ましくない」要素や特徴というものもある。これらが散見されるサイトは再考の余地があると言える。この質問に登場するクライアントは、それぞれの要素や特徴に具体的な言及をしたわけではないようだが、提案された構成をざっと見て総合的にNGの判断を下したのではないだろうか?

代表的な要素や特徴を一覧表にしてまとめてみた【1】。サイト制作のガイドとして利用してみてほしい。

【1】ケータイサイトの代表的な要素と特徴の一覧
【1】ケータイサイトの代表的な要素と特徴の一覧

サイトリニューアルに合わせて、集客に結びつく斬新なコンテンツを導入したいんですが?

スタッフからのQ2
今回、ちょっと難しいテーマをもらっちゃいました。
A社のケータイサイトのリニューアル案件なんですが、
集客のために斬新なコンテンツを提案してくれって言われたんです。
占いコンテンツやゲームじゃもう古いし、漫画の配信なんてどうかと考えたんですが、どう思います?
ボスの回答例
そんな付け焼き刃みたいなコンテンツで、本当に利用者に響くと思うか?
そもそもクライアントさんのターゲット層と合ってないだろ。
まず最初にどんなサイトを目指すのか、どうやってユーザーを囲い込んでいくのか、中長期的な戦略は立てたのか?
そのコンテンツ案はそれにふさわしいのか?
毎度、安易にリニューアルを繰り返させてるようだと、仕事は来なくなるぞ!

解説
そろそろ本格的にケータイサイトを活用していきたいという企業は、めきめきと増えてきている。そんな現場でよく話題に上るのが、サイトリニューアルや集客のためにどんなキラーコンテンツを提供するかだ。定番は景品や賞金のプレゼント企画。最近ではSNSやケータイ小説・漫画、動画などが「旬」のコンテンツ企画だろう。

しかし目先を変えるだけの安易なコンテンツ導入は長期的なユーザーの囲い込みには効果が薄い。そもそもサイトコンセプトと関連希薄なコンテンツを前面に出しても、的外れの利用者を呼び込むだけなのだ。そんなの当たり前......と思うかもしれない。しかし集客をミッションとして負わされると、つい、やってしまう。

また逆に、大掛かりなキャンペーンで大量集客しておきながら、その後のコンテンツプラン不在のために、みすみす潜在顧客を逃がしてしまっているケースも多い(もっとも、短期的なプロモーションという点では成功と判断しているのだろう)。

困ったときにこそ、いま一度サイトの目的を明確にし、親和性のあるコンテンツやプランを計画的に導入することが大切だ。

たとえば会員サイトのPVを伸ばしたいならば、新規会員獲得に汗をかくよりも動画ブログやSNSなどのCGMコンテンツを導入して既存会員のアクション率を高めるほうが効果的だ。しかも利用者の声やリクエストを拾えて、会員定着率も向上させるというプラスアルファ効果が期待できる。

またECサイトでは、コミュニティ機能を利用した口コミショッピングの導入や利用者間のアフィリエイトプログラム導入など、直接的な新規顧客獲得コンテンツにこだわらないプランの導入で中長期的に相乗効果を見込める。ただし、CGMコンテンツが万能だというわけではない。サイトづくりのストーリーや計画と活用方法が明確でなければ、むしろ害になることだってある。「Web2.0」や「CGM」を売りにしたケータイサイトの利用伸び悩み、閉鎖した例も少なくないのだ。

そうでなくてもケータイサイトは携帯電話端末の機能進化に合わせてつねに進化し続けるメディアだ。ソリューションの拡張をつねに想定していないとすぐに丸ごと再構築というような事態になってしまう。そのようなロスを避けるためにも、サイトの獲得目標を明確化することを強くオススメしたい。そして、そこにたどり着くための方法は必ずしもひとつではないことを念頭に、解決策を検討してほしい。

人気サイトのようなテンションの高いコピーを書かなくちゃダメなんでしょうか?

スタッフからのQ3
コピー制作で相談です。
他のケータイサイトを参考にコピー制作しようと思うのですが、
なんだか気恥ずかしい表現が多くて、まねできそうにありません。
しかし、人気サイトはどこでもそんなノリでつくられているようです。
あんなテンションの高いコピーを書かなくてはダメなのでしょうか?
ボスの回答例
その「テンションの高いコピー」が、
複数の人気サイトで導入されているという事実の背景にどんなことが考えられるのか、仮説を立ててみちゃおっ♪
コピーのトーン&マナーをターゲット読者に迎合させて共感を得ることが、結果的に成功につながっているという仮説はどーかなッ? ☆
もうひとつは、携帯電話ブラウザでの情報閲覧時の「視界の狭さ」をカバーするための戦術という仮説もあるかもー!!
ターゲットの層をコンテンツに誘導できるシカケが他にあるのなら、必ずしもそういうコピーでなくてもいーんじゃん?
...ってのはどうだ?

