第5話 戦友たちの17年が過ぎて
フリッパーズ「以前」のユーミン
フリッパーズ「以前」のユーミン
──ここまで駆け足でしたが、改めて「フリッパーズ時代」の出来事を振り返ってどのような気持ちですか?
信藤●最初にも言ったけれど、時代が一巡した感覚が強いですね。
三浦●最近、このフリッパーズやサンタナ(*1)みたいに紙ジャケの復刻が多いけれど、デカイやつを見たい気持ちはあるよね。CDは見なれているし、これ一個で芸術品になっちゃう。しかし、CDの後はどうなるのかね……。
信藤●どうなるのでしょうね。
三浦●初期でこういうものが(3rd)できちゃうんだから。
信藤●日本はCD先進国なんですよ。市場でCD化が進んだのは日本が一番早くて、当時は海外のCDから学ぶべきものがなかったから。
三浦●ただ写真が載っていればいいか、という認識で。
信藤●そうですね。世界中で、さすがに3D眼鏡までは……。でも、考えてみれば、その前にユーミンのアルバム(*2)で立体デザインをやりましたよね。ちょうどユーミンもCDリリースを始めた時期で、そのときはプロデューサーの松任谷正隆さんが「マーブルチョコレートのオマケどうですか?」ってアイデアを出して(*3)。
三浦●ああ、あれも大変だった(笑)。
信藤●モアイ像みたいな小道具まで作って。
──デザインというよりも舞台セットに近いですね。
信藤●ミニチュアの撮影用セットを作りました。
三浦●あの当時は、まだコンピュータがなかったからね。全部、手作り。
──するとフリッパーズ以前、ユーミン・プロダクツが経験上において重要であったとも言えますか?
信藤●確かに我々にとっては蓄積になったけれど、そうしたアイデアがどこから生まれたかということですよね。
三浦●うん。フリッパーズは自分たちで見せ方を考えられたから。音も含めて、信藤さんや俺らを乗せていくのがうまいんだ。
三浦●最近、このフリッパーズやサンタナ(*1)みたいに紙ジャケの復刻が多いけれど、デカイやつを見たい気持ちはあるよね。CDは見なれているし、これ一個で芸術品になっちゃう。しかし、CDの後はどうなるのかね……。
信藤●どうなるのでしょうね。
三浦●初期でこういうものが(3rd)できちゃうんだから。
信藤●日本はCD先進国なんですよ。市場でCD化が進んだのは日本が一番早くて、当時は海外のCDから学ぶべきものがなかったから。
三浦●ただ写真が載っていればいいか、という認識で。
信藤●そうですね。世界中で、さすがに3D眼鏡までは……。でも、考えてみれば、その前にユーミンのアルバム(*2)で立体デザインをやりましたよね。ちょうどユーミンもCDリリースを始めた時期で、そのときはプロデューサーの松任谷正隆さんが「マーブルチョコレートのオマケどうですか?」ってアイデアを出して(*3)。
三浦●ああ、あれも大変だった(笑)。
信藤●モアイ像みたいな小道具まで作って。
──デザインというよりも舞台セットに近いですね。
信藤●ミニチュアの撮影用セットを作りました。
三浦●あの当時は、まだコンピュータがなかったからね。全部、手作り。
──するとフリッパーズ以前、ユーミン・プロダクツが経験上において重要であったとも言えますか?
信藤●確かに我々にとっては蓄積になったけれど、そうしたアイデアがどこから生まれたかということですよね。
三浦●うん。フリッパーズは自分たちで見せ方を考えられたから。音も含めて、信藤さんや俺らを乗せていくのがうまいんだ。
いい時代を経験してよかった
三浦●しかし、あの当時からコンピュータなしでやっていたのがすごい。
信藤●カッター使いがうまかったですから。あとスプレー糊(笑)。
三浦●今度、手作りでアナログっぽいものをやろうよ。職人みたいに。
──やはりLPサイズを作りたいですか?
信藤●CDとLPは別物だからなんとも言えないけど、小さいものばかり作っていると欲求不満になりますよね。……あ、でもちょうど先日、三浦さんに撮っていただいたGANGA ZUMBA(*4)のジャケット撮影は面白かったですね。
三浦●8×10で撮ったやつ。やっぱりドーンと「撮ってる」って感じがしてよかった。
信藤●仕上がりはCDサイズなんですけど……。
三浦●でも、プリントは密着だから、助手がビビっていいよ(笑)。
信藤●やっぱり8×10はいいですね。力がある。
三浦●うん。このボケ方は35mmじゃ出ない。
信藤●最近、8×10を使えるカメラマンってそんなにいないし。だから、どんどん撮るべきですよ、三浦さん。
三浦●この頃は4×5でも撮ってる。別にデジタルに対抗しているわけではなくて、撮られる方も撮る方も緊張感があるからいいんだよね。
信藤●何枚も撮れませんからね。
三浦●うん。
──そんなこんなで、フリッパーズの1st発表から17年です。
信藤●あっという間でしたね。
三浦●一気に彼らと信藤さんに引き込まれた。だから、戦友っぽいんだよね。
信藤●セールスうんぬんよりも、僕らスタッフが純粋に盛り上がってましたから。
三浦●うん。いい時代を経験してよかった。
(*1)横尾忠則デザインによる特大ジャケットが有名な『ロータスの伝説』など、
紙ジャケ仕様で復刻中。いわゆる「大人のロック」市場の成熟を物語る。
(*2)1988年作『Delight Slight Light KISS』。
以降『LOVE WARS』『天国のドア』『DAWN PURPLE』と、
レンチキュラ素材によって立体に浮き出る特殊ジャケットを採用していた。
今回で「フリッパーズ・ギターと『デザイン』の時代」は終了です。
(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)
紙ジャケ仕様で復刻中。いわゆる「大人のロック」市場の成熟を物語る。
(*2)1988年作『Delight Slight Light KISS』。
以降『LOVE WARS』『天国のドア』『DAWN PURPLE』と、
レンチキュラ素材によって立体に浮き出る特殊ジャケットを採用していた。
(*3)見る角度を変えると奥行きが変わる3Dシール。
(*4)THE BOOMの宮沢和史をボーカルに、高野寛、マルコス・スザーノなど
計10名のメンバーからなるミクスチャー・バンド。
1stミニ・アルバム『HABATAKE!』が発売中(Rhythmedia Tribe)
(*4)THE BOOMの宮沢和史をボーカルに、高野寛、マルコス・スザーノなど
計10名のメンバーからなるミクスチャー・バンド。
1stミニ・アルバム『HABATAKE!』が発売中(Rhythmedia Tribe)
今回で「フリッパーズ・ギターと『デザイン』の時代」は終了です。
(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)
[プロフィール] しんどう・みつお●1948年東京都生まれ。コンテムポラリー・プロダクション主宰。音楽ソフトのグラフィック・デザインを数多く手がける一方、PVの演 出をはじめとする映像作家として活動。1998年、初の監督映画作品『THE DETECTIVE IS BORN 代官山物語「探偵誕生」』を発表。7月29日より、最新作『男はソレを我慢できない』が公開(渋谷シネ・アミューズほか、全国順次ロード ショー)。http://www.ctpp.org/ |