第11回 WebディレクターからWebマスターというキャリアスイッチ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第11回 WebディレクターからWebマスターというキャリアスイッチ

2019.9.16 MON

WEBディレクションの極意


文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)
セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/



第11回
WebディレクターからWebマスターというキャリアスイッチ

企業のWebサイトを構築するとき、制作から運用までさまざまな人物がかかわる。その中で、企業側のネット担当者をWebマスターという。ここではWebマスターの立場からWebディレクションに焦点を当てて、Webプロジェクトをスムーズに進めるための方法論を解説していこう。制作会社という受注側の立場も経験し、現在はWebマスターという立場で業務を行っている筆者ならではの見解を述べていく。


Webディレクターからのキャリアアップ

Webマスターとは?

これまで5回にわたり、Webマスターが仕事を円滑に進めるうえで周辺人物とどのような関係を築いていけばいいかを中心に述べてきた。Webマスターの仕事はWebディレクターと同じく広範囲にわたる。Webディレクターとしてのキャリアを考えた場合、Webマスターは次のステップとして選択肢のひとつに挙がるだろう。今回は、WebディレクターがWebマスターの立場になったときの心がまえや、仕事のポイントなどについて解説していく。

そこでまず、Webマスターの定義づけだが、ここでは一般的に言われている「Webサイトの運用・管理を行う人」よりも、もう少し広範囲にWebマスターをとらえてほしい。筆者が考えるWebマスターとは、企業におけるWebサイトの運営責任を担っている人、企業活動においてWebサイトを活用して収益を上げる責任を負っている人のことを指す。

Webディレクターが強みになるのか?

読者の中には、現在、Webディレクターとして活躍しながらも「このままWebディレクターでやっていってもいいのか?」「転職するのであれば別のことをしたいが、何をすべきか?」という悩みを抱えている人もいるだろう。筆者自身もそうだったのでよくわかるが、そのように考えることは実は非常にいいことである。

「Web制作ができます」というだけでは強みにならない時代がすぐそこまで来ているため、今後、Webディレクターという肩書だけでは手に職がつけられたとは言い難い状況になるだろう。したがって、Webディレクターという道を極めることも必要かもしれないが、新しいWebの世界に飛び込むことも選択肢として考えたいところだ。

どういった選択肢があるのか?

Webディレクターが次の職業を模索した場合、さまざまな可能性が考えられる。Webという汎用性の高い世界でやってきたこと、またディレクターという多様な業務に従事してきたことが選択肢の幅を広げる。

たとえば、自分の趣味を思い出してみてほしい。音楽、スポーツ、映画、さまざまな趣味が考えられるが、どれもWebを使って何かができる可能性を秘めたものばかりだ。ディレクターという職業についても、さまざまな人とコミュニケーションをとりながらプロジェクト全体を調整していくという経験をしてきているため、新しい世界でも柔軟に対応できるスキルが自然に身についているだろう。

企業のWebマスターやWeb担当、広告代理店でのWeb関連業務、フリー、システムベンダーなど、ざっと考えただけでも選択肢はさまざまである。


今、世間に求められるWebマスター

なぜWebマスターなのか?

Webディレクターのキャリアアップにおいて可能性がさまざまある中で、なぜWebマスターなのだろうか? それは、人材が圧倒的に不足しているからである。筆者自身、Webマスターとして活動してみて気づいたことだが、Web媒体やSEO、Webサイト制作、エンジニアなど、Webについて断片的に経験をしている人材はいるが、総合的にサイト運営(特に利益を生めるWebサイトの運営)ができる人材は極端に少ない。しかし、逆にそれを求めている企業は非常に多い。

ここでは、現在世間で求められているWebマスターとしてのスキルについて解説していく。「Webマスターになりたいが、どういったスキルが必要なのかわからない」という人は参考にしてほしい。

1 マネジメント力
当然のことながらマネジメント力は必要である。一人でWebマスターをするなら別だが、現実的にはWebサイトの運用管理には複数名必要な場合が多いので、そのスタッフを率いなければならない。チームをまとめてひとつの方向へ導くのがWebマスターの仕事でもある。マネジメントができなければ、Webマスターへの道は難しいだろう。逆にWebのスキルがなくてもマネジメントスキルがあれば、ある程度やっていけるのも事実だ。ただしこれは、ある程度の人数のスタッフがいる場合に限る。

