ケータイWEB制作相談室 第3回 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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ケータイWEB制作講座


右)吉田悟美一 (株)イオス 代表取締役社長 url. www.e-o-s.net/ ケータイショッピングモール「ブランドマニア」運営

右)吉田悟美一 (株)イオス 代表取締役社長(url. www.e-o-s.net/) モバイルサイトプラットフォーム『Rockbird』(url. www.rockbird.jp/)開発・提供。ケータイショッピングモール「ブランドマニア」運営
左)中谷健一 トリムタブJAPAN(有) 代表取締役(url. www.trimtab.jp/)モバイルマーケティングコンサルタント。トリムタブジャパンでは、ケータイWEBマーケティング担当者のためのお役立ち情報をPCのメールニュースレターにして配信中。「モバイルWEBマーケティング戦略ノート」(不定期刊、購読登録(無料))



第3回
ケータイをめぐる最近の話題について


これまでPCのWeb制作をメインとしてきた制作側には、よくわからないことが多いのがケータイWebの制作。クライアントとの打ち合わせでメンバーが拾ってきがちな「ケータイWebの疑問」を紹介するシリーズの第3回。今回は、最近耳にする最新のケータイ用語にまつわる社内想定問答編だ。

MNPや検索サービスに備えて、ケータイサイトをつくったほうがいいの?

スタッフからのQ1
クライアントから「携帯電話番号ポータビリティ(=MNP)や検索サービスが話題になってるけど、
結局、ケータイサイトつくったほうがいいの? まだつくらないほうがいいの?」って聞かれました。
なんて答えたらいいんスか?
ボスの回答例
MNPはそもそも利用者の通信事業会社選びの話だから、
ケータイサイトをつくるとかつくらないとかいう判断に直接関連はない。
しかし検索サービスがケータイWebを変えるのは確かだ。
「安パイ狙いなら様子見。先行者利益を狙うなら、今が狙い目」と、アドバイスしたらどうだ?

解説
マスメディアではMNPが大きく報道されているが、実際にサービスを利用するのは全体の1割程度と予測されている。しかもMNPの影響を直接受けるのは利用者と通信キャリア、一部の課金型公式コンテンツプロバイダに限定される。ケータイサイトを設置するかどうかといった判断とは関係がない(しかし、なぜかこういう質問が多いものである)。

一方、ケータイ各社がスタートさせた「公式検索サービス」はこの先のケータイWebを大きく変化させる可能性を秘めている【1】。ケータイサイト最大のボトルネックといわれ続けたサイト集客に、PC同様の仕組みが備わったのだ。キャリア公式検索サービスの検索精度が上がってくれば、将来的「公式サイト」・「勝手サイト」という区別に意味がなくなるだろう。また、キーワードマーケティングの代行サービスなども活性化される。そういう視点に立てば06年はケータイマーケティングビジネスが本格的にスタートする「元年」ともいえるタイミングなのだ。

【1】キャリア公式検索サービス一覧
【1】キャリア公式検索サービス一覧

しかし同時にそれは、大いなる過渡期でもある。技術的な新基準が登場して過去のシステム資産が一瞬で時代遅れになってしまうリスクもはらむ。このタイミング、特にシステム投資に関しては慎重な検討が必要だ。

もっとも、ケータイWeb市場が今後ますます伸びていくことはまちがいない。新規市場で先行者利益を狙いたいというクライアントがいるのなら「チャンスです」と背中を押してあげよう。

ケータイ向けSEO・SEMサービスの提供を始めたほうがいいの?

スタッフからのQ2
公式検索サービス開始で、ケータイでもSEOとかSEMが騒がれ始めてます。
私たちも、そういうサービスを提供していくべきでしょうか?
ボスの回答例
ケータイサイトの制作や運用の実績もないのに、
いきなり検索エンジン対策の話をしたって仕方ないんじゃないか?
まずはケータイサイトのユーザビリティ、顧客誘導、効果出しの事例をつくろう。

解説
公式検索サービスの開始に合わせて、にわかに「ケータイSEO」「ケータイSEM」サービスが活性化してきた。それはそれでよいことなのだが、Web制作会社の中には困惑している向きもあるのではないだろうか?

