第4回 Webサイトの制作・運用 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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WEBディレクションの極意


文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)
セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/



第4回
Webサイトの制作・運用


企業のWebサイトを構築するとき、制作から運用までさまざまな人物がかかわることになる。その多くの人物をまとめあげ、作業をスムーズに進行させるためにWebディレクターの存在は欠かせない。そこで、ここではWebディレクションに焦点を当てて、Webサイト構築・運用の進め方、コツ、心得などを
それぞれの場面ごとに解説していこう。


前回は、Webサイト構築を行ううえで非常に重要な準備を行う工程である「設計」について紹介してきたが、今回は最終フェーズである、「制作」と「運用」について見ていこう【1】。

【1】Webサイト制作のおもな流れ。「制作」と「運用」はサイト制作においての最終フェーズだ
【1】Webサイト制作のおもな流れ。「制作」と「運用」はサイト制作においての最終フェーズだ


制作工程については、ディレクションがどのような役割を果たすかを、運用工程については、公開直後からのスムーズな運用をどのように実現するかをそれぞれ詳しく説明していく。


制作段階におけるディレクションの役割

制作作業はできる限り行わない

全体構成図、ワイヤーフレーム、コンテンツリスト、これら資料が完成してWebサイトの設計が完了する。しかし、実際の現場では、設計完了後に制作工程に進むというような美しい形のプロジェクトはあまり存在しないのが実情である。そこには、時間の制約やクライアントからの要望などさまざまな理由があり、設計と制作を同時進行で行わなければならない時期が生じてしまう。この期間をできるだけ短くしようとする努力はもちろん必要であるが、この期間がなくなることはないと思っておいたほうがいいだろう。むしろ、設計を行いながら制作を進める、という状況に対応できるようにしておかなければならない。

Webディレクターとして、制作フェーズで心がけておくべきことは、制作作業は行わないようにすることである。制作現場で、Webディレクターがフォトショップを開いてバナーをつくる、HTMLコーディングを行っている、という光景をよく目にすることがあるが、そういった状況は意識的に避けるべきだ。会社の状況から、やらなければならない状況は当然ある。しかし、ほかに対応策があるかもしれない中で、Webディレクターが自らそういった作業を行うことは最終手段だととらえるべきである。

時間がないのであれば、あらかじめそれに見合ったスケジュールを立てて進めるべきであるし、人手が足りなかったり、外注に出すほどの予算がないのであれば、最初に請けた価格設定に問題があるのだろう。進めている中でそういった状況に陥る場合は、おおよそ最初の受注状況に問題がある場合が多いのである。

スケジュール管理に徹する

制作工程に入ってからも、Webディレクターの仕事はたくさんある【2】【3】。その中でもいちばん重要なことは、スケジュール管理である。現場にかかわる担当者がそれぞれどのように動いているか、進捗状況はどのようになっているか、などを把握しておき、クライアントとその進捗状況を共有しておくことが重要である。

【2】制作におけるWebディレクターの位置づけ
【2】制作におけるWebディレクターの位置づけ

【3】制作工程でのWebディレクターの仕事リスト
【3】制作工程でのWebディレクターの仕事リスト


スケジュール管理で失敗しないためには、最初のスケジューリング段階で各担当者に了解を取り、無理のない現実的な予定を組むことが不可欠だろう。また、制作工程に入るとどうしても現場はバタバタしがちだ。制作者がオーバーワークにならないよう、体調管理を行うことも、Webディレクターの心配りである。


運用で決めておくべきこと

運用ルールの検討

当然のことであるが、Webサイトは公開して終わりではない。むしろ、公開してからがスタートである。Webサイトが公開された直後から運用が始まるため、設計や制作工程で運用ルールの検討を行っておく必要がある。

ではなぜ、運用ルールを決めなければならないか。

Webサイトの運用をひとりでこなす場合は、ルールを決める必要はないだろう。しかし、Webサイトの運用には多くの人がかかわり、それぞれの担当者も変わることが多い。そういったことに対応するためにも運用のルールは決めておく必要がある。

運用ルールを考えるうえで必要なことは「更新個所の洗い出し」「体制の検討」「運用の流れ検討」の3点を重点的に考えればいいだろう。次にそれぞれについて解説していく。

更新個所の洗い出し

Webサイトは公開後に更新が必要になる、とはいってもすべてのページが定期的に更新されるわけではない。会社情報などのように一度公開してしまうと、しばらく更新の必要がないページもたくさんある。逆に定期的に更新しなければいけない個所を洗い出す必要がある【4】。

