第2話 就職、転職、そして旅へ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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様々なジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回はグラフィックデザイナーの仕事と並行しながら、文筆家としても多数の著作を発表している素樹文生さんを取材し、今日までの紆余曲折な足跡をたどります


第2話 就職、転職、そして旅へ



素樹文生さん

素樹文生さん


最初の就職、転職を体験



──専門学校卒業後は?

素樹●ジャパングラフィックス(現在のたき工房)という制作会社に就職しました。朝日新聞の求人広告を見て応募したんですよ。当時、日本で一番大きいプロダクションだったんじゃないかな。社員数200人規模で、写真とかいろんな部門に分かれてて。……ちなみにいまの会社(有限会社Headroom)の社長、そのときの上司だったんだよね。

──そこでは、どんな仕事を?

素樹●最初は食品会社のパンフレットとか、雑誌広告とか。あと、新人だったからロットリング引く練習とかさせられて(笑)。カラス口の時代だったからね。他にも、なんでもやらされた。有名カメラ会社の専門チームがあって、新製品が出ると、その関連制作物を膨大に作るんですよ。そのヘルプで、原稿を指定サイズに変える作業とか。

──まだ、アナログ・デザインの頃ですよね。

素樹●うん。だから、コピー機の前に張り付いて。あとトレスコ。俺の生涯、すごい時間入ってたんだろうなってぐらい(笑)。でも、紙焼きは学生時代に散々やったから、作業は早いんですよ。

──その会社は、どれぐらい勤務を?

素樹●2年ちょいぐらい。ステップアップしようと、また朝日新聞の求人広告で転職先を探して(笑)。ジャパングラフィックスは完全プロダクションで、自分から提案したりすることがあまりないところだったんです。代理店のCDから降りてきた素材でレイアウトするだけ。でも、最初から作りたいという気持ちがあったから、今度はプレゼンからやれる広告代理店がいいな、と。で、スタンダード通信社という会社に入って。

──転職は大変でした?

素樹●いや、まだ若かったし、バブルの時代でしたから。あと前の会社はクライアントがすごい。全部有名企業だから、仕事の作品が一杯あるわけ。申し訳ないことに、転職するにはもってこいの会社で(笑)。


文章に目覚め、旅に出たくなる



──転職先での業務は?

素樹●やっぱりまだ一番下っ端だし、雑用が多かった。でも、割と早く任せてくれて、最初は日産グロリアの雑誌広告。撮影済みのものをレイアウトしただけだけど、ナンバープレートを作ったりした。

──手でやってる感じがするデザインですね。

素樹●うん。まだ、Macの時代じゃないですからね。こういう雑誌広告以外に、細々としたプロモーションキットは下っ端がどんどんやらされて……あと、銀行ですよ。90年代頭で、ちょうど銀行のCMが解禁になったとき。で、早見優がモデルの広告作ったり、会社のCM業務も手伝いだしたり。

──そこでの在籍期間は?

素樹●また2年(笑)。

──再び転職を?

素樹●ええ。その会社にいるとき、なぜか文章に目覚めちゃったんですね。なにかの本を読んでいたからなのかな……たとえば年賀状とかに小説っぽいものを書いたら、コピーライターの人にすごい褒められたんです。で、学校卒業して働きづめだったから、旅に出たくなっちゃった。

──それが合体して、紀行作家として……

素樹●ちょうどバックパッカーとか、放浪旅行がブームになり始めた頃。あと、片岡義男さんの小説がすごく好きで。だから最初はオートバイで、そのあと海外に行きたいな……という話を、会社のCDの秘書に喋ったんですね。その子がそれをCDに話しちゃって「お前、旅に出たいのか?」と(笑)。もう、旅に出ないといけないような雰囲気になってしまった。

──で、会社を辞めて?

素樹●うん。ちょうど疲れていたし、世界を見たいなって。

──不安とか、なかったのですか?

素樹●まだ当時27歳で、ふたつの会社で勤務したから作品もたくさんあった。就職、転職のときも苦労しなかったから、これは手に職があるな……と思って。だから2〜3年遊んでも、また戻ってこれると思って。で、旅に出たら、人生が大きく変わってしまったんだけど(笑)。


時計の雑誌広告を見るモトギさん

転職先の広告代理店勤務時代に手がけた、
時計メーカーの雑誌広告をじっと見るモトギさん。
「まだDTPが導入される前だから、合成がアナログなんだよね。
ポジを重ねて処理してくれる専門の業者がいて、依頼したんです。
素材は撮影したり、自分で作ったものだけど……
よくできてるなー(笑)」



次週、第3話は「作家デビュー、そして貧乏」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)

素樹文生さん

[プロフィール]

もとぎ・ふみお●1964年、ニューヨーク生まれ。制作プロダクション〜広告代理店勤務を経て、アジア放浪の旅へ。95年、その体験を綴った『上海の西、デリーの東』で作家デビュー。その後も紀行文、エッセイ、小説など、文筆家として著書を発表するとともに、グラフィックデザイナーとしての仕事も継続している。現在、有限会社Headroomに在籍。また近年、ゴルフの世界にのめり込み、雑誌連載とブログで活躍中




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