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和田彩花のわたしを磨く、美術館

2021.12.24 Fri

和田彩花さんと「世田谷美術館」へ。「グランマ・モーゼス展」、内井昭蔵氏によるユニークな建物なども

構成:編集部 取材・文:中村美枝(JAM SESSION) 撮影:米山典子

はっとして、ときめいて、感性を磨くアートな一日。ひとりマイペースに楽しめば、より深くアートの世界に浸れて、もっと心が揺さぶられるはず。「わたしを磨く、美術館」では、アートをこよなく愛し、アイドル活動をしながらアート評なども発信する和田彩花さんが美術館を訪れ、“ひとり美術館”を楽しみます。

今回は、緑豊かな砧公園の一角にたたずむ「世田谷美術館」へ。企画展やコレクション展を鑑賞したり、カフェでくつろいだり、美術館を満喫してきました。

世田谷美術館で過ごすアートな一日
緑豊かな砧公園の一角にある、世田谷美術館へ

和田さん「砧公園の自然が感じられて、気持ちよくアート鑑賞できそうです」

「世田谷美術館」は、誰もが気軽に訪れられる“開かれた美術館”として1986年に開館。当時の国内の美術館ではめずらしかったレストラン、カフェ、ライブラリー、アトリエを併設し、今ではスタンダードとなった美術館のスタイルを作り上げました。

砧公園の一角という立地を活かした建物は、周囲の木々の高さを超えないように設計。デザインは、戦後の日本建築史を代表する建築家・内井昭蔵(1933〜2002)さんが手がけたものです。「森の中にあるような建物のたたずまいがいいですね。館内はどんな造りなんだろうと、気分が高まります」と和田さん。

建物には、かしこまらずにアートに親しめるさまざまな工夫が凝らされています。石材やコンクリート材のほか、木材をふんだんに使用。凹凸のある四角いタイルが連続する外壁、アーチ型の天井、逆三角形の柱……と、○△□をモチーフにしたユニークなデザインが、心地いい空気感を生み出しています。さらにベンチなどの調度品も内井さんによるもの。

「だから統一感があって、居心地のよさを感じるんですね。ちりばめられた○△□を探すのも楽しくて、建物見物しながら一日を満喫できそうです」

世田谷美術館の1階展示室で《生誕160年記念「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」》鑑賞
グランマ・モーゼスの幸せで色彩豊かな作品に感性を刺激されて

和田さん「グランマ・モーゼスの作品を見るのは今回が初めて。ワクワクしますね」

この日、和田さんが鑑賞したのは、2022年2月27日まで開催中の《生誕160年記念「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」》。アメリカの国民的な画家グランマ・モーゼスことアンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(1860〜1961)の展覧会です。

逆三角形の柱が印象的な回廊を抜けて、1階展示室へと向かうと、幸福感に満ちあふれた展示空間が広がっていました。

展示室は章ごとに壁面のカラーが変わり、和やかなムード。カラフルな色彩の壁面が作品を引き立てます

人生の大半を農場の主婦として過ごしたモーゼスが絵を描き始めたのは、70代半ばを過ぎてから。独学で生活のそばにある自然や農村の風景、そこで暮らす人々を素朴なタッチで描き続けました。

「私はどちらかというと、若いときに都会に出て、いろいろな刺激を受けて自分の世界観を築いていくような画家の作品を多く見てきたので、モーゼスの作品は新鮮でした。日常の切り取り方が素敵だし、穏やかで幸せ感のある作品ばかり。季節の情景や、そのとき人々がどんなことをしているのかが具体的に描かれていて、細かい部分まで楽しめました」

和田さん「モーゼス作品はじっくり見れば見るほど、発見がありますね」

本展では、そんなモーゼスの最初期から100歳で描いた絶筆までの作品のほか、愛用品、資料など約130点を4つの章に分けて展示しています。

「章立てのテーマがすごくいい。例えば2章の“仕事と幸せと”では、どんな仕事をしているのかとか、幸せを意識的に感じ取れるなど、作品の見るべき点へごく自然に誘導してくれます。暮らしに必要なものを手作りすることの喜びを改めて感じましたし、祖母と暮らしていた頃の思い出と結び付いたりもして……。きっと見る人がそれぞれの思いを重ねて鑑賞できると思います」