PC-Webの世界で検索サービスがこれほどまで受け入れられたのは、サイトの数やクオリティが一定レベルに達していたからだ。検索エンジンで企業名や商品名を入力すれば、しかるべきサイトに行き着くという前提があった。ところがケータイWebの企業サイトはまだまだ発展途上段階だ。試しにテレビCMで気になる商品やサービスを見つけたら、ケータイ用検索エンジンで検索してみよう。

「ケータイ連動キャンペーン」をウリにしている場合を除くと、ヒットするケータイサイト「なし」というケースが多い。グーグル検索だとPC用ページをケータイ用に自動変換したページがずらずらと出てくる。もちろん使い勝手はお世辞にも褒められるものではない(当たり前だ)。「ケータイを持ってテレビを視聴する」というごくありふれた消費者行動をシミュレーションしているだけなのだが、案外ケアされていないというのが現状なのだ。せっかくの公式検索サービスも、これではむしろ裏目である。

まず利用者を満足させ、成果を出せるケータイ用サイトをつくるのがスジではないだろうか。利用環境がまるで異なるため、PCの戦術・戦略がそのまま通用しない現実をまず知ろう(PC-Webの縮刷版サイトでは、結果につながらない)。

サイト集客の話の前に押さえておくことがたくさんあるはずなのだ。

余談ではあるが、PC-Webの世界でも「ガリガリにSEOを施して集客しても、サイトのコンテンツがしっかりしていないと結果につながらない。やはりコンテンツ制作は重要だ」と、語られていると聞く。そんなの当たり前だ、とアナタは笑えるだろうか。

ケータイ用CMSのオススメは?

スタッフからのQ3
「ケータイサイトつくるのはいいけど、更新についてはできれば社内でやっていきたい」
と、クライアントから相談を受けました。
ケータイサイト用のCMS導入がいいと思うんですが、どんなCMSを勧めたらいいでしょう?
ボスの回答例
コンテンツの機動性アップとコスト削減が期待できるCMSの導入は重要だ。
最近ではケータイ向けCMSも進化して、さまざまなものがあるが、
頻繁に新端末が登場するケータイの場合、ASPタイプがいいだろう。
まず、どんな機能のASPサービスがあるか調べてみろ。
ポイントはその情報を整理すれば見えてくるぞ。

解説
マルチキャリア対応のケータイサイトをつくったはいいが、どうやって更新作業をしていくのか?

実はサイト構築以上に大事な問題だ。ケータイWebはコンテンツの更新頻度がもろにアクセス数を左右する。人気サイトほど、こまめに更新しているものなのだ。キャリアごと・機種ごとに最適化した何種類ものページを同時に更新していくのはたいへんな作業だ。ページ内のたった1文字の修正のために、サイト担当からシステム担当へ、システム担当からシステム外注先へ、最後にサイト責任者のチェックを......というワークフローを踏んでいたら、「結局、1週間かかってしまった」なんていう笑えない話も現実に聞く。こんな状態では機動性が要求されるケータイサイトの効果は望めないだろう。

複数のサイトを運営するような公式サイトCPでは自社システムにCMSを導入しているケースが多いが、構築コストはばかにならない。携帯端末の進化や新しいサービスへの対応のために常時システムアップグレードが必要で、その都度大枚をはたくことになる。そこで検討したいのが、CMSのASPサービスである。

では、どんな機能をもったCMSを選ぶべきか? マルチキャリアに対応している、ページ作成機能が充実しているなどは当たり前だが、それ以外にも見落としがちな機能について、チェックポイントをまとめてみた【2】。

【2】ケータイ用CMS選定のチェックポイント
【2】ケータイ用CMS選定のチェックポイント

最新の端末に対応するリッチなページの作成機能はもちろん、スピーディな更新や運用コスト削減のために運用管理面にどんな機能を搭載しているかも大切なポイントだ。いざ導入しようとしたら社内ネットワーク上で使えない、OSのバージョンアップをしたら使えなくなった、というケースもある。導入環境への対応もしっかりと検討しておきたい。
最近では多機能で低コストのASPサービスもでてきているが、どんなサイトをつくるか、どんな運用体制をとるかなどをじっくり考えて、できれば試用してみてから導入すべきだ。

ケータイメール配信にASPがいいのはどんな理由なの?

スタッフからのQ4
「ケータイのメール配信はASP使うのがいいらしいね」って、クライアントから聞かれたんで、
「当たり前ですよ」って答えたんですが、利用するメリットって何んでしたっけ?
あと、ASP選びのコツも教えてください。
ボスの回答例
「ケータイの迷惑メール対策はPC以上に厳重」、そして「ケータイの仕様は日々進化する」。
そこからASPを利用するメリットを考えてみたらどうだ?
ASP選びのコツは「仕事を頼むなら、忙しい奴に頼め」だ。なぜだかわかるか?

