遅ればせながら新型「AirPods」を体験。ほかの完全ワイヤレスイヤホンとはどこが違う?
~Apple「AirPods with Wireless Charging Case」レビュー
TEXT:山口真弘(ITライター)
近年の完全ワイヤレスイヤホンのブームの火付け役であり、いまなおこれらを牽引している立役者が、Appleの「AirPods」です。今年4月に登場した第2世代モデルは、充電器兼用のケースにワイヤレス充電対応・非対応の2種類があり、それぞれを本体と組み合わせた2つのラインナップで販売されています。
筆者はイヤホンはずっとカナル型を使ってきたこともあり、「AirPods」はこれまでほとんど利用経験がないままだったのですが、今春発売された第2世代モデルをきっかけに、遅ればせながら本格的に使い始めました。第1世代モデルと比較したレビューはすでに多数出ていますので、今回はカナル型の完全ワイヤレスイヤホンとの違いを中心に、この第2世代「AirPods」をレビューします。
またセンサーの利用により、耳から外すと自動的に音楽の再生が停止するなど、細かいギミックも備わっています。一般的なワイヤレスイヤホンにありがちな、再生を停止したつもりが延々と再生されており、知らないうちにバッテリーが切れていたという問題も、本製品ではまず起こりません。
さらに本製品は、側面をダブルタップすることで早送りなどの操作が行えます。このショートカットは、例えば左をダブルタップした時は前の曲、右をダブルタップした時は次の曲といった具合に、イヤホンの左右で役割を変えることができます。ただし設定できるのはダブルタップに対してのみで、また音量調整に対応しないのは、他の製品を使っていると若干気になるところです。
音質も、第1世代モデルから大きく改善されているとのことで、ほかのカナル型の完全ワイヤレスイヤホンと聴き比べても、そのクリアな音は突出している印象です。音質がネックで有線イヤホンをずっと使い続けている人にとっては、注目すべき製品といえます。
また今回紹介している付属ケース「Wireless Charging Case」は、ケースごとワイヤレス充電器に乗せるだけで充電が行えます。また従来モデルと同様、Lightningケーブルを接続しての有線での充電にも対応しています。
このほか、カナル型と違って耳の穴に差し込まないため外の音が聞こえやすく、街中でも安全なほか、オフィスでの作業中も電話や来客にも気づきやすいのも特徴です。ただ最近の完全ワイヤレスイヤホンは、以前紹介した「iQbuds」のように外の音を通過させる機能を備えた製品もありますし、骨伝導技術を使ったヘッドホンも同様の特徴を備えています。
価格帯も違うので一概には言えないのですが、理想はあくまでも遮音性を備えつつ、必要に応じて外の音が聞こえるという、両方の用途に対応することであり、本製品が前者の機能を持たないことは、特徴として把握しておいたほうがよさそうです。
ひとつは、耳に引っ掛けるだけという、本製品の形状に依存する問題です。完全ワイヤレスイヤホンの多くを占めるカナル型は、耳の穴に差し込む構造ゆえ、歩いても走っても脱落することはほとんどありません。あるとすれば汗ばんだ時くらいです。耳に差し込むピースが合わなければ、イヤーピースのサイズを変更すれば対応できます。
しかし本製品の場合、歩きながらの利用はさておき、ジョギングやランニングなど、走りながらの利用では、かなり高い確率で脱落します。また製品の特性上、イヤーピースを交換するなどの方法でフィット感を調整することもできません。サードパーティ製の、耳全体にひっかけて固定するオプションなども存在しますが、これらを装着したままでは充電ケースに収納できなくなります。
筆者の場合、右耳だけがこの問題に当てはまります。本製品を使うまでまったく気づかなかったのですが、どうやら耳たぶの形状がおそらく左右で微妙に違っていて(まったく自覚はないのですが)、頭を傾けたり、しゃがんだりするだけで、右耳のピースが高い確率で落下します。
これが一般にほとんど発生しない症状ならばスルーしても構わないのですが、同じように悩む人は、どうやら少なからずいるようです。筆者はたまたま「左耳はOK、右耳だけNG」だったために気づきましたが、前述の形状に依存する問題とごっちゃにしている人も多いようで、原因そのものの切り分けができていない印象です。
形状そのものに依存する落ちやすさならば、購入する前に特性として把握しておけば済みますが、こちらは実際に試さなければ分からず、また自力で解決できないのが厄介です。対策があるとすれば、購入前に店頭などで試すしかありません。一方のカナル型は、こうした問題はありません。
こうしたことから筆者は現在、右ピースの利用はあきらめ、左ピースだけを自宅内でのテレビ視聴用途を中心に使っています。これならば音の遅延がない特徴も活かせる上、周囲の音が聞こえるのも利点となります。カナル型は長時間装着していると耳が痛くなってきますので、そうした意味でもベターです。ただ、2万円を超える製品の使い道としては、さすがに宝の持ち腐れである感は否めません。
これらについて不安があり、かつ遮音性の高い製品が必要であれば、無理に本製品に手を出さなくとも、相性の問題がそれほどない、カナル型の完全ワイヤレスイヤホンをチョイスしたほうがよいのでは、というのが筆者の考えです。カナル型の製品は安価なものだと数千円程度まで値下がりしており、価格面でもメリットもあります。
もっとも、カナル型の完全ワイヤレスイヤホンは、長時間装着したままだとつらい場合もあるほか(耳が密閉されるため頭痛の原因になるという人も少なくないようです)、遮音性が高すぎて周囲の音が聞こえないのが困るという人もいるでしょう。また音質はあまり高くなく、連続再生時間も本製品に及ばないことがほとんどです。
こうした特徴を理解した上で、どちらを選ぶかは、まさにその人次第と言えます。買って試した結果「いい製品なんだけど自分には合わないんだよね」となってしまうのを防ぐためには、それ相応の下調べと、できれば事前の試用をおすすめするというのが、実際に使った上での筆者の結論です。
実売価格:22,800円
発売元:Apple
Amazon:https://www.amazon.co.jp/dp/B07PRWYVN4/
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn
2019.06.18 Tue