ワコム初のWebマガジン「BRUSH-STROKE」が創刊された。そのコンセプトは「その先の自分へ。」。そこで特別企画として松本零士氏にインタビューを敢行。描き始めたとき、表現者の目には何が見えているのか? 描くことを通して、作品を創造する葛藤や苦悩を伺った。
第4話 人間みな自由。 自分の生涯は自分が作る
―第二のターニングポイントはいつだったのでしょうか。
本郷三丁目での下宿時代の話をユーモアたっぷりに語ってくれた |
―『男おいどん』の世界ですね(笑)。
松本●そこで「マセトローション」という薬を、薬屋のオヤジが出してきたわけです。これをちょっとつけたら、嘘のように治ってね。その時に思ったわけです、これをみんなに知らせるべきだと。それで『男おいどん』を描きました。つまり「何のために漫画を描くか」ということに気がついたわけです。それまではただ「面白い漫画を描こう」とそればかりで、「何のために」が抜けていた。『男おいどん』の読者からはたくさんお礼の手紙をもらいましたよ。中には「私の彼がとても明るくなりました」と書いてくる女性がいたりしてね。森木深雪さんという方もそのひとりでね、その名前から頂戴して、宇宙戦艦ヤマトの「森雪」という名前が誕生したんです。その後、「マセトローション」の会社から頼まれて、パッケージに絵を描いていますよ。
―何がその後の人生に影響するか、本当にわからないものですね。では、第三のターニングポイントは?
松本●今です。今が真っ只中です。ちょうどそのスタートラインに今いるわけです。だから「何をやるべきか」ということを自分で決断しないといけない。作品、作家としての全体の能力を今試されてる最中です。これからですよ。まだ60年でへたばりたくないから。これからもうひとつやって、終わりにしたいんです。21世紀も進んでいけば、もっとおもしろいものができるだろうと思いますよ。……『銀河鉄道999』の「999」はね、「1000」になる一歩手前でしょ? あれは「未完成」という意味で、青年、青春ということなんです。
―先生は今「999」ですか?
松本●まだ「999」です。「1000」になってないんです。私はこれまで出てきた全部の登場人物の物語を最終的にはひとつになるように、若い時から念頭に置いて描いています。ただ、これを描いてしまうとエンディング、ですよね。カーテンコールになっちゃう。まだイヤだから、合体させません。
―まだまだいろいろと伺っていきたいのですが、そろそろ時間となってしまいました。最後に、若きクリエイターへメッセージをお願いします。
松本●自分で決めたことは自分の責任だと。その覚悟がなければ「やるな」ということを伝えたいですね。すべての責任は自分にあって、第三者のせいにはできないから、その自分の目的に向かって進むその瞬間を自分で判断して、それで旅立てということです。自分の生涯は、自分で決める。人に頼って生きるなよということを、私はそう信じてきました。だからね、人によっていろいろあっていいんですよ、何を考えようとね。人間みな自由。 自分の生涯は自分が作る、ということです。私は自分の趣味が高じてこういうことになりました。みんな、自分が大好きな、趣味とするものの専門家になることです。
[プロフィール]
まつもと・れいじ●1938年(昭和13年)、福岡県久留米市生まれ。1954年『蜜蜂の冒険』で「漫画少年」第一回長編漫画新人王賞を獲得し、漫画界にデビュー。1972年『男おいどん』で講談社出版文化賞受賞。代表作に『銀河鉄道999』、『宇宙戦艦ヤマト』、『宇宙海賊キャプテンハーロック』、『クイーンエメラルダス』、『ケースハード』他多数。日本漫画家協会特別賞、小学館漫画賞、映画の日特別功労賞など受賞歴多数。
[記事リンク]
>>> 第1話 創作には、能力を培う時間が必要です
>>> 第2話 自分の両目で“見る”ことが何よりも大切
>>> 第3話 平面から立体に至るまで、現代は最大の変遷期
>>> 第4話 人間みな自由。 自分の生涯は自分が作る
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