解説
「暇つぶしメディア」ケータイWebでは、メールが非常に大きな役割を果たす。若者の多くがケータイWebをほぼ毎日見ているという調査結果もあるが、多くは天気予報や着信メロディなど生活情報系のコンテンツであり、企業からの発信はプッシュ型のコミュニケーションが基本になる。企業のケータイWeb運用者にとって、メールは利用者との命脈なのだ。

ケータイメールは届くたびに着信音やバイブレーションが鳴動するため、注意喚起力が高い。メールマガジンからのCTRが10~20%、それ以上になることも珍しくない(もちろん利用者へのメール配信の許諾取得が前提である)。またPCのメールマガジンのように届いたメールを無視する、いわゆる幽霊購読者が少ないのも特徴だ。無用なメール着信鳴動を嫌って「このメールは不要」と感じたら利用者が購読解除手続きを取ってくれるためである。

裏を返せば、望まないメール・スパムに対する利用者の反感はものすごい。一時と比較するとスパムメールは減っているようだが、キャリア各社は次々と厳重な「迷惑メール対策」を実施している。大量にメール配信する場合は慎重なケアが必要だ(100通を超えるメール配信から「迷惑メール対策」を考慮する必要が出てくる)。

たとえば1SMTPセッション当たりの送信数は100通以内になるよう制御しなくてはならない、送信メールアドレスに一定以上の届け先不明アドレスが含まれると自動的に送信停止されてしまうので配信の都度メールアドレスをキメ細かにクリーニングしなくてはならない......といった細々とした対応が求められる。しかも今後も迷惑メール対策が進化することを考えれば、ケータイメールの一斉送信には特別仕様のシステムを利用するほかに選択肢はないように思われる。

そこでメール配信ASPの出番となる。細々とした調整や、めんどうな手間が自動化されるため、運用者はコンテンツ制作など本来の業務に集中できる。定期的な質の高いメール配信は利用者の満足度アップにも貢献し、結果的にサイトの利用が促進されるだろう。

サービス選択のポイントは「迷惑メール対策」にしっかりと対応しているかどうか。キャリアが次々と打ち出す新施策に細かく対応できないサービスでは利用する意味がない【3】。目安として、取引社数の多さは参考にできる。多くの顧客がトラブルなくメール配信運用ができているということは、システムのアップデートが迅速であり、同時に価格に対するバリューが高いことの証左でもある。「仕事を頼むなら、忙しい奴に頼め」なのだ。

【3】ケータイメール配信ASPを選定する際のチェックポイント
【3】ケータイメール配信ASPを選定する際のチェックポイント

Web2.0のケータイ版? mobile2.0って何?

スタッフからのQ5
最近目にする「mobile2.0」って、Web2.0のケータイ版ってことでしょうか?
それって、フルブラウザが普及してから先の話になるんでしょうか?
ボスの回答例
Web2.0を下敷きにしたケータイWebのことじゃないか? 現段階では可能性の話が多いようだが、
端末の機能や仕様の進化によって、PCのWeb以上に便利なサービスがつくられていくだろう。
フルブラウザじゃなくてもできることはあるんだぞ。

解説
「mobile2.0」という言葉が聞かれるようになった。「Web2.0ブーム」の安易な便乗だと揶揄する関係者も少なくないのだが(反論しようという人もいないだろう)、モバイルという特殊な環境のWebで、どのような新サービスを提供できるのかを検討する意義は大きい。

8月には、その名もズバリ「Mobile2.0 ポストWeb2.0時代のケータイビジネス」(インプレスジャパン)という書籍も発売され、話題を提供している。厳密な定義はなく、RSS、Ajax、ソーシャル・ネットワーキング・サービスなど「Web2.0」の代表例として挙げられる技術、Webサービスやサービスモデルをケータイ向けに実装・展開するという意味で使われているようだ(現時点ではケータイ端末の機能的な制限が理由で実現することのできない構想上のサービスも多い)。

位置情報や写真・動画投稿、リアルタイムメール配信などケータイが得意とする機能を活用したWebサービスはもっともっと出てきてよいはずである。ちょうどケータイへのフルブラウザ搭載が話題になっている時期でもあるため、本Qのように連動して語られることもあるかもしれないが、実はフルブラウザの登場を待つまでもなく、Flashを利用することでキャリアの差を気にすることなく直感的なUIと自由なデザインのケータイ向けWebサービスが構築できる。リアルタイムの話題なのだ。

さらにケータイの通信速度が飛躍的に速くなる3.5世代端末を利用すれば、より使い勝手も向上するだろう。


本記事は『Web STRATEGY』2006年11-12 vol.6からの転載です
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