第2話 2ndアルバム『カメラ・トーク』について
このときの写真を超えられない
――1stアルバム後、フリッパーズは小山田圭吾と小沢健二の2人組になり、90年6月に2ndアルバム『カメラ・トーク』が発表されました。このスリーブ写真はロンドン・レコーディング直後、パリで撮影されたものですね。
三浦●これは全部、信藤さんの写真。
信藤●最初、三浦さんの予定だったんです。でも、直前にスケジュールが合わなくて行けなくなってしまった。で、三浦さんが「信藤さんが撮ればいいじゃん」と言って、カメラとフィルムを渡されて(笑)。
三浦●「シャッター押せば写るから」って(笑)。
信藤●それまで全然撮ったことがなかったから、これが信藤カメラマンのデビュー作ですよ。プリントは三浦さんのアシスタントがやってくれたんだけど。
三浦●でも、すごく新鮮でよかった。それまで一緒に仕事やってきて、信藤さんならいい写真が撮れるなって確信してたから。
信藤●この撮影のあと、上がりのベタを見てわかったんです。自分が「いいな」と思った瞬間に、シャッター押せばいい写真が撮れるんだって。まあ、当然と言えば当然なのですが。
三浦●そうそう。そんなものですよ、写真は。
信藤●ただ……このときのカメラマン・デビューの写真をいまだに超えられないんだよね(笑)。テクニック的には、ずいぶんうまくなっているんだけど。
三浦●これは、何より二人と信藤さんのリズムがいいんだよ。距離感や関係性が、説明しないでもちゃんと伝わる。
フリッパーッズ・ギター『CAMERA TALK/カメラ・トーク』 (1990年6月6日リリース/ポリスター)
小山田圭吾、小沢健二のメンバー2人体制となって制作された2ndアルバム。
テレビドラマ『予備校ブギ』の主題歌「恋とマシンガン」を収録、前作の全英語詞から日本語詞へとアプローチが変わり、
当時の音楽シーン最前線に躍り出た一枚。
1stアルバム同様、デジタル・リマスタリング&紙ジャケット仕様の復刻盤が8月25日リリース(felicity/2,500円)
信藤●いま思うに……80年代のYMOが代表するスノッブな世界観があったじゃないですか。それはもちろん好きでしたけれど、僕はそうしたビジュアルを壊したものをやりたかったんです。60年代のビートっぽい感じというか、パンキッシュな感じというか……80年代的なものへのアンチテーゼとしてこれ(2nd)があった。
――このあたりから、本人たちの意見も?
信藤●表1に関しては、本人たちが出たくないという意向がありましたね。でも、それも当時の邦楽シーンにおいては、アンチテーゼだったように思います。
――このあたりから、本人たちの意見も?
信藤●表1に関しては、本人たちが出たくないという意向がありましたね。でも、それも当時の邦楽シーンにおいては、アンチテーゼだったように思います。
従来の写真手法への違和感
――それこそ三浦さんは80年代、YMOの写真を多く撮られていましたが、フリッパーズを撮るときにギャップを感じたことは?
三浦●最初はありましたよ。でも、彼らはちゃんと話ができて、人間味があった。意外に根性もあって、体育会系な現場だったね。
――イメージ的にはヤワなように捉えられてましたが……。
三浦●いや。こだわりも強くて、納得がいくまでトコトンやるから、それはこっちも刺激を受けた。信藤さんも撮影のときにスノッブな雰囲気を壊すから、こっちも体力勝負。そういうのは80年代のミュージシャンではありえなかった。
信藤●彼らは、自ら進んで壊すタイプだったし。
三浦●あと、そうやって撮った写真のどこを信藤さんが拾って、どうデザインするかは楽しみだったね。
信藤●三浦さんの写真の中でも、一番フォーカスがアウトしているのを使ったり(笑)。
三浦●何を選ぶか、こっちも興味津々だったよ。
三浦●最初はありましたよ。でも、彼らはちゃんと話ができて、人間味があった。意外に根性もあって、体育会系な現場だったね。
――イメージ的にはヤワなように捉えられてましたが……。
三浦●いや。こだわりも強くて、納得がいくまでトコトンやるから、それはこっちも刺激を受けた。信藤さんも撮影のときにスノッブな雰囲気を壊すから、こっちも体力勝負。そういうのは80年代のミュージシャンではありえなかった。
信藤●彼らは、自ら進んで壊すタイプだったし。
三浦●あと、そうやって撮った写真のどこを信藤さんが拾って、どうデザインするかは楽しみだったね。
