2023年11月11日(土)から2日間にわたり、東京ビッグサイト(西館&南館)で「デザインフェスタvol.58」が開催されました。「デザフェス」の愛称で親しまれている本イベントは、プロもアマも関係なく「自由な表現」を披露できるアートの祭典で、毎回さまざまなジャンルのアーティストが出展しています。今回の記事では、実際に会場を訪れて発見したことや感じたことなどをレポートしていきます。
なお、多くのメディアやSNSでも報じられているように、今回の開催では必ずしもポジティブな出来事ばかりではありませんでした。カフェエリアでの出店で販売されていたマフィンの購入者が体調不良を訴えるという事態も発生しています。イベント主催のデザインフェスタ有限会社からは、11月14日(火)に「デザインフェスタvol.58フードエリアにつきまして」という発表がされています。体調を崩した方や不快な思いをした方の心と体の回復を願うとともに、その件についてはしっかりとした問題の解決と改善が望まれるところです。
趣向を凝らした作品・ブースの数々
「デザインフェスタvol.58」では、イラスト・絵画、フィギュア、雑貨・工芸、写真・映像、ファッション・アクセサリーなどの多岐にわたるジャンルの作り手が集結しました。各ブースでは来場者に楽しんでもらうような工夫がたっぷり詰め込まれており、その中でも特に印象的だったのが「カプセル自販機を導入しているブースが想像以上に多い」ということです。
カプセルトイは今や子どもだけでなく大人にも人気を博しています。また、近年のイベントでは「参加型・体感型」という言葉がキーワードとなることも多いです。アクリルキーホルダーやアクセサリーなどの出品物をカプセル自販機で販売する方式は、まさに来場者が「参加」して楽しめるスタイルだなと感じました。
また、今回も会場には「暗いブースエリア」という照明を落とした一角が用意されました。通常の「明るいブースエリア」とは異なり、そこには光を効果的に用いた作品など、暗い環境ならではの映える出品物が