カードリーダー搭載、モバイルバッテリーとしても使える欲張りな11ac対応コンパクトルータ~RAVPower「FileHub RP-WD009」
TEXT:山口真弘(ITライター)
「宿泊先のホテルにはWi-Fiルータの持ち込みが欠かせない」と言うと、怪訝な顔をする人がいます。今やほとんどのホテルではWi-Fiが常備されており、わざわざWi-Fiルータを持ち込まなくても、ホテルが用意しているSSIDを使ってネットに接続できるじゃないか、というわけです。
確かにその通りなのですが、Wi-Fiに接続したい機器が複数あるならば話は別です。なぜなら、それら機器ひとつひとつにWi-Fiのパスワードの設定を行うとなると、相当な手間がかかるからです。こうした場合、あらかじめ全機器と接続設定を済ませたWi-Fiルータがあれば、それを有線LANポートに接続するだけで、すべての機器が一気にWi-Fiに接続可能になります。
こうしたWi-Fiルーター機能に加えて、外出先で便利に使えるカードリーダー機能などさまざまな機能がオールインワンになったのが、今回紹介するRAVPowerの「FileHub RP-WD009」です。
ひとつはファイル共有機能です。本製品にはSDカードスロットとUSBポートが搭載されており、前者にはSDカード、後者にはUSBメモリなどのストレージをつなぎ、本製品にWi-Fi接続したノートPCやスマホ、タブレット間でデータの参照やコピー、バックアップが行えます。直接データを受け渡したり、あるいはオンラインストレージ経由でコピーする必要がありません。
音楽や動画などメディアファイルの共有にも対応しています。DLNAおよびSambaを使っての共有ですので、自宅でNASを使っているのと同じ感覚で、ファイルを共有できます。あらかじめ音楽や動画を入れたSDカードやUSBメモリを用意しておき、旅行先などでこれらをストリーミング再生して楽しむといった使い方ができます。
さらにSDカードスロットは、ワンボタンバックアップ機能にも対応しています。これは本体側面のボタンを押すだけで、カード内の写真を、本製品に接続したUSBメモリにバックアップできる機能です。この機能があれば、外出先で撮影した写真などを即バックアップし、ファイル消失に備えることができます。
この内蔵バッテリーを用いることで、Wi-Fiルーターとして使う場合にも、電源に接続せず単体で運用できるのもユニークです。連続使用で最大8.4時間、スタンバイ時では最大14.5時間利用できますので、夜にビジネスホテルにチェックインしてから翌朝のチェックアウトまで、電源に一切つながずに運用するのも不可能ではありません。
実際にはそこまでハードな使い方をしなくとも、近くに電源がない時に一時的にバッテリーで運用できるのは便利ですし、サブのモバイルバッテリーとしても重宝するでしょう。バッテリーの残量がややわかりづらいのは専用の製品と比べた場合のネックですが、実用性は十分です。
もうひとつのネックは、ユーザーインターフェースが独特なことです。例えばスマホアプリからファイルを操作する場合、それが本製品の中にあるのか、それともスマホの中を参照しているのか、画面を見ただけでは直感的にわからないこともしばしばです。こればかりは慣れるしかないでしょう。
以上のように、気になる箇所もなくはないのですが、Wi-Fiルーター、カードリーダー、モバイルバッテリーをそれぞれ別に持ち歩くことを考えると、旅行や出張でこれひとつ持っていけばよいというのは分かりやすく、かつ複数の機能が連携できるのも強みです。ここまで紹介した機能のうち「最低2つ」の機能を必要とする人であれば、候補に入れておくべき製品と言えるでしょう。
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn
2019.10.01 Tue