出張や小旅行のお供に、ワイヤレス充電スタンドとしても使えるUSB PD対応モバイルバッテリー~Zikko「AirStation Power 10000」レビュー
2019年01月22日
TEXT:山口真弘(ITライター)
今回紹介するのは、ワイヤレス充電機能がついた容量10,000mAhのモバイルバッテリーです。通常のモバイルバッテリーと同じくケーブルをつないでの充電に加え、Qi規格に準拠したワイヤレス充電にも対応しており、ボディの上にスマホを載せることで、ワイヤレスで充電が行えるという一品です。
さらに本製品はこれらの機能に加え、スタンドとしても使えるギミックを備えています。これにより、本体にスマホを立て掛けての充電にも対応できます。現在市販されているワイヤレス充電器は、スタンド型と平置き型、大きく2種類に分かれますが、本製品はそのどちらをもカバーしているというわけです。
天板にQi充電器を内蔵するため、本体は10,000mAhのモバイルバッテリーとしては大柄
ケーブルおよび日本語の取扱説明書が付属します。ケーブルは片端がUSB Type-C仕様
天板部にQi規格準拠のワイヤレス充電機能を搭載。コイルは3つ搭載するとされています
バッテリー本体がそこそこ重いこともあり、安定感はやや微妙ではあるのですが、デスクなど揺れが少ない場所に置いて使うぶんには、しっかりと自立できます。スマホを支える上面には滑り止めのウレタンも貼られていますので、置いたスマホの位置が容易にずれることもありません。
スタンドとして使う場合、まず裏面に磁力で吸着している金属製のプレートを取り外します
取り外した金属プレートを、本体下部のスリットに奥に向かって差し込みます
完成。この状態でスマホを立て掛けることでスタンド型のワイヤレス充電器として使えます
また本製品はこれに加えて、通常は給電に使うUSB Type-Cポートを使って、さらにもう1台、スマホなどのデバイスを充電できます。このUSB Type-Cポートは急速充電の標準規格であるUSB PD(Power Delivery)にも対応しており、通常の充電器をはるかに上回るスピードでの充電が可能です。
テスタを用いてチェックしたところ、最大18W(5V/2A、9V/2A、12V/1.5A)に対応しており、手持ちのUSB PD対応スマホをつないだところ、実測値で約11Wで充電が行えました。通常のUSBポート経由だと実測値で数W程度のケースがほとんどですので、2倍前後のスピードで充電できることになります。急いで充電したい場合には、これは大きなメリットです。
なおこのワイヤレス充電と有線での充電は排他式ではなく、同時利用が可能ですので、ワイヤレス充電で1台、左側面のUSB Type-Cポートで1台、右側面のUSBポートで1台と、最大3台のスマホもしくはデバイスを同時に充電できます。容量の関係もあって実際にはそこまでする人はいないと思いますが、本製品のポテンシャルの高さがうかがえます。
ワイヤレスで充電している様子。5Wのほか7.5W、さらに10Wでの出力にも対応します
ワイヤレス充電は平置きでも行えます。バッテリーの残量は側面のLEDで4段階で表示されます
通常のモバイルバッテリーのように有線ケーブルを使っての充電にも対応します
左側面のUSB Type-Cポートを活用することで、同時に3台充電というワザも可能です
また見逃せないのが、モバイルバッテリーを充電しながら同時にスマホも充電する、いわゆるパススルー充電に対応していることです。就寝前にセットしておけば、夜中にいちいちケーブルをつなぎ替えることなく、朝まで両方の充電を終えられるわけで、これも出張や小旅行にぴったりの仕様です。こうした実用性の高い製品を待ち望んでいたという人も多いのではないでしょうか。
ケーブルを接続した状態でスマホをセットすれば、本体とスマホを同時に充電できます
左側面のUSB Type-Cポートはバッテリーの充電に加え、スマホへの給電にも対応します
実際に使ってみて、2点だけ、やや不便に感じたことがあります。ひとつは有線での充電に使うUSBポートが、本体の長辺の側にあることです。一般的なモバイルバッテリーは、USBポートは短辺の側にありますが、本製品はスタンドでの利用時にこの短辺の側がふさがってしまうため、やむを得ず側面につけたものと考えられます。
これの何が問題かというと、コネクタが左右に突き出る形になるため、ケーブルでスマホとつないだままポケットやバッグに入れるとかさばることです。豊富な機能と差し引きすれば十分にお釣りがくるレベルですが、ポケットに入れっぱなしにして使う機会が多い人にとっては、気になることがあるかもしれません。胸ポケットなど、幅がスリムなポケットであればなおさらです。
もうひとつは、ケーブルを接続せずに本製品単体でワイヤレス充電を行う場合、本体側面のボタンを押さなければ充電がスタートしないことです。一般的なQi充電器であれば、本体に乗せただけで充電が始まるのですが、本製品はもともとモバイルバッテリーでもあり、安全性も鑑みて、どうしてもこうしたギミックが必要だったのでしょう。
ただしケーブルを接続している場合は、ボタンを押さなくとも、乗せるだけですぐに充電が始まります。つまり挙動としては辻褄が合っており、きちんと利便性を考えて設計されているのですが、ケーブル接続の有無で挙動が異なることを把握していないと、充電しているつもりができていなかったというミスをしがちです。この点は慣れるしかなさそうです。
一般的なモバイルバッテリーと異なり、USBポートは短辺側ではなく長辺側にあります
ケーブル未接続時はボタンを押さなければ充電が始まりません。慣れるまではミスしがち
これでいて価格が1万円や2万円ともなればさすがに躊躇するのですが、本製品は実売が8000円台と、コスト感覚がおかしくなってしまうほどのリーズナブルさです。国内代理店によるPSEマークもきちんと取得していますので、長く使える高機能なモバイルバッテリーを探しているのであれば、文句なくおすすめできる1台と言えるでしょう。

山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn