第5話 そして現在…… | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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様々なジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回はグラフィックデザイナーの仕事と並行しながら、文筆家としても多数の著作を発表している素樹文生さんを取材し、今日までの紆余曲折な足跡をたどります


第5話 そして現在……



素樹文生さん

装幀・編集を手がけた国井律子『放浪レディ』を手にする素樹文生さん


見たこと感じたことを表現する




──で、またまたデザイナーとして働こうと。

素樹●うん。それが一番手っ取り早いからね。でも、すぐには独立できない。出版業界から仕事を貰って生計を立てるというのは、すごく効率が悪いでしょ? 一回、立て直さなければ……と思って。で、給料もらえる仕事を探していたら、いまの会社の社長に拾われまして。

──どういう経緯で?

素樹●フリーで仕事している頃、国井律子さんの本のデザインと編集を手がけたんです。その写真を社長が撮ってて、打ち合わせのときに会って。奇遇にも、最初に就職した会社(ジャパングラフィックス)時代の専務だった。

──昔から繋がりがあったのですか?

素樹●いや、こっちが一方的に知っていただけ。その後、意気投合して一緒にゴルフやっているうちに「うちに来ないか?」と。で、いまに至るわけですが。

──業務的に現在は?

素樹●生命保険の新聞広告や雑誌広告がメイン。それ以外は、ゴルフ雑誌の連載をやっています。

──ゴルフ、ハマってますね。

素樹●もう仕事だからね。日々「ああ、練習しなきゃ」と思いながらゴルフ場に通ってます。

──ああ、練習しなきゃ……って、プロみたいですね(笑)。

素樹●ある意味、プロですよ。それでお金を貰っているわけだし、うまくならないと偉そうなことを書けないですから。いまはまだ素人の感覚で書いているけど、打ったときのクラブのインプレッションとか、他の人が書いているのを読んでも「全然わかんない」と思うことが多いんです。文学性とかじゃないけど……いままでやってきたことって、インドに行っても感想文だから。そういうのがゴルフでもいいでしょ?

──ええ。確かにそうですね。

素樹●別にインドの専門家ではないけど書けるから。結局、見たこと感じたことを書くのが大切なんですよ。


国井律子『放浪レディ』
フリーランスのデザイナー時代に手がけた装幀本より
国井律子『放浪レディ』(2002年/求龍堂)
オートバイ&アウトドアの世界で著名な
国井律子さん。
彼女の初フォトエッセイ集のデザイン&編集を担当。
2004年に続編、
2006年に紀行集『ボンジョルノ!』が刊行され、
シリーズすべてに関わっている



デザインは「社会的な活動」



──今後のヴィジョン……などは?

素樹●基本的には、自分でデザインの仕事をとっていきたいと思っています。でも、そう思っていると、出版業界から文筆の仕事が来るんだよね。ほんとは広告業界から来てほしいんだけど……。コンテンツを考えて、編集してライティング、デザインまで自分で網羅できるスキルと経験はあるので、それをメインにやっていければといいな思っています。

──やはり、デザイン職を活かしていきたい?

素樹●もちろん。いままでいろいろやって、紆余曲折ありましたけど「デザインは手に職だ」と実感してますから。いままでの人生の中で、それで生き延びて食い扶持を維持したところがいっぱいある。それなりの実績があれば、絶対どこかで引き取ってくれるんですよ。だから、いまは勉強中です。何がお金になるのか? 人はどういうものを求めているのか?……と。

──光明は?

素樹●残念ながら、まだまだ。でも、最近は「雑誌にはできないことが求められている」と思って。たとえばブログって、アフィリエイトやっていると広告と文章が合致しますよね。いままでバラバラでやってましたが、ブログは一緒。ゴルフの道具のインプレッションでもいい文章を書いて、うまく写真を撮れば、それがタイアップになる。で、クリックされると、結構バカにならないですから。

──また旅に出たくなることは?

素樹●ないない。行きたいけど、子供が大きくならないと無理でしょう。

──では、最後にアドバイスを。

素樹●アドバイスってほどではありませんが……僕はこれまでデザインと執筆が別々で、執筆のときは孤独な作業なんです。だから、せめてデザインの仕事ぐらいはきちんと出勤して、人との接点があるマトモな世界でありたいと思ってきました。ものすごく社会的な活動。でも執筆は、仕事として計れないところがある。感覚的にも芸術に近いから異世界に行ってるし、お金にならないことをやったりしちゃうから。

──夢も大事だけど、お金も大事だと。

素樹●そう言うと、すごくエゲツないイメージがするけど(笑)仕事って何かして、それに見合った対価を貰ってこそ仕事じゃないですか。お金を貰わなかったら、それは仕事ではない。そのへんは、きちんと自覚しながらデザインを続けていきたいですね。


「これがデザイナーへの道」第17回、素樹文生さんのインタビューは今回で終了です。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)

素樹文生さん

[プロフィール]

もとぎ・ふみお●1964年、ニューヨーク生まれ。制作プロダクション〜広告代理店勤務を経て、アジア放浪の旅へ。95年、その体験を綴った『上海の西、デリーの東』で作家デビュー。その後も紀行文、エッセイ、小説など、文筆家として著書を発表するとともに、グラフィックデザイナーとしての仕事も継続している。現在、有限会社Headroomに在籍。また近年、ゴルフの世界にのめり込み、雑誌連載とブログで活躍中




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