会場では、モーゼスの人間性や暮らしぶりも伝えたいと、自伝に残された言葉を抜粋して紹介。和田さんの心にいちばん響いた言葉は「どんな仕事でも、幸せを増やしてくれるものです」でした。

「現代を生きる私たちに突き刺さる言葉。今の時代って、家庭と外での仕事が明確に区別されているように思うんです。でも社会に出てバリバリ働くことだけでなく、ごはんを作ったり、お掃除をしたり、幸せにつながる仕事って身のまわりにあふれているんですよね。何事も気持ちしだいなんだなって」

モーゼスの“きれいなものを描きたい”という言葉も印象的だった和田さん。モーゼスはその純粋な思いで日常から幸せを切り取り、約25年の画家人生で1600点以上の作品を手がけました。

「人生は楽しいことばかりではないし、つらいこともある。モーゼス自身もきっとそうだったはず。でも、そこから幸せを見出せたら、人生がもっともっと素敵になることを教えられた気がします。作品からは彼女の優しく、あたたかな人柄、言葉からは芯の強さ、たくましさが伝わってきます。会場では作品だけでなく、モーゼスの言葉、作品や章ごとの解説もじっくり楽しんでみてください。モーゼスをより深く感じられ、感性も磨けると思います」

世田谷美術館の1階展示室で《生誕160年記念「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」》鑑賞
グランマ・モーゼスの作品で、和田彩花さんのお気に入りは?

■キルティング・ビー

アンナ・メアリー・ロバートソン・“グランマ”・モーゼス 《キルティング・ビー》 1950年 個人蔵(ギャラリー・セント・エティエンヌ、ニューヨーク寄託) © 2021, Grandma Moses Properties Co., NY


和田さん「大勢の人が描かれていて、作業していたり、談笑していたり、なにかしらしているんです。きっと日頃からいろいろな人の行動を観察して、家族や友人たちを見守っていたんだろうなって感じます」

■農場の引越し

アンナ・メアリー・ロバートソン・“グランマ”・モーゼス 《農場の引越し》 1951年 個人蔵(ギャラリー・セント・エティエンヌ、ニューヨーク寄託) © 2021, Grandma Moses Properties Co., NY


和田さん「近所の人たちでしょうか、みんなで引っ越しをお手伝い。今は個の時代ですが、ひとりきりではできないことってたくさんありますよね。支え合って、助け合って生きていく、人間の普遍的な美しさを示しているところに惹かれました」

■シュガリング・オフ

アンナ・メアリー・ロバートソン・“グランマ”・モーゼス 《シュガリング・オフ》 1955年 個人蔵(ギャラリー・セント・エティエンヌ、ニューヨーク寄託) © 2021, Grandma Moses Properties Co., NY


和田さん「美しい冬の雪景色。同じ白なんですけど、表面がぽこぽこしていたり、質感の違う雪があったり。屋根の上に積もる雪、木の上のぽんぽんと描かれた雪……いろいろな雪の表情に心が和みます」

■雷雨

アンナ・メアリー・ロバートソン・“グランマ”・モーゼス 《雷雨》 1948年 個人蔵(ギャラリー・セント・エティエンヌ、ニューヨーク寄託) © 2021, Grandma Moses Properties Co., NY


和田さん「穏やかな雰囲気の作品が続くなか、4章の“美しき世界”でこの作品が現れて驚きました。黒い空を見上げて、嵐が来そうだって話してそうだったり、帽子が飛んでいったり。女の子の髪がぱさっとなっているのも印象的。大変な一幕なんですけど、人物の表情も豊かで、すてきな表現だと思いました」

続いて、世田谷美術館の2階展示室で「ミュージアム コレクションⅢ」を
音楽がテーマの展示は、歌手として活動する和田さんに◎!

