芸術の秋は、アートをとことん堪能する休日を過ごしてみては?こちらの連載では、作品の見どころはもちろん、鑑賞後の買い物やグルメも楽しめる、編集部&ライター注目の展覧会を3回にわたり紹介していきます。
第3回目は、東京都現代美術館で開催中の「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」。デザイナー、アート・ディレクターとして、世界を舞台に幅広い分野で活躍した石岡瑛子のポスター、映画の衣装、ミュージック・ビデオなど初期から晩年までの仕事を3章に分けて総覧。エネルギーあふれる石岡ワールドをたっぷり満喫できる、世界で初めての大規模回顧展です。
デザインのプロセスをたどる資料にも注目!
1993年に映画『ドラキュラ』でアカデミー賞の衣装デザイン賞に輝き、遺作となった2012年の『白雪姫と鏡の女王』でも同賞にノミネートされた石岡瑛子。そんな活躍もあって、近年は衣装デザイナーのイメージが定着していたかもしれません。
しかし、彼女のすごさはそれだけにあらず。さまざまなジャンルの表現者たちと共同制作を重ね、自身のクリエイティビティを発揮することに挑み続けました。常に大衆に向けたデザインを追求していたと言いますが、決してありきたりではなく、見る人の感性を目覚めさせるような、今でもはっとする刺激にあふれています。
本展では石岡が手がけた仕事の全容とともに、デザインのプロセスをたどる膨大な資料を公開。仕事への情熱に触れながら、唯一無二のクリエイティブな世界を感じ取って。
初期のグラフィック作品を「1 Timeless:時代をデザインする」
1961年に入社した資生堂の宣伝部でグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートさせた石岡瑛子。「1 Timeless:時代をデザインする」では、男性社会の中で自立した女性像を打ち出し、社会現象にもなったキャンペーンをはじめ、1970年の独立以降に手がけたパルコのポスター、角川書店の文庫・雑誌のカバーなど、初期の仕事を中心としたグラフィック作品をクローズアップ。
誰もが目にしたことがきっとある、生活により密着した商品のロゴやパッケージなども紹介され、親しみがグンと湧いてきます。
アメリカでの新たな活動「2 Fearless:出会いをデザインする」
1980年、石岡瑛子は日本での仕事にマンネリズムを感じ始め、活動拠点をニューヨークへ。日本での仕事に魅了された映画監督フランシス・フォード・コッポラ、ジャズミュージシャンのマイルス・デイビスといった巨匠をはじめ、映画、舞台、音楽など異なるジャンルの人々との出会い、コラボレーションを通して、自身の表現を進化させていきます。「2 Fearless:出会いをデザインする」では、その時期の仕事を主要プロジェクトごとに紹介。
コッポラとジョージ・ルーカス総指揮『ミシマ―ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』は、プロダクションデザイナー(美術監督)として初めて映画にかかわった作品。会場ではそのセットの一部を再現。日本では未公開だった本作の映像も流れて、金一色の空間に圧倒されます。
晩年の仕事を回顧「3 Borderless: 未知をデザインする」
「3 Borderless: 未知をデザインする」には、円熟期を迎えた晩年の仕事が集められています。4本の映画でコラボレーションしたインド出身の気鋭の映像作家ターセム・シンの作品からは、ハリウッド進出作品『ザ・セル』、カルト的な人気を誇る『落下の王国』のほか、2012年に73歳で亡くなった石岡が最後に衣装デザインを手がけた『白雪姫と鏡の女王』も。
さらに、シルク・ドゥ・ソレイユ、北京オリンピック開会式、オランダ国立オペラの衣装デザイン、映像監督を務めたビョークのミュージック・ビデオなど、常に新しい挑戦を続けた仕事への情熱が会場のすみずみから伝わってきます。
担当学芸員の藪前知子さんによれば、石岡作品はジャンルも関わった人も多岐にわたり、権利関係が複雑なため、「この規模の回顧展は最初で最後になるかも」とのこと。このチャンスをお見逃しなく!
「NADiff contemporary」で、アート心をくすぐるお買い物
石岡ワールドに感性が研ぎ澄まされたら、館内のミュージアムショップ「NADiff contemporary」へ。店内には、国内外のクリエーターやアーティストによるユニークでいて個性的なプロダクトが並び、テンションをさらに高めてくれます。
美術館のロゴをデザインしたオリジナルグッズもそろい、とくに人気なのがMOTアクリルキーホルダー。アクリルの端材で作るため、生産ごとにさまざまなカラーを入荷。同じ赤でも透明感があったり、ヴィヴィッドだったりと色合いがいろいろで、店頭に並ぶのは一度限りというカラーも。お気に入りをぜひ手に入れて。
現代アートの書籍も充実していて、会期中は石岡に関連する書籍もラインナップ。2021年1月中に刊行予定の展覧会カタログ3,500円(税込)の予約もこちらで。
「100本のスプーン」でおいしくアートな時間を満喫しよう
美術館の地下1階にある「100本のスプーン」は、“家族でアートを楽しむレストラン”がテーマのファミリーレストラン。メニューの表紙がぬり絵になっていたり、お客さん自身が作品になる仕掛けがあったり、食事をしながらアートに触れることもできて、アートな気分をさらに高めながら食事できます。
ハンバーグ、カツレツ、オムライス……と、親しみのあるメニューが並びますが、厚切りベーコンのナポリタンなど、どの料理にも独自のエッセンスが盛り込まれ、新たなおいしさを発見する楽しみが。
会期中は、展覧会から着想を得た“赤”をキーカラーにした「赤を纏った果実のパフェ」980円(税別)を提供。今が旬のイチゴ、赤ワインで煮込んだリンゴ、赤ブドウのアイスクリーム、ラズベリーのヨーグルトを盛り込んだ大人テイストのパフェで、展覧会の余韻に浸って。
※営業時間、定休日などの詳細は100本のスプーンの公式サイトをご確認ください
DATA
※会期、開館時間、チケット情報などの詳細や最新の開催状況は公式サイトにてご確認をお願いします※
展覧会名 | 石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか |
会期 | ~2021年2月14日(日) ※月曜(2021年1月11日を除く)、12月28日~2021年1月1日、1月12日休館 |
施設名 | 東京都現代美術館 |
住所 | 東京都江東区三好4-1-1(木場公園内) |
アクセス | 東京メトロ半蔵門線「清澄白河駅」B2番出口より徒歩9分 都営地下鉄大江戸線「清澄白河駅」A3番出口より徒歩13分 |
問い合わせ先 | 03-5777-8600(ハローダイヤル) |
公式サイト | https://www.mot-art-museum.jp/ |
備考 | ※予約優先チケットのオンラインにて販売。美術館にて当日券の購入も可能 |
2020.12.11 Fri