
「トーマス・デマンド、ピーター・サヴィル、エディ・スリマン
いま話題の3人のクリエイターによる対談集」
2008年7月18日
TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)

『Art, Fashion and Work for Hire: Thomas Demand, Peter Saville, Hedi Slimane, Hans Ulrich Obrist and Cristina Bechtler in Conversation』
Published by:SpringerVerlagWienNewYork
ずいぶん前にアマゾンから「おすすめ」されて予約していた洋書『Art, Fashion and Work for Hire』がようやく発売になり自宅に届いた。予約してから時間が経ち、忘れかけていた頃に届けられる洋書は、まるで誰かからのプレゼントのようでなんだかうれしい。
この書籍のインフォメーションをもらったとき、まず驚いたのはなんといってもその豪華な登場メンバーだ。フォトグラファーのトーマス・デマンド、アート・ディレクターのピーター・サヴィル、ファッションデザイナーでありフォトグラファーでもあるエディ・スリマン。この3人による対談はファッションやアート、デザインが好きな人にとって、まさに夢の共演といってもいいセレクションなのではないだろうか。といっても全モノクロで、あくまでも対談集なので写真集やデザイン作品集とは違うし、掲載作品も数が少ない。注意してほしい。
天地21cm、左右17cmとコンパクトなサイズで、英語とドイツ語のバイリンガル。ピーター・サヴィルがファッションの仕事をやるようになったきっかけ、エディ・スリマンがどのようにしてファッションデザイナーになったのかなどといった話にくわえ、各自の今後のプロジェクトについて、アートと経済についてなど、世界の第一線で活躍している3人ならではの会話が収録されている。
シュプリンガーは世界各地にグループ会社を持ち、学術書を専門に出版している歴史ある出版社で、けっしてデザインやファッション、アートなどの専門出版社ではないが、編集的な視点から捉えるとこの1冊はとてもよくできている。なによりまず、この3人をセレクションしたバランス感覚が素晴らしい。特にエディ・スリマンといったいま最も注目されている人物を、こういった書籍に登場させるのはけっして誰もができることではない。編集者の手腕によるところが大きいだろう。
ベルリン、ロンドン、パリとそれぞれ活動拠点も異なれば、ファッション、グラフィック、彫刻、写真と職業も違う3人のアーティストの会話のなかには、タイトルにもなっている「Work for Hire」(編集部注:欧米において、著作権などはその企業に属することを前提としたうえで個人として請け負う制作業務の契約、といった意味)といった気になるキーワードもいくつか登場してくるし、ほかではあまり読むことができないアートとファッションとの関係性などについてそれぞれが語っているので、デザインを見るだけではなくて、たまには読んでみるのもどうだろうか。日本語版が待ち遠しい1冊だ。
■関連サイト(amazon)
http://www.amazon.co.jp/Art-Fashion-Work-Hire-Conversation/dp/3211757872

[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/



