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画像生成AIはロゴのデザインに使える? ASOBOADがデザイナーを対象とした意識調査を実施

2024.02.13 Tue

デザイン事務所のAMIXが運営しているASOBOADで「デザイナーを対象とした画像生成AIとロゴデザインに関する意識調査」のアンケート結果が公開されました。ロゴデザインでのAIの役割と将来的な期待・懸念に焦点を当てた内容です。

画像生成AIを使ったことがあるユーザーは約6割

ASOBOADは、印刷物のデザインから動画編集まで、さまざまな宣伝広告物に対応している制作サービスのWebサイトです。今回の意識調査は、を対象として、2024年1月23日(火)〜1月29日(月)の期間に実施されました。クラウドソーシングサービスの「ランサーズ」を通じて行われ、対象件数は120件です。

質問は、まず「どのような画像生成AIを使用したことがありますか?」というものから始まりました。複数選択可で「使用したことはない」という選択肢も用意されています。また、この質問では画像生成AIを使う用途はロゴデザインには限定されていません。

出典:ASOBOAD(https://asobo-design.com/nex/)

最も多かったのは未使用のユーザーで、41.7%です。続いて「DALL-E(ChatGPT)」や「Stable Diffusion」や「Midjourney」などが並びますが、「Adobe Firefly」が7.2%とやや低めであったことに少し意外な印象を受けます。「Adobe Firefly」より「Text to Image(Canva)」のほうが高く、「Canva」の人気の上昇がうかがえる結果でした。

生成AIをポジティブに受け止めるユーザーが多数

次に、質問は具体的にロゴデザインを対象としたものへと移っていきます。2問目の質問は「画像生成AIを “ロゴデザインに” 使用したことがありますか?」というもので、「実務で使用したことがある」という回答はわずか3.3%でした。

ただ、「使用する予定はない」との回答も15.8%にとどまっています。「使用したことはないが興味はある」と「実務では使用したことはないが、生成AIを使ってみたことはある」という2つの答えが大部分を占めました。

出典:ASOBOAD(https://asobo-design.com/nex/)

画像生成AIをロゴデザインに利用することに対する各自のスタンスは、3問目の回答にも示されています。「非常にポジティブ」と「ややポジティブ」を合わせて、肯定的にとらえている人は計58.3%にのぼり、「ややネガティブ」と「非常にネガティブ」の否定的なとらえ方は計15%でした。デザイナーやアートディレクターはAIについて否定的という先入観が強かったため、この結果もやや予想外です。

出典:ASOBOAD(https://asobo-design.com/nex/)

今回の調査はさほど回答人数が多くはないので「これがデザイナーの全体的な傾向」と考えるのは早計でしょう。とはいえ、生成AIについてポジティブに受け止めている人たちが一定数いることは間違いありません。

将来的に仕事で活用できる可能性は?

質問4と質問5では、ロゴデザインにおける画像生成AIの活用の可能性が探られました。「画像生成AIの利用目的として考えられるもの」には「アイデア出し」という回答が37.8%と最も多く、「最終デザインの作成」はわずか3.6%でした。

出典:ASOBOAD(https://asobo-design.com/nex/)

「将来的な期待」の度合いは「非常に高い」と「どちらかといえば高い」を合わせて計62.5%です。一方の「どちらかといえば低い」と「非常に低い」は計5.8%にとどまり、ここでも回答者たちのポジティブなスタンスが表れています。

出典:ASOBOAD(https://asobo-design.com/nex/)

画像生成AIを「アイデア出し」に利用するというのは、現時点では最も妥当な活用方法でしょう。ロゴに限った注意点ではありませんが、画像生成AIでは著作権の問題も従来よりさらに曖昧な一面があり、現時点では「リスクが高い」「モラルに反する」といった見方があることも事実です。「画像生成AIへの期待や懸念」に関する自由記述のアンケートでは、「人間が独自で作る熱意のこもった良き新作が生まれなくなるような気もする」などの懸念も挙げられていました。

画像生成AIへの期待や懸念 - アンケート回答より抜粋 -
・ポテンシャルがどこまで上がるのか常に界隈の状況を確認するようにしていますが、この手の話は法整備の話が必ず後手に回ってくるので問題ないラインの線引きについて常に不安に思っています。
・デザインを考える時に自分一人だとどうしてもパターンや傾向が偏ってしまうので、新しいアイデアを得るために使うのはありだと思います。 ただこのまま進化していくと指示を出すのがうまい人しか必要なくなるのが不安です。
・利便性の面を見れば魅力がある。しかしそれだけ模倣的なもので終わってしまい、人間が独自で作る熱意のこもった良き新作が生まれなくなるような気もする。少なくとも普及による弊害があると懸念できる。
・生物的な構造の深い理解が必要なキャラクターデザイン分野は別として、抽象化や記号化を多用するロゴデザインの分野は画像生成AIが得意とするところであるのかなという印象。また、たとえば自分がロゴデザインを依頼するクライアント側だとして、提出されたデザインにAIによって作成されたものが混じっていたとしても気付ける自信はない。
・登場して間もないこともあり、まだまだ世間への浸透や受け入れの度合いの低さや、法整備や個々の価値観、線引きのラインなども曖昧な状況なので、様子を見ながらかつ有効に利用していきたい。
・個人の知恵を絞って作り出された作品に対しては、それ自体にお金が支払われるべきで、生成AIがいけないのではなく、無法で何でもフリー素材扱いのようになってしまっているのが問題なのだと思います。AIで使用した元の案に対しては、ひとつひとつ価格がつけられていてもいいのではないかと思います。そのうえで、AIの登場は歓迎します。
・簡単にできる面があるが、デザインの類似や専門性の欠如などが考えられるので、いいとは考えられない。今後のことを考えるとしっかりと法の整備をした方がいいと思う。
・コンペで公開されているロゴデザインを見ていると、生成AIのパターンが分かってきてしまうので、目新しさや斬新なアイデアを感じることができません。「このデザインならAIに任せることはないのでは」と思うことも多いです。
・著作権に関してはとても不安に感じる。生成された案のどの部分が他の作品と類似しているか、著作物として問題あるかどうか自分自身では判断できないことが多いから。

出典:ASOBOAD(https://asobo-design.com/nex/

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今回の調査結果を見て、最も印象的だったのは「画像生成AIをポジティブにとらえている層が予想以上に多い」ということです。本アンケートでは年代別の統計は公開されていませんが、もしかしたら世代によっても受け取り方が異なる可能性もあるかもしれません。

かつてパソコンでのグラフィック作成やDTPが登場した頃、「それは邪道だ」という意見も少なくありませんでした。現在でもこだわりをもってアナログでの制作を手掛ける方はいますが、モバイル端末を含むコンピュータでの作業は既に「普通のこと」として普及しているように感じます。

何が本当に正しいのか答えはすぐには見つかりませんが、やがて画像生成AIでのデザインが「普通のこと」になる日は来るでしょう。それとともに「デザイン」の概念に変化が起きることも予想されます。あるいは、もう既に変化は「起きかけている」かもしれません。今回のASOBOADの意識調査の結果も1つの参考にしながら、あらためて画像生成AIとの「上手なつきあい方」を見つめ直し、多くの人たちと一緒に模索していきたいものです。

出典:「生成AIとロゴデザインに関する意識調査」
https://asobo-design.com/nex/stat/data-2/

ASOBOAD
URL:https://asobo-design.com/nex/
2024/02/13

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