信藤●三浦さんの写真の中でも、一番フォーカスがアウトしているのを使ったり(笑)。
三浦●何を選ぶか、こっちも興味津々だったよ。
『カメラ・トーク』のインナービジュアル。5面の蛇腹にパリ撮影の写真をふんだんに使用。
裏面は歌詞を掲載
信藤●たとえば屋外で人物を撮るとき、逆光だったら手前にレフを入れて顔を起こして、シルエットにしないで撮る方法が普通なんですよね。特に僕はそれが嫌だったんです。ずっと「シルエットでもいいじゃん」と思ってて。そういうことが写真の世界では根強くあった。
三浦●ピントのズレはNGとか。
信藤●いわば、写真の完成度を上げていくような意識ですね。でも、そうすることで写真がつまらなくなる場合もある。別にブレててもいいし、シルエットでもいいし。そういう違和感が僕の中ではいっぱいあって……だから、当時のメインストリームなものに対して、反発したい気分がすごくあったんですよね。
――光は自然の恵みもののほうがいい、と。
信藤●そうそう。
三浦●見たまんまの写真ね。プロのカメラと違うけど、これでいいんだってことを信藤さんは示してくれたね。
――その意味で、フリッパーズは写真を撮りやすかったバンドですか?
信藤●うん、撮りやすかったと思います。
三浦●そうだね。この後のマキシ・シングル(*1)は俺が撮ったけど、屈託なくポーズもすぐ決まるし。自分たちがどういうふうにすればいいか、自然にわかってる。
――ちなみに今回は“幻のオリジナル・デザイン”での復刻(*2)ということですが。
信藤●その話、実はよく憶えてないんです……。でも、ありえますね。多分、ギリギリになってデザインを修正したんです。レアな話だなぁ(笑)。
三浦●ピントのズレはNGとか。
信藤●いわば、写真の完成度を上げていくような意識ですね。でも、そうすることで写真がつまらなくなる場合もある。別にブレててもいいし、シルエットでもいいし。そういう違和感が僕の中ではいっぱいあって……だから、当時のメインストリームなものに対して、反発したい気分がすごくあったんですよね。
――光は自然の恵みもののほうがいい、と。
信藤●そうそう。
三浦●見たまんまの写真ね。プロのカメラと違うけど、これでいいんだってことを信藤さんは示してくれたね。
――その意味で、フリッパーズは写真を撮りやすかったバンドですか?
信藤●うん、撮りやすかったと思います。
三浦●そうだね。この後のマキシ・シングル(*1)は俺が撮ったけど、屈託なくポーズもすぐ決まるし。自分たちがどういうふうにすればいいか、自然にわかってる。
――ちなみに今回は“幻のオリジナル・デザイン”での復刻(*2)ということですが。
信藤●その話、実はよく憶えてないんです……。でも、ありえますね。多分、ギリギリになってデザインを修正したんです。レアな話だなぁ(笑)。
(*1/写真右)『カメラ・カメラ・カメラ』(1990年9月25日リリース)
(*2/写真左)オリジナル盤の制作時、入稿前のデザインを確認した後に地方プロモーションへ出かけたメンバーとスタッフ。
彼らが帰京後、色校を見たらデザインが微妙に変更されていた……。
解散後にリリースされたアナログ盤では当初の図案に差し戻されたが、CDとしては今回の復刻盤が初となる。
(*2/写真左)オリジナル盤の制作時、入稿前のデザインを確認した後に地方プロモーションへ出かけたメンバーとスタッフ。
彼らが帰京後、色校を見たらデザインが微妙に変更されていた……。
解散後にリリースされたアナログ盤では当初の図案に差し戻されたが、CDとしては今回の復刻盤が初となる。
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次週、第3話は「3rdアルバム『ヘッド博士の世界塔』について」を掲載します。
(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)
[プロフィール] しんどう・みつお●1948年東京都生まれ。コンテムポラリー・プロダクション主宰。音楽ソフトのグラフィック・デザインを数多く手がける一方、PVの演 出をはじめとする映像作家として活動。1998年、初の監督映画作品『THE DETECTIVE IS BORN 代官山物語「探偵誕生」』を発表。7月29日より、最新作『男はソレを我慢できない』が公開(渋谷シネ・アミューズほか、全国順次ロード ショー)。http://www.ctpp.org/ |