アンリ・ルソー《フリュマンス・ビッシュの肖像》1893年頃。今回はルソー作曲のワルツの楽譜と結び付けて紹介

世田谷美術館は、独学で美術の道を歩んだフランスの画家アンリ・ルソーをはじめとする素朴派、世田谷ゆかりの作家の作品、北大路魯山人の書画や器など、国内外の作品約17,000点を収蔵。年に3~4回、テーマを変えてコレクション展を行っています。

現在は「ミュージアム コレクションⅢ ART / MUSIC わたしたちの創作は音楽とともにある」を開催中。音楽活動を行う和田さんにぴったりの企画展です。

本展は担当学芸員・矢野進さんが、せたがや文化財団音楽事業部の広報誌『せたがや音楽通信』で連載したコラム「音楽と美術 この一枚」がベース。代表的なコレクション、アンリ・ルソー《フリュマンス・ビッシュの肖像》のほか、大竹伸朗、横尾忠則、ジャン=ミシェル・バスキアといった国内外アーティスト19名の1970年代から90年代前半までの作品を中心にクローズアップしています。

「美術と音楽のつながりは強く、音楽は古くから絵画などの題材にもなってきました。今回はミュージシャンとしても活動するアーティストの作品だったり、デザインを手がけたレコードやCDジャケットが紹介されていたり。結びつきをより強く感じられて、作品の見え方も違ってきますね」

そう話す和田さんのお気に入りの作品は、ロバート・ラウシェンバーグが日本滞在していた1984年に制作した《回廊 ― R.O.C.I.日本》。

「ラウシェンバーグはダンボールを使った作品のイメージが強かったんですが、すごくカラフルでポップ。カーネル・サンダースの像や、和服姿の女性などのシルクスクリーンもユニークで、見ていてワクワクします」

この作品とともに展示されているのが、1983年にラウシェンバーグがレコードデザインでグラミー賞を受賞したTalking Headsのアルバム『Speaking In Tongues』。1980年にラウシェンバーグの展覧会を見たリーダーのデヴィッド・バーンがいつかデザインを依頼したいと思って実現したそう。

世田谷美術館のアートライブラリーでゆったり
内井昭蔵氏による美しい空間で、アートに浸る読書タイム

広々とした空間が広がるアートライブラリーは無料で利用可

2つの展覧会を鑑賞した後は、建築を楽しみながら館内めぐりをして2階のアートライブラリーへ。

こちらは、世田谷美術館が収蔵する素朴派をはじめ、国内外の近現代の作家、世田谷ゆかりの作家たちの画集やカタログなどを所蔵。貸し出しはしていませんが、約2,000冊を自由に閲覧できます。

企画展の開催中は、作家やテーマにまつわる書籍も用意されています。

「グランマ・モーゼスの図録だけでなく、自伝などの関連本もあって、いっそう深掘りできました。これまで世田谷美術館で開催されてきた企画展の図録もすべてそろっています。西洋美術だけでなく、日本美術、仏像、写真、建築……。といろいろな展覧会を行ってきたんだなと、勉強になりました」

空間デザインは建築家の内井さんが担当。円柱のデザインがユニークなテーブル、書棚なども内井さんによるものです。「居心地もよくて、時間を忘れて読書に没頭してしまいますね」

ライブラリーの隠れた人気が、全国の美術館で現在開催されている企画展のフライヤーをまとめたファイル。気になる展覧会情報を探すのはもちろん、アート本感覚でページをめくってみるのも楽しいです。

こちらのベンチも内井昭蔵さんがデザイン
階段の手すりもよく見てみると、円と三角の組み合わせ。○△□探しが楽しい!