<本文3>
解説
筆者のサイト運営の体験からも、「利用者に失礼がないように」とかしこまったコピー文面よりも「ちょっとくだけているが、ホンネで話しているような」スタイルのコピーのほうが利用者ウケがいいことはまちがいない。

携帯電話は、つねに利用者の30センチ以内にあるといわれる。ほとんど私生活的なコミュニケーションのツールである。そのリラックスした場に入り込むのに「失礼がないように」と気遣えば気遣うほど、受け手側はむしろ緊張感や敷居の高さを感じてしまう。

そこで、コピーのトーン&マナーをターゲット層に共感しやすいスタイルにし、「まるで友達がメールで話をしているような」文面にしてコミュニケーションを円滑化しているのだ。人気ケータイサイトの多くが10~20代女性をターゲットにしていることと「ハイテンションなコピー」とは無関係ではないだろう。たとえば30代女性をターゲットにしたサイトでは異なったトーン&マナーが求められるだろうし、さらに独身か、既婚か、子どもを持っているか...といったセグメントによって、共感を誘うコピーは微妙に変わる。ターゲット読者の共感を醸成し、アクションにつなげるのが目的なのだ。

また、画面上での情報の「視界」が狭いこととも密接な関係がある。高解像度機種の登場で極小サイズの文字表示が可能になり、一画面に表示可能なコンテンツ量は大幅にアップしたが、それでも画面上で複数の興味話題を見つけられるほど広くない。画面をスクロールさせるにも、次の画面へ誘導するのにも、縦に直列に並んだコンテンツ上でアピールするしかないのである。

「1行目は2行目のためにある、2行目は3行目のためにある、3行目は...」

テレビ通販のカリスマ、ジョセフ・シュガーマンのセールスレターライティングの法則だが(『シュガーマンのマーケティング30の法則』フォレスト出版刊)、ケータイWebのコピー制作においても同じことがいえる。

結果的に、つねにその次の1行への誘導になるよう工夫されたコピーの集合が「やけにハイテンション」に見えてしまうことはままあるのだ。

もっとも、ライターが独り善がりに陥って、ターゲットの利用者から「何ですか? これ?」と言われるようでは本末転倒だ。Webのコピーライティングはつねにページ・ビューやクリック率などの検証の下で制作・管理されなくてはならない。すべては顧客のアクションのためにあるのだ。

ケータイサイトの使い方についての問い合わせが多くて困っています。
仕方がないんでしょうか?


スタッフからのQ4
最近制作したサイトに利用者からの問い合わせが多くやってきます。
一応FAQはつくっているのですが、サイトの使い方について同じような質問がたくさんやってきて、処理がたいへんです。
でもやっぱり、ケータイサイトはそのへん、仕方ないんスかねぇ?
ボスの回答例
おいおい、あきらめてどうするんだよ。要するにサイトのユーザビリティが悪いってことだろ!
ケータイサイトだからって、おろそかに考えていないか?
問い合わせが多いのは、利用者が多い証拠。客を逃がす前に即、ユーザー調査をしてみたらどうだ。
意外なところに使いにくい部分があるのかもしれないぞ。

解説
ケータイサイト全体を見ると、使いやすいサイトが多いとは言いにくい。PCサイトと比較して「そもそも表現に限界があるから」と、クリエイターがはじめからあきらめてかかっているということはないだろうか。ケータイ画面の上でサイト全体の構成や仕組みを一目で把握させることは難しい。それにケータイサイトで利用者にアレコレさせるのは、想像している以上に敷居が高い。一度でもケータイサイトをつくったことがある方なら身に染みて感じていることではないかと思う。

しかし、と言うか、だからこそサイトのユーザビリティに徹底的にこだわる価値がある。ケータイの不自由さを逆手に取るのだ。

まずトップページの使い勝手とデザインは重要度が最高度だ。初めにサイトに訪れた利用者に「何だかわかりづらいな」「つまんなそうだな」と思わせたら、二度とやって来ない。サイト全体のトーンマナーや基本フォーマットを認知させる場として重要なページだ。使い方ページを読まなくても、ここでさりげなくサイトの使い方や機能を利用者にインプットできているとベストだ。

「サイトのどこにいるのかわかりやすい」「戻りたいページに遷移しやすい」など、ナビゲーション機能にも配慮が必要だ。分岐ページそれぞれにさかのぼれるリンクなどを、ページの上部や下部にまとめるのが一般的だ。

入力系では...

極力手打ち入力をさせない
最小限のアクションや動作での入力
無駄な情報入力はさせない

のが大原則。たとえばメールアドレスの入力や変更は空メールでさせる、誕生日をセレクトリストで選択させる場合にデフォルトの日付を6月15日にしておく、ログインはID・Pass入力ではなく機種固有情報(UID)を送信させるなど......。ひとつひとつは本当に小さなことなのだが、これらが徹底されているとずいぶんと印象が違うものだ。

その他、入力系のページではなるべく画像を使わない、むやみに項目の多いセレクトにしないなど、1ページの容量を抑えることでサクサク動く印象を与えることも重要ポイント。ページあたりの入力項目数をできるだけ少なくすることもユーザビリティのひとつになる。送信中に電波状態が悪くなって途中切断、再入力するにも、入力項目が多すぎてそこでやめてしまう…という利用者は少なくないからだ。機種ごとにsubmitボタンの最大設置数に違いがあったりするので、注意も必要だ。

もちろん、求めるターゲット層や方向性によって、ユーザビリティの考え方はひとつではない。ケータイ端末の扱い慣れしている女子高生向けのエンターテインメント性の高いサイトなら、ジャングルチックな凝った構成やあえて長いコピーライトもよいが、ビジネスマン向けの実用性の高いサイトなら、よりシンプルに滞留時間を節約できることが望ましいとなる。

「いかにして、どこまで、ユーザー目線になってサイトをつくることができるか」。これがケータイサイト成功の秘訣と言っても過言ではない。


本記事は『Web STRATEGY』2007年1-2 vol.7からの転載です

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