サーバ選びの基準は
Webアプリケーションにある
ホスティング会社の出してきた見積もりがはたして適正なものなのか、スペック表に書かれた数値が何を意味しているのか、ホスティングサービス選びは制作会社にとってつねに頭を悩ませる問題だ。しかし、ディスク容量やデータ転送量の制限がネックになることは、ほとんどないと寺尾氏。
「トータル100ページ前後のサイトを立ち上げるのに、まずディスク容量を気にする必要はないでしょう。ホスティングサービスによって、月ごとにデータ転送量の上限が設定されていたり、バンド幅が制限されていたりしますが、どのホスティンク会社でもかなり余裕を持った設定となっています。ストリーミングなどを行わない限り、データ転送量の不足が問題になる事例は、弊社ではあまりありません」
たとえば、400KB程度のFlashファイルをトップページに置いたとしても、トータルの容量は500KB前後。月間の転送量制限が250GBならば250GB÷500KBと計算して、月に30万アクセスは楽に支えられる計算になる。
「よくユーザーの方から、月にアクセス数がこれくらいでファイルの総容量がこれくらいですが、どのくらいの容量とスペックが必要ですか? というお問い合わせを受けるのですが、実はこういった情報はサイジングにはほとんど役にたちません。というのは、そのアクセスが何時に集中するのか、それとも平均的に来るかで状況は変わってくるからです。アクセスの最大の波がいつどのくらいくるのかが重要な情報になります」
そして、さらに問題になるのはCPUやメモリといったサーバ自体のパフォーマンスなのだという。
「静的なページでHTMLや画像ファイルを表示させるだけならば問題ありませんが、ショッピングカートやメールアプリケーションと連動したWebアプリケーションが動作すると、ひとつのアクセスに対して同時に複数のプロセスが立ちあがるため、どうしてもメモリを消費してしまうんです」
特に、ユーザーに合った「おすすめ情報」などを提示するような動的なページを生成するショッピングカートなどのWebアプリケーションでは、商品情報を読み込むごとにデータベースのアクセスが発生して負荷がかかることから、パフォーマンスに大きく影響すると寺尾氏。そのためショッピングカートやCMSなど、クライアントがどういったWebアプリケーションの利用を想定しているかによって、サーバスペックを決める必要があるとのこと。また、意外にも、SSLサーバ証明書を組み込むと、リアルタイムでデータ暗号化と複号化を行う必要があるため、サーバ負荷が大幅にアップするという。
「ショッピングカートやメール配信など、サーバに負荷をかけるWebアプリケーションを、ASPで利用するというのもひとつの解決法ではないでしょうか。なるべく動的ページを利用せず、定期的なバッチ処理で静的ページを生成させるなど、Webサイト制作の工夫でも処理数に大きな差が出てきます。また、プログラムのチューニング次第でパフォーマンスが10倍、20倍違うケースも珍しくありません。サーバの処理能力が限界に近づいても、Webアプリケーションやデータベースのチューニングで問題を解決できるケースは、意外に多いんです。システムの最適化に関しては開発会社の領域かもしれませんが、制作会社がWebアプリケーションの動作パフォーマンスを意識してサイトを構築することも重要だと思います」
サーバ増強も念頭においた
サイジングと予算設定を
とはいえ、制作会社に十分な経験がなければサーバスペックの正確な判断は難しいもの。共用サーバのように、実際の性能が外部から見えにくいサービスではなおさらだ。実際のサーバサイジングにあたっては、何を基準にすべきなのだろうか。
「ホスティングサービスの価格には、それなりの理由がありますから、基本的には値段なりと考えて問題ないでしょう。ただし共用サーバの場合、瞬間的にパフォーマンスを発揮できることもありますから、テストサーバにおける数値はあまり信頼しないほうが良いです。いちばん重要なのは制作会社が経験を積むことですが、あまり多くのホスティングサービスを利用すると、管理やサポート面の負担が大きくなります。なるべくいろいろなプランを提供するホスティング会社を選択し、順次上位プランに移っていくことが望ましいのではないでしょうか。同じ共用サーバサービスでも、上位のプランに移ることで、メモリ割り当て量や同時アクセス数の制限などが緩くなる場合がありますから」と指摘するのは秋元氏。ここで重要なのが、サーバのアップグレードに関するクライアントの意向だ。年間ベースで予算を計上しているクライアントの場合、サーバ増強が必要になったタイミングで予算を投下できないことも十分に考えられる。予算の自由度が低いクライアントに対しては、ある程度の余裕を見込んだ「オーバースペック気味の」サイジングが必要になってくるだろう。
「最近のリッチアプリケーションでは、CPUやメモリを贅沢に使う傾向があります。サーバ機の選択にあたっては、できれば最新のマルチコアCPUを採用したもので、メモリ増設に対応したものが理想ですね。ただ、高性能な新型マシンに置き換えるより、複数台構成にした方が良いケースもありますから、まずはホスティング会社に相談してみてください」
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データ転送量の制限を確認するには
データ転送量の制限に関しては、上記の簡単なシミュレーションで算出できる。ただし各ホスティング会社とも、かなり余裕をもった設定になっているため、データ転送量の制限によりサーバ移転を余儀なくされるケースは少ないとのこと
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同社がオプションで提供するサーバリソース監視サービスの管理画面。CPU使用率やメモリ使用量などサーバ負荷の監視ができる。専用サーバサービスの場合、マシンのアップグレードや増設のコストが高くつくため、データベースやWebアプリケーションの最適化を行った方が効率が良いことも
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