世田谷美術館のミュージアムショップでお買い物タイム
アンリ・ルソーの作品をデザインしたオリジナルのグッズも

思わず手に取りたくなる、かわいいグッズがたくさん

美術館の魅力のひとつが、和田さんも必ず立ち寄るというミュージアムショップでのお買い物。世田谷美術館のショップには、収蔵品をモチーフにしたここでしか手に入らないオリジナル商品が豊富にそろっています。

右から、動くルソー人形100円、ルソースケッチブック631円、魯山人マグネット880円、魯山人手ぬぐい蟹絵・海老916円(すべて税込)
和田さんおすすめの「ルソーキャンディ」300円(税込)

とくに充実しているのが、今回のコレクション展にも展示されているアンリ・ルソー《フリュマンス・ビッシュの肖像》をデザインしたグッズたち。チケットファイル、スタンドメッセージカード、トートバッグなどバリエーションもさまざま。

コロナ禍でワークショップができないことから、ボランティアスタッフの考案で発売された、〈おうちで100円ワークショップシリーズ!〉のひとつ、紙製の「動くルソー人形」も人気です。

和田さんのイチオシは、金太郎飴とコラボしたソーダ味の「ルソーキャンディ」。「フリュマンス・ビッシュの顔がいっぱい(笑)。かわいいですね~。ちょっとしたお土産にもいいですね。魯山人の作品をモチーフにした手ぬぐいやマグネットなどもあって、目移りしちゃいます」

「グランマ・モーゼス展」開催中は、料理好きだったモーゼスにちなんで、アメリカのメーカーのソースや調味料などを販売。なお、展覧会オリジナルグッズは、展示会場に併設された特設ショップにて。こちらもぜひチェックを。

世田谷美術館で過ごす一日の締めくくりはカフェへ
開放的で穏やかなテラス席で、美術鑑賞の余韻を楽しむ

噴水のある中庭にテラス席を用意

世田谷美術館での締めくくりは、地下1階の「SeTaBi Café」で。地下と言っても、吹き抜けの中庭に面していて、公園の緑を感じながら過ごせます。

「冬はちょっと寒いですけど……ブランケットも用意されているので、公園ならではの開放感を味わえるテラスがおすすめです。木漏れ日もとても気持ちがいいです」と和田さん。

メニューは、パスタやオムライスなどが日替わりで登場するランチ、キッシュプレート、ホットサンドといったフードや、タルトをはじめとする季節のデザートなど。

人気はそば粉のガレット。食事系やデザート系がいろいろと用意されています。

グランマ・モーゼス展のコラボメニュー・リンゴのガレット(ドリンク付き)1,200円(税込)

「グランマ・モーゼス展」開催中は、出展作品のメープルシロップを作る光景が描かれた『シュガリング・オフ』と『アップル・バター作り』から着想を得たコラボメニュー「リンゴのガレット」が登場。オーブンで焼きあげた青森産の紅玉と、カラメル風に仕上げたメープルシロップのソースが豊かなおいしさを奏でます。

「モチーフになった作品を思い浮かべながら味わうと、鑑賞の余韻にいっそう浸れて、よりおいしく感じます。目だけでなく、味覚でも作品を体感しているようで、感性がおいしくくすぐられますね」

DATA

世田谷美術館

住所東京都世田谷区砧公園1-2
問い合わせ先03-3415-6011
開館時間10:00~18:00(展覧会の最終入場17:30まで)
休館日月曜日(祝日の場合は翌平日)
年末年始(12月29日〜1月3日)
※展示替え期間は企画展・ミュージアム コレクション展示室どちらも閉める場合あり
アクセス東急田園都市線「用賀」駅より徒歩17分、
または美術館行きバスで約20分、美術館下車徒歩3分
公式サイトhttps://www.setagayaartmuseum.or.jp/

 

生誕160年記念「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」

会期~2022年2月27日(日)
料金1,600円(コレクション展観覧可)
※日時指定制(https://www.e-tix.jp/grandma-moses/
公式サイトhttps://www.grandma-moses.jp/

 

ミュージアム コレクションⅢ ART / MUSIC わたしたちの創作は音楽とともにある

会期~2022年4月10日(日)
料金200円 ※混雑時は入場制限の場合あり
公式サイトhttps://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/collection/detail.php?id=col00112

 

SeTaBi Café

問い合わせ先03-3416-2250
営業時間10:00~18:00 (17:30LO)
定休日月曜日 ※世田谷美術館に準じる
公式サイトhttps://setagaya.co.jp/setabi/
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