【4】更新個所の図。定期的に更新しなければいけない個所を洗い出す必要がある
【4】更新個所の図。定期的に更新しなければいけない個所を洗い出す必要がある


代表的な個所としては、「お知らせ・新着情報」「商品・サービス詳細ページ」「メールマガジン」などが挙げられるだろう。ポータルサイトなどのように大規模なものでなければ、おそらくWebサイト専任担当者は1~2名程度で事足りる場合が多い。

体制の検討

更新個所を洗い出したあとは、体制の検討である【5】。基本的にクライアント企業のWeb部門の体制を一制作会社が決めていくことは、現実として難しい。しかし、提案を行うことは自由なので、ぜひ実践していただきたい。

【5】Webサイト運用の体制図。このサイトの場合、各カテゴリごとに担当を設け、それぞれを統括する部署として、Webマーケティング部が存在する
【5】Webサイト運用の体制図。このサイトの場合、各カテゴリごとに担当を設け、それぞれを統括する部署として、Webマーケティング部が存在する


実は、Webサイト運用の体制は、Webサイトにおけるすべての責任者、更新個所それぞれの責任者、の配置を変えることで解決することが多い。もし、商品部や経営企画部など、他部門の担当者がかかわってくる場合でも、他部門に責任者を置くのではなく、いったんWebサイトの管理を行っている部門の責任者を通したうえで、管理を行うべきである。重要なことは、他部門、Webサイト担当部門など、どの業務においても責任者を明確にしておくことだ。あとで問題が発生した場合、だれに聞けばいいかがわかるようにしておかなければならない。

Webサイトの運用体制を考えるうえで、どういった人をそのポジションに置くかも考えておいたほうがいいだろう。実際の現場では、広く会社の他部門がかかわってくる場合が多いので、できれば社内で意見が通せる人物を配置するほうがうまくいくことが多い。

運用の流れ検討

運用個所の洗い出し、運用体制がおおよそ決まれば、それぞれの運用の流れを明確にしておく必要がある。たとえば、Webサイトの新着情報の更新に関してどのような流れでアップが行われるのか、などだ。

運用の流れは書面に落とされていない場合が多く、業務の流れで担当者が何となく決めていることが大半だ。これから運用が始まるという段階で、書面上に落としておくと、認識が共有でき、問題も少なくなる【6】。運用の流れを書面に落とす際は、横軸に運用にかかわる人を、縦軸に時間を、それぞれ記載するとわかりやすいだろう。

【6】サイト運用フロー図。運用の流れを書面化することによって、スムーズに作業を進めることができる
【6】サイト運用フロー図。運用の流れを書面化することによって、スムーズに作業を進めることができる


こういった運用の流れを、各更新個所や業務内容ごとに作成することで、運用ガイドラインとなり、担当者の入れ替えが行われてもスムーズに引き継ぐことが可能となる。


Webディレクターとしての心得

とにかく監督に徹する

Webサイトの制作工程における、Webディレクターの役割はとにかく監督に徹することである。プレーヤーに回ってしまうとクライアントとのやり取りやチェックなどがおろそかになり、結局プロジェクトにかかわるメンバー全員が不幸になってしまいかねない。

また、運用については当然のことであるが、制作を行った会社がそのまま永久に運用を行うわけにはいかない。そのため、制作会社としては運用のルールを提案し、クライアント側でスムーズに運用が行えるようにしておく必要がある。

Webディレクターとしての注意点

Webディレクターとして、Webサイト構築の際に注意しなければならないことは、これまで説明してきたワークフローに則してプロジェクトを進めることではない。ワークフローはあくまでも進め方の目安である。すべてのプロジェクトがこのようなワークフロー通りに進められるのであれば、むしろWebディレクターは必要ないだろう。

プロジェクトごとに、目指すべきゴール(方向)の違い、構築メンバーの違い、期間・コストの違い、クライアントの違いなど、変化があるのは当然で、Webディレクターにとってもっとも重視すべき点は、これらの違いに対してスムーズに対応できる柔軟なコミュニケーション力や交渉力、プロジェクト推進力であることを忘れてはならない。


本記事は『Web STRATEGY』2006年7-8 vol.4からの転載です
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