第4話 継続することの大切さ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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omdrの代表を務める美澤修氏によるデザイン術を紹介してきた本連載。最終回となる第4話では、新進気鋭のジュエリーショップ「COCOSHNIK」に関する印刷物に注目し、ブランドディレクションに携わる際の心構えについて話をうかがう。


第4話
継続することの大切さ「COCOSHNIK」




スタッフ間での意識共有


「高感度」「日常感覚」「本物志向」をキーワードにしたジュエリーブランド「COCOSHNIK」。広告ビジュアルは、ブランドの起ち上げ当初から美澤さんの担当だ。

「東欧の歴史に支えられてきたクラシックさをモダンに再構築するというのが商品コンセプト。通常は18金を使うようなところに、わざと10金を用いて渋みを出したり、シンプル一辺倒ではないクセのあるデザインで、今までなかったファインジュエリーだと感じました。」(美澤)

「東欧」というキーワード。その一言では消費者にはイメージが掴みにくい。ともすれば、ややネガティブな印象すら与えかねないだろう。当初、その「モヤモヤとしたわかりづらさ」が、制作サイドや販売スタッフにまで広がっていたことを美澤さんは感じ取った。

「その状況を打破するために、商品カタログに先だって、 具体的な 方向性を示すコンセプトブックを作成しました。社内的にも、意識を共有するための媒体が必須だったのです。内部で方向性が確立されれば、それを伝えることで市場での認知も一気に高まると考えました」(美澤)

その冊子では、東欧の古き良き時代の形や、社交界の圧倒的なきらびやかさを表現しつつ、必ずモダンなテイストも加えた。クライアントには「この世界観からブレないようにしながら、長い目で見てブランディングしていきましょう」と伝えた。

「継続や蓄積はブランドにとっての強みです。だから、特に気を配るのは、芯をブレさせずにクリエイティブを継続し、クライアントにも耐えてもらうこと。ときには変化も必要ですが、売れ行きなどに左右されて、誤ったタイミングで変化を重ねていてはかえって失敗を招くものなのです」(美澤)

最適な写真を得るために



その後、認知の高まりと足並みを揃えて、本格的な商品カタログの制作にも着手。そこでも世界観の踏襲には気を配り、機能面だけにこだわり過ぎないように注意した。その顕著な例がパール光沢のあるペルーラ・ラスターにPP加工を施して作られたカタログだ。

「この紙は、決して印刷の再現性が高くはありません。しかし、その点は大きな問題ではないのです。ここで第一に表現すべきはブランドの世界観。通信販売のカタログとは違って、このカタログの目的は、店頭に足を運んでもらうことにありますからね」(美澤)

これらの媒体を支える写真の数々もコンセプトを的確に伝える秀逸なものだ。今回までに紹介してきた仕事と同じく、写真家との共同作業で最終的な品質は大きく変化する。

「打ち合わせを綿密に行い、撮影準備にも一緒に取り組みます。最終的にフォトグラファーの力量のおかげで、予想以上の写真が仕上がりました。これはデザイナーにとってすごく嬉しいことです」(竹内)

「僕たちは写真に関して非常に細かくディレクションします。しかし最終的にはフォトグラファーの裁量に委ねる部分も多いのです。そうやって成功へと導くためにはやはり意識の共有が大切です。そこでも最初に提示したコンセプトブックが役立っています」(美澤)
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏  作品撮影:宮本昭二 )


「このアートディレクターに聞く」第31回美澤修さんのインタビューは今回で終了です。次回からは新村則人さんのお話を掲載します。





美澤修●みさわ・おさむ
1968年生まれ。1989年渡米。1992年School of Viasual Atrsを卒業。Javier Romeroに師事し、NECやAppleの広告およびパッケージデザインなどを手がける。その後、フリーランスのアートディレクターとしてニューヨークを拠点に、CBS、Neiman Marcus、MoMA などの仕事を手がける。1998年に帰国し美澤修デザイン室設立。ファッション、コスメティックブランド、ジュエリー、出版物、ホテルをはじめ、さまざまな分野でブランディング、クリエイティブディレクション、グラフィックデザインを行う。主なクライアントにCHANEL、FRANCK MULLER、Kanebo、DAMIANI Japan などがある。
http://www.omdr.co.jp/

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