2 ロジック力
実はWebマーケティングという世界は地味である。いや地道といったほうがよいだろうか。たとえば、新しいユーザーを呼び込むにも、すでにユーザーになっている人に繰り返し利用してもらうにも、何かしらの施策を行う。それら施策についての結果が数値で追えるため、数値には忠実でなければならない。「こうしたい」と感情で動くのではなく、数値を見て忠実に行動できる能力が必要だ。これは簡単なようで意外に難しい。

マネジメントにも通じる部分であるが、数字はある程度公平である。スタッフに説明し、理解してもらうための納得材料として数値は有効に使える。数値を中心にロジカルに考え、表現できる力は非常に求められるスキルのひとつである。

3 柔軟な発想力
ロジカルな部分をもっていなければならない半面、柔軟な発想ももち合わせていなければならない。数値は過去のことを語る場合には非常に効力を発揮するが、未来の新しいことに取り組む場合は弱い。それにはこれまでの経験を生かした柔軟な発想力が求められる。数値で過去を見ながら攻めどころを押さえ、柔軟な発想によって新しいことをつくる。こうした営みがWebマスターには求められる。

4 Webのスキル
言うまでもないが、WebマスターであるからにはWebのスキルは必要である。実際の作業レベルまでのスキルは必要ないが、システムや制作のことについて理解していなければ、スムーズな打ち合わせができなくなる場合があるため、基本的なことは押さえておきたい。特に大きな企業のWebマスターになると、複数の部署が複数のWebサイトをもっていて、それぞれが別のシステムで動いているといったケースがある。その場合、状況をいち早く理解し、解決案を模索するためにもWebのスキルというのは欠かせない。

5 好奇心、向上心
何をやるにしてもそうだが、好奇心や向上心がないとチームは引っ張っていけない。新しいサービスや技術の宝庫であるインターネットの世界で、人を集めて利益をつくっていかなければならないWebマスターに好奇心や向上心がないという状況は、そのWebサイトの未来がないということと同じである。


Webサイト別に見たWebマスターに必要なスキル

Webマスターとひと口に言っても、担当するWebサイトはさまざまだ。ここでは、収益を上げられるWebサイト別に重視されるスキルについて考えていこう。Webサイトを使って収益を上げられるモデルというのは、「直接商品を販売するEコマースサイト」と「大勢のアクセス数を稼ぎ出しながら広告をとっていく媒体サイト」のふたつが挙げられる【1】。もちろん、アフィリエイトやデータ販売、コミュニティサイトなどもあるが、大きくはどちらかに分類されるものだと考えている。

【1】Webサイトにおける収益モデル
【1】Webサイトにおける収益モデル


Eコマースサイトにおけるスキル

商品をいかにWebサイトで販売し、収益を上げられるか、といった総合的な知識が必要になる。アフィリエイトサイトの運営もこの部類に入るが、Webだけに知識が偏っていてもうまくいかない。Webの知識をもちつつ、インターネットの世界を客観的に分析し、その特性を生かしてどのような商品を開発すべきか、という取り組み能力が試される。いくら優れた分析やプロモーションを行っても、商品に魅力がないことには結果が残せない、非常に厳しい世界なのである。

媒体サイトにおけるスキル

ポータルサイトやSNSに代表されるコミュニティサイトなどの運営である。これはWebサイトの情報を大勢の人に見てもらい、その集まっている人に対してさまざまな情報(広告)を提供することにより、収益を上げるモデルである。

この世界の難しいところは、目先の収益を追うあまり、本来ユーザーが求めていることを見失い、その結果、Webサイトに人が集まらなくなって媒体価値も下がっていくという、本末転倒な結果に陥りがちな部分にある。目先の収益ばかりにとらわれず、本当に大切なことは何か?をつねに追いながら、媒体価値を高めながら収益を上げていく、周りに流されない強い意志と牽引力が必要だ。


本記事は『Web STRATEGY』2007年9-10 vol.11からの転載です
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