
「『たて組ヨコ組』についての個人的体験」
2008年7月11日
TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)

『たて組ヨコ組』バックナンバーの数々。「たて組」カバーと「ヨコ組」カバーのダブルカバーになっている。
一番手前の右側、57号は田中一光特集号
ある企画で「あなたに影響を与えたデザイン雑誌を教えてください」と言われ、いくつかのデザイン雑誌をピックアップしたのだけど、グラフィックデザインに関していえば、市販限定ということでその際には紹介できなかったが、モリサワが発行していた『たて組ヨコ組』は毎号楽しみにしていた1冊だった。
『たて組ヨコ組』は「文字を扱う会社」モリサワの写真植字発明60周年記念として1983年に創刊され、2002年57号まで発行されていた季刊PR誌。毎号アートディレクションと編集企画を田中一光と勝井三雄の両氏が交互(時には2回連続してのこともあったようだが)に担当し、モリサワのPR誌というだけあって、毎号タイポグラフィなどを中心とした特集が多く組まれていた。誌名のとおり、毎号ダブルカバーになっていて左開きの「ヨコ組」パートは文字を横組みで組んだ特集記事を中心とした構成。右開きの「たて組」パートは文字が縦組みで、連載や情報などにあてられている。
両氏がADだけではなく編集企画までを担当しているだけあって、図版をカタログ雑誌のように並べるだけのようなレイアウトでなく、インタビューも深く掘り下げられている。特集にあわせた評論記事なども充実しており、デザインから編集まで一冊すべてにグラフィックデザインに対する真摯な姿勢が感じられるつくりだ。当時初めてこの誌面を知人のデザイナーに見せてもらった時、そのグラフィックデザインの世界感に圧倒され、高揚感を覚えたことを記憶している。それまでデザインを見るだけの私にとって、グラフィックデザインの世界、グラフィックデザインの楽しさ、美しさ、素晴らしさ、魅力を教えてくれた1冊でもある。
できればすべての号を入手したいのだけど、いまではなかなか難しく、どこかの図書館あるいは知人などに見せてもらうしかないようだ。このような貴重な資料は本来は大切に保管しておくべきなのだろうが、私が持っている数少ない号のなかには、読んだり、見ているうちに、傷がついたり、汚れたりしているものもある。最終号である2002年57号の田中一光特集は、秘蔵版として今後も大切に保管していこうと思っている。

[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/



