第5話 自分の『武器』を持つ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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第5話 自分の「武器」を持つ






アート・プロジェクト「MIRRORBOWLER」について



──現在、仕事以外で作っている自分の作品とは?

打越●GLAYなどで仕事を共にしてきた写真家の野村浩司さん、美術セットの田村さんたちと「MIRRORBOWLER」というプロジェクトを進めているところです。やはり12cmのCDジャケットだと「伝えきれない」という限界がある。原寸で作ったものを原寸で見せたいな……という思いが芽生えてきたんですね。そこで、ミラーボールを使って空間を演出するインスタレーションを5年前に始めたんです。

──どのような場所で活動しているのですか?

打越●これまで、フジロック・フェスティバルやライジングサン・ロックフェスティバルをはじめ、トランス系のパーティや江ノ島の参道、またはショーメやカルティエのパーティで披露してきました。いまはまだほとんど儲けがない状態ですが、今後も池上本願寺や江ノ電の車内とか、ちょっとずつ規模が大きくなっているから面白い。

──作品の写真を見ると、非日常的な空間ですね。

打越●非日常というか……バカですよね(笑)。もう、バカを貫き通そうと思っているんです。前回の話にもありましたが「CGでできるじゃん」というのは、平面だけの感覚じゃないですか。でも作る人間も、それを見る人たちも、一緒に巻き込んでいく感じ……それを「MIRRORBOWLER」で試していきたいと思うんです。で、ゲヘヘと笑いながらお金がもらえるのならば、願ったり叶ったりですから。

──デザイナーの域を超えようとする試みですね。

打越●もはや、建築業に近いものがあります。具材なども、土建屋さんが行くような専門店でないと買い揃えられないほど。ちなみに今夏のエゾロックでは、電柱を6本打ち立ててもらったんです。……ちょっと、頭がおかしいですよね(笑)。



「MIRRORBOWLER」による作品例。打越氏、野村氏、田村氏を中心に、スタッフ総勢10〜20名で各所を巡る。
その運搬車とスタッフ移動車による旅路は、さながら「ジプシー」とのこと。
最近、ついに「ミラーボーラーズ株式会社」も設立!

いい音楽と巡り会える幸せ



──最後に、これからデザイナーを志望する人にアドバイスを。

打越●早いところ、まず自分の武器を持つのがいいですよね。人に負けないというのではなく、自分が得意とする何かをひとつ持つ。それが自信に繋がり、そこに仕事がヒットしたりすると、そこから攻めていけるから。オールジャンルですべてができるというのもいいことですが、何かひとつ突出したものがあると形が現われてくると思います。

──打越さんの場合、その「武器」とは?

打越●はったりですね(笑)。

──言い切りますね。

打越●だって学業は中途半端なまま、経験もないのに、根拠のない自信だけでやってこられたので……いま考えると恐ろしいですね(笑)。音楽は好きだけど、世の中のマニアに比べれば全然比較にならないし。ただ、捉え方が違うのかな……。いい音楽と巡り会えると、ほんと幸せな気分になりますから。それがあるからこそ、この仕事を10年も続けていられているのだと思います。

──デザイナーになる前は転々としていたのに、不思議ですね。

打越●初めてプレゼンが通ったときのように、ラフの段階で素直に「かっこいいね」と言ってもらえる瞬間が気持ちいいんです。同じ愉しみを共有できた感じ。

──デザイナーとしての「職人」を突き詰めると、今後どうなると思いますか?

打越●どうなるんだろう……。これまでボーッとしてきたから、そんなこと考えてもみなかったけれど、音楽関係の仕事は続けていきたいです。その仕事がヒットに繋がると正直うれしいし。自分の作品が世に出るとかということではなく、関わった音楽を好きだと言ってくれたり気に入ってくれる行為が楽しいんです。

──裏方っぽい発言ですね。

打越●だって、主役は音楽ですから。

──では、しばらくはこのままの状態をキープして?

打越●人を育てたいという気持ちもあります。テンパったときのお手伝いも必要ですが、ちゃんと教えて育てていくのも大切だと思っているので。もちろん、その一方で自分の作品も作り続けていきたい。今後は、そちらのほうがメインになっていくといいですね。





「これがデザイナーへの道」第2回・打越俊明さんのインタビューは今回で終了です。
次週からは白石デザイン・オフィス、白石良一さんのお話を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:栗栖誠紀)


錦瓊・打越俊明氏

[プロフィール]

うちこし・としあき●1969年東京都生まれ。高校卒業後、洋食店に就職。その後、イギリス留学、音楽事務所勤務、デザイナー・アシスタントを経て、24 歳で独立。デザイン事務所King Cay Lab.(後に「錦瓊」と表記)を設立し、数多くの音楽CDジャケットなどを手がける。現在、デザイン業と同時にアート・プロジェクト 「MIRRORBOWLER」の一員として活動中。

http://www.kingcay.com/

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