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「世界の気になるデザイナーたち(3) ステファン・サグマイスター」 - MdN Design Interactive

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「世界の気になるデザイナーたち vol.003
──ステファン・サグマイスター(NY)」

2008年7月25日

TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)



ニューヨークを代表するグラフィックデザイナーといえば、やはりステファン・サグマイスターだろう。彼の主な仕事としては、ルー・リード、デヴィッド・バーン、エアロスミス、ローリング・ストーンズなどのレコードスリーブが有名で、それらの作品は2001年に出版された作品集『Made you look』で見ることができる。

オーストリア生まれのステファン・サグマイスターは、地元ウィーン応用美術大学でグラフィックデザインの美術修士号を、フルブライト奨学金でニューヨークのプラット・インスティテュートにて修士号を取得。その後有名なアートディレクター、ティボー・カルマンが主宰していたデザインスタジオM&Coで働き、1993年にSagmeister Inc.を設立している。

彼のデザインの特徴としては、単純にレイアウトや色づかいの美しさを追求するのではなく、アイデアやコンセプトをとても大切にしていることだ。自分の展覧会告知のために自らの身体を傷つけて文字を描いたポスター作品は有名だし、また、パット・メセニーグループのCDではアルファベットを動物や星などの記号に置き換えてみたり、彼の作品にはいつもどこかユーモアやアイデアが表現されている。グラフィックデザイナーでありながら彼はすべてのことを決して二次元では考えていない。それが彼の作品をみていても伝わってくるし、彼の個性といってもいいだろう。彼の主な作品はBooth-Criborn社発行の『Made you look』(2001)やggg Booksシリーズ『ステファン・サグマイスター』(2005)などで見ることができる。

今年の春に出版したビジュアルブック『Things I learned in my life so far(人生でいままで学んだこと)』は、ほかの作品集と少しスタイルが違っており、彼が単なるグラフィックデザイナーではないということを実感させてくれる1冊だ。この同名のプロジェクトは、元々はステファン・サグマイスター本人が日記に書きとめていたいくつかの格言「Everybody thinks they are right.」(誰もが自分が正しいと思っている)、「Having guts always works out for me.」(ガッツがあればなんとかなる)などをタイポグラフィ作品として発表しているもの。本書では、ドイツ、オーストリアをはじめ世界各地でバルーン、ビルボード、映像、グラフィックなどのメディアに、テープや砂糖などの多種多様な素材を用いて表現されたタイポグラフィ作品が解説とともに紹介されている。どの作品もストーリーやユーモアなどがあって楽しめるものばかり。装丁も凝っていて、プロジェクト毎に分けられた小冊子全15種類がボックスの箱にアトランダムに入れられており、ケースの穴からそれぞれの小冊子の一部が見えることによって15種類のステファン・サグマイスター本人の顔のカバーデザインを楽しめるようになっている。

誰もがグラフィックデザイナーになれるし、アーティストになれる時代だけど、真のグラフィックデザイナーだからこそ表現できること、真のグラフィックデザイナーだからこそ伝えられることはきっとあるはず。日々コンピュータに向かってレイアウトをしているだけがグラフィックデザイナーではない。グラフィックデザインにあまり覇気がないといわれている現在、ステファン・サグマイスターの仕事や作品を見ると、なんだか少し勇気や元気をもらえたような気持ちになるのはきっと私だけではないだろう。彼がさらに今後どのような活動をしていくのか、本当にとても気になる。


ステファン・サグマイスターの作品集 左:『Things I learned in my life so far』 pub:Abrams(2008) 右:『ステファン・サグマイスター』 ggg Booksシリーズ(2005)

左:『Things I learned in my life so far』 pub:Abrams(2008)
右:『ステファン・サグマイスター』 gg Booksシリーズ(2005)




蜂賀氏近影

[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/






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