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「iPhone 2.0が開く新たなビジネスの動き」(2) - MdN Design Interactive

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「iPhone 2.0が開く新たなビジネスの動き」 (2)
2008年7月29日

TEXT:大谷和利
(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)



iPhoneの利用法を示唆する
4つのアプリケーション


さて、そんなiPhoneだが、すでにApp Storeには五百数十もの有償・無償アプリケーションが登録され、その数は今も増えつつある。クオリティという点ではさまざまで、音楽のように30秒間試聴できたり、iPodゲームのような映像プレビューもないため、説明と何枚かの画像イメージ、そしてユーザーレビューだけから判断してダウンロードしなくてはならない。この点は、特に有償の製品に関しては今後の課題となりそうだ。

しかし、すでにいくつか今後のiPhoneアプリケーションや、企業にとってのiPhoneの利用法を示唆するタイトルも現れてきているので、その中から4つを採り上げて簡単に説明しておきたい。

「Evernote」
まず、情報ツールの「Evernote」。これは、すでにWebアプリケーションやMac OS XやWIndows向けのネイティブソフト環境としては整備されていたが、iPhone用のクライアントソフトがリリースされたことで、その応用範囲がさらに拡がった製品だ。

「Evernote」のiPhone版の画面。任意の部分をマルチタッチで拡大表示できる
「Evernote」のiPhone版の画面。任意の部分をマルチタッチで拡大表示できる

同じく「Evernote」のMac版の画面。英語のみの対応だが、写真データ内の文字を検索可能なテキスト化する機能もサーバー経由で提供されている
同じく「Evernote」のMac版の画面。英語のみの対応だが、写真データ内の文字を検索可能なテキスト化する機能もサーバー経由で提供されている

■「Evernote」のApp Store (iTunesが起動します。ご注意ください)
http://phobos.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=281796108&mt=8



どの環境で入力された情報も、瞬時にシンクロされて共有でき、どこにいても閲覧可能となる仕組みで、無償のアカウントを作って利用する。特に、iPhoneで撮影したイメージを、ケーブル接続なしにPCに転送できたり、PC側で編集した資料やクリッピングしたWebページをiPhone上でも見られるようになるメリットは大きく、常時接続環境を最大限に活かせるソフトとなっている。

弱点としては、現時点では日本語での検索ができないこと(入力は可能)。また、シンクされたテキスト情報をiPhone側で再編集できないことが挙げられるが、今後、改善されるものと思われる。すべてのサービスをフリーで利用可能だが、月あたりの情報活用量が棒グラフで表示され、これが一定水準以上になると、有償サービスへのアップグレードを促される。無償サービスで有用性を知ってもらい、自然に購読ユーザーに導くこのプロモーション手法も押しつけがましくなく、SaaS(サービスとしてのソフトウエア)的ビジネスモデルの1つの見本ともなりそうだ。


「AquaForest」
次に、ゲーム分野から「AquaForest」。プロメテック・ソフトウェア株式会社が開発した2次元物理シミュレーションエンジンを使ってハドソンが作り上げた新感覚のパズルゲームで、加速度センサーとタッチインターフェイスを上手に応用し、自由度の高い遊び方が実現されている。

物理特性を伴う物質を配置することでさまざまなパズルを解いていく「AquaForest」
物理特性を伴う物質を配置することでさまざまなパズルを解いていく「AquaForest」


中央にロープでぶら下がった容器内の水を右側の茶色の器に移し替えるパズルの画面。赤い線は、水を水蒸気化する炎を表し、最上部の水色の線は、水蒸気を結露させて水に戻す冷却素材を示す
中央にロープでぶら下がった容器内の水を右側の茶色の器に移し替えるパズルの画面。赤い線は、水を水蒸気化する炎を表し、最上部の水色の線は、水蒸気を結露させて水に戻す冷却素材を示す

■「AquaForest」のApp Store (iTunesが起動します。ご注意ください)
http://phobos.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=281893011&mt=8


グラフィックスもあえてアナログ的で、従来のゲームには珍しいフリーハンド描画を活かした画面デザインとなっている。新しい器(iPhone)が、新しい酒(ゲーム)を生み出したと考えて良いだろう。


「ウィズダム英和・和英辞典」
続いて、「ウィズダム英和・和英辞典」。これは、物書堂という新興ソフトハウスが三省堂からコンテンツの提供を受けて開発した辞書タイトルである。iPhoneのマルチタッチインターフェイスを巧みに利用したソフト自体の評価も高いが、同時に、従来のパッケージアプリケーションではショップでの存在感を発揮できない可能性もあった小さな会社の製品が、App Storeという仕組みを利用して普及を果たした好例と言える。

指先で快適に引くことができる「ウィズダム英和・和英辞典」。発音を聞くことも可能だ
指先で快適に引くことができる「ウィズダム英和・和英辞典」。発音を聞くことも可能だ

iPhoneを横持ちすると、レイアウトも変わって使いやすさを維持する工夫も盛り込まれている
iPhoneを横持ちすると、レイアウトも変わって使いやすさを維持する工夫も盛り込まれている

■「ウィズダム英和・和英辞典」のApp Store(現在、一次販売停止中)
 (iTunesが起動します。ご注意ください)
http://phobos.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=284350526&mt=8

実は、物書堂は、Mac用ワードプロセッサの草分けであった「egword」や、日本語入力システムの「egbridge」で一時代を築き、先頃パッケージソフト事業から撤退したエルゴソフトにおいて、それらのソフトの開発を担当されていた方が設立した会社である。本来であれば、流通チャンネルから確立しなくてはならない状況だったが、iPhoneの存在は、明らかにこうした実力あるソフトハウスに成長のチャンスを与える役割を果たした。

なお、「ウィズダム英和・和英辞典」は、インストール時に不具合が生じる可能性があり、原稿執筆の時点では一時的に販売が中止されている。原因究明後に販売再開となるため、注意されたい。


シャネル
そして最後に、ファッションメーカーのシャネルの情報配信用アプリ。これはシャネルに関する最新ニュースや、新作のオフィシャルフォト/ムービーをストリームするためのソフトだ。

シャネルの情報配信アプリは、同社の最新ニュースや新作の写真、発表会の動画などをストリームで提供する
シャネルの情報配信アプリは、同社の最新ニュースや新作の写真、発表会の動画などをストリームで提供する

同社のニュースページの例。グラフィカルデザイン的にも質の高いページレイアウトになっている
同社のニュースページの例。グラフィカルデザイン的にも質の高いページレイアウトになっている

■シャネルのApp Store (iTunesが起動します。ご注意ください)
http://phobos.apple.com/WebObjects/MZStore.woa/wa/viewSoftware?id=285797041&mt=8


同社の製品ラインのデザインについては好みが分かれるかもしれないが、ライバルのプラダが韓国のLG電子と組んでプラダフォンを発売したのに対し、すでに普及し、特定のユーザー層を得ているiPhoneというプラットフォームに向けてアプリの形で情報発信を行った点が興味深い。Podcastとはまた異なるメディアとしての展開には、今後とも大きな期待が持てるだろう。



大谷和利氏近影

[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/)アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodを作った男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』(アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)。8月11日に新刊『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(アスキー新書)発売。




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