第3話 ヒットスタジオあれこれ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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まざまなジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回はグラフィック・デザイナー、イラストレーターのマーチン荻沢さん(HIT STUDIO)を取材し、今日までの足跡をたどりま


第3話 ヒットスタジオあれこれ



マーチン荻沢さん

新宿区歌舞伎町の仕事部屋にて、マーチン荻沢さん


VOWとともに28年



──現在、ヒットスタジオは荻沢さん一人による主宰になっていますが、高橋さんとのコンビは何年続いたのですか?

荻沢●10年ぐらいかなぁ。

──離れて仕事をやろうと決めた時は、どのようなお話を?

荻沢●まぁ結局、お互いやりたい仕事の方向も変わって、高橋くんはデザイナーよりもイラストレーターに専念したかったんだね。で、俺はどっちかと言えばデザイナーのほうがいいと思ったのよ。

──どうしてですか?

荻沢●なんかデザイナーのほうが、いろいろな事ができるかな……と。イラストレーターって、結局イラストだけ描いているような気がして、デザイナーのほうが「得じゃん」という感じだったんだよ。

──でも、そのどちらにも湯村さんという師匠がいらっしゃる。

荻沢●そうだね。最初、そこからスタートだから……色使いやデザインは湯村さんから教わったと言える。やっぱり、それは抜けないね。

──で、荻沢さんはヒットスタジオの名前を引き継ぎ……

荻沢●うん。それで『宝島』のVOWシリーズも受け継いだ。受け継いでおいて、よかったわ。長いからアレ(笑)。単行本、もうVol.20だもん。雑誌の連載自体は1980年から始まったから、VOWとともに28年か! すごいよね、それって(笑)。

──あと、女子校の講師もされてませんでしたか?

荻沢●はいはい。宝仙学園のイラスト講座ね。割と長くやってね、卒業生を2人、アシスタントに入れたんだ。一人はいまもウチにいる角谷。在籍、長いよー(笑)。

──それから荻沢さん、Macの導入も早かったですよね?

荻沢●最初は全然話題にもなっていなかったし、知り合いが持っていたのかな……。その事務所に遊びに行ったら、なんだかわからないものが置いてあって、彼の話を聞いていたら「これからはコレの時代か……」って気がしたんだ。でも、その頃、全部買うと300万ぐらいかかったんだ。Mac1台とプリンターとスキャナーを一式。そのとき車を買い替えようと思っていたんだけど、Macのほうが仕事の役に立つと思って、買ってみたんだね。5年ローン(笑)。最初は、あんまり仕事にならなかった。でも、自分なりに結構使えていたから「あ、このまんま使ってみよう」と思って。そしたら『宝島』も表紙をDTP化するわ、どんどん出版界や印刷業界がDTP化されてきたんだよね。

──結構、勉強もされました?

荻沢●いや、勉強したはことないね。

──マシン系が好きなのです?

荻沢●いや、それまではワープロも触ったことなかったんだよ(笑)。

──荻沢さんとスージー甘金さんは導入が早かった思い出があります。

荻沢●最初に俺が買って、次に当時フラミンゴ・スタジオ(湯村氏のスタジオ)の関根くんが買ったのかな。で、スージーくん。

──東新宿の湯村さん一派の間にマシンが浸透していったわけですね。

荻沢●そうそう。仕事して稼いでも、ほとんどMac買ってたね。生活費なくてもいいやってぐらいに(笑)。いまなんか安いから、買っても楽なもんだよ。


SHIRONEKO『かご猫』ブックデザイン(宝島社/2003年)『笑う犬』ブックデザイン(宝島社/2005年)みうらじゅん『ちんぱい』

マーチン荻沢さんの仕事より
左:SHIRONEKO『かご猫』ブックデザイン(宝島社/2003年)
中:編集もヒットスタジオ名義で制作された『笑う犬』ブックデザイン(
宝島社/2005年)
右:みうらじゅん『ちんぱい』ブックデザイン(宝島社/2006年)


継続は妥協なり(笑)



──仕事は現在、エディトリアルが基本ですか?

荻沢●そうだね。中心は。

──雑誌とか単行本、楽しいですか?

荻沢●うん、面白いよ。……あ、どこか『宝島』以外のところ、紹介してくれない?

──僕が紹介してもらいたいぐらいですよ!

荻沢●ハハハ。お互い、しょうがねーな(笑)。

──ヒットスタジオ立ち上げから何年目ですか?

荻沢●うーん、30年くらいか。俺が一人になってからは、20年ちょっと。

──継続は力なりと申しますが、いままで営業なんてやったことないのでは?

荻沢●ないない。性に合わないもん(笑)。

──ヒットスタジオ・カラーみたいなものは、自覚があります?

荻沢●それは結構、気をつかっている。やっぱりポップな感じが好きだね。VOWシリーズには、そのカラーが出ていると思うよ。

──企画も自分にフィットしている?

荻沢●そうそう。でも、最近はもっと原色とか使いたいんだけど、そうもいかない。相手(クライアント)の意見も取り入れなくてはならないし。自分のやりたい仕事ばっかりというのは、ありえないからね。まぁ、妥協するっていうのは変だけど、そうやっていかないと続かないよ。

──長く続ける秘訣は、そこ?

荻沢●そう。継続は妥協なり(笑)。

──絵のほうは引き続き描いているんですか?

荻沢●うん。細々と、仕事が来ればやっているよ。仕事が来ないとやらないんだ。昔から体質的に。でも、本当は仕事なくても描きためるのが理想だな。だから、あんまり作家タイプじゃないんだ。作家タイプの人、うらやましいと思うよ。


次週、第4話は「気分はいまもヒッピー」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)


マーチン荻沢さん

[プロフィール]

まーちん・おぎさわ●1953年東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、高橋キンタロー氏とともに「HIT STUDIO」を設立。宝島社『VOW』シリーズをはじめとするグラフィックデザイン、イラストレーションの両輪で活動を続けている。http://hitstudio.net/




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