
「フィンランド発のインディペンデント雑誌
『KASINO A4 MAGAZINE』」
2008年7月4日
TEXT:蜂賀 亨
(クリエイティブディレクター/エディター)

『KASINO A4 MAGAZINE』のバックナンバー。
左からissue 0、3、4、5、6。現在は7号まで発行されている。
毎号表紙の色が違うのが特徴だ
「雑誌が売れなくなってきている」、「欲しい雑誌が見つからない」と言われながらも、世界各地では、次々とインディペンデントマガジンが創刊され続けている。最近ではロンドン、パリ、東京といった大都市のみではなく、ストックホルム、アントワープ、ルクセンブルグ、オスロといった中小都市で編集・発行されている雑誌が日本で簡単に入手できるようにもなってきた。発行部数もけっして多くなく、ある種の限られた人達にむけて作られているインディペンデントマガジンだが、大手出版社では不可能なオリジナリティある編集スタイルやエディトリアルデザインのものが多く、世界各地の雑誌ファンやデザイン関係者を楽しませてくれる。
フィンランド/ヘルシンキで編集・発行されている『KASINO A4 MAGAZINE』は、まさに現在のインディペンデントスタイルを代表する雑誌といってもいいだろう。創刊メンバーは過去にフィンランドの『Bulgaria』、『Pap』、ストックホルムの『Nojesguiden』といった雑誌でフォトグラファー、デザイナー、ライターとしてキャリアを持つ4人。雑誌そのものは決して派手ではないけれど、自分たちがつくりたいものを作っているというグルーヴ感が感じられる。
最近では、広告やタイアップページなどが主流の雑誌、また雑誌本来のコンテンツ勝負ではなく特殊印刷や特殊パッケージ、さらには付録をつけて差別化をしようとしてる雑誌、あるいはデザイナーの自己満足に過ぎないような過剰なエディトアリデザイン。そんな雑誌が増えてきているなか、この『KASINO A4 MAGAZINE』はその対極に位置しているかのようだ。
雑誌タイトルにもなっている「A4」という規格サイズ、毎号ほぼ100ページから120ページ前後という適度なボリューム感、少しざらっとした触感の紙、毎号数ページを除いてほとんどがモノクロによる印刷、シンプルな書体と読みやすいレイアウト、平綴じではなくて中綴じの製本スタイル。創刊号からフォーマットデザインは同じで、毎号表紙の色だけを変えているカバーデザイン、世界的に有名なフォトグラファーに参加してもらうわけでもなく、著名人のインタビューを売りにするようなこともない。
1ページ1ページのレイアウトはとてもシンプルだし、写真や文章などもメジャーなファッション雑誌のように派手でもない。しかし、余計なコストをかけなくても、個性的なレイアウトをしなくても、『KASINO A4 MAGAZINE』という雑誌の雰囲気やスタイルが心地よく読者には伝わってくる。紙質、サイズ、レイアウト、写真やイラストなどのイメージ、テキスト、刷り色、文章など、さまざまな要素が集まってできている1冊の雑誌というプロダクトをトータルにディレクションすることはなかなか難しいはずだ。
そういった点でこの『KASINO A4 MAGAZINE』はとても優れたデザインプロダクトであることは間違いない。

[筆者プロフィール]
はちが・とおる●クリエイティブディレクター/エディター。ピエブックスを経て、クリエイターマガジン『+81』を企画/創刊させて11号まで編集長。その後ガスプロジェクトにあわせて、書籍「GAS BOOK」シリーズ、雑誌『Atmospehre』編集長などを担当。現在はフリーとしてグラフィックデザインを中心に企画/ディレクションなどで活動中。
http://www.hachiga.com/



