第4話 PCM竹尾「らくがき帖」 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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このアートディレクターに聞く
資生堂の表現に、新たな風を送り込む
第37回 丸橋桂



旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考のプロセスと創作のスタンスに迫るコーナー。第36回目は資生堂のアートディレクター、丸橋桂 さん。最終話で注目するのは、丸橋さんを含むJAGDA新人賞受賞者3名が三者三様にデザインした「らくがき帖」。あわせてそのディスプレイ用ポスターの 制作秘話に迫る。


第4話 PCM竹尾「らくがき帖」
デザイナーのアイデアが光るユニークなステーショナリー



●with words for escape
「明日でいいよ」「まず、できることだけしよう」といった、ストレスから解放してくれる力の抜けた言葉を散りばめた一冊。表紙では「エスケイプ」を蜘蛛の巣から逃げるらくがきちょうで表現した



●with cheer-up words
人々を励ましてくれるポジティブな言葉「大丈夫、大丈夫」「おお、そうきたか」が散りばめられた一冊




●with confusing words
気持を惑わすような挑発的な言葉「あせるな急げ」「それもこれも紙一重」「正解を探すな」などを綴った一冊。表紙では混乱させるような様子を、タイポグラフィや本のイラストなどで表現している



遠目に見ると本物の女性が壁にはり付いているように見えるが、近寄って目にすると「らくがき帖」の広告とわかるディスプレー表現。「落書き」というアクションがわかるのは、モデルの存在があってこそ









使い手に語りかけてくるらくがき帖


このプロジェクトは、PCM竹尾から「新しいステーショナリーを作ってほしい」との依頼を受けて、2008年にJAGDA新人賞を受賞した岡室健さん、小杉幸一さんとともに手がけました。依頼された当初は「新しいステーショナリー」というだけで、具体的には何も決まっていなかったのですが、3人でブレストしていた際にピンと来たのが「らくがき帖」というキーワード。響きが懐かしいですし、広がりがありそうということで、三者三様の解釈でデザインをスタートしました。

僕が手がけたものは「Rakugaki-cho with word」シリーズの3種。「with cheer-up words」なら人々を励ましてくれるような言葉、「words for escape」ならストレスから解放してくれる力の抜けた言葉、「confusing word」なら「あえて気持を惑わすような挑発的な言葉」を、らくがき帖の中に散りばめています。さらに渋谷ロフトにディスプレイする広告も作ったのですが、これは遠くから見るとモデルの女の子が目に入り、近づいて見ると女の子が落書きをしているとわかる、距離の違いを活用した表現です。この写真は天井の高いスタジオで、3人がデザインしたラクガキ帳をきれいに並べて、真俯瞰で撮影しました。スタジオでは、いきなりらくがき帖をきれいに配列できるわけはありませんので、あらかじめMacを使って、縮小した状態で配列し終えてから、それを原寸に引き延ばした配列図を用意しました。


今回のように商品そのものを手がけるのははじめてだったのですが、商品の告知を目的とした普段の仕事とは異なり、自分が企画した商品が販売されて、市場での反応がわかるのは面白いですね。今回のらくがき帖に関しては、ちょっと人を喜ばせるようなプレゼントなどとして使ってもらえればと思っています。
(取材・文:立古和智 人物写真:谷本夏)




 

 

 

 

 

 

 


 

●丸橋桂(まるばしかつら)
東京藝術大学美術学部デザイン科卒。98年株式会社資生堂入社。08年JAGDA新人賞を受賞。ADC賞,ディスプレイデザイン優秀賞、ディスプレイ産業奨励賞代表的な仕事に整髪料「uno」の広告、ウインドウディスプレイ「GINZA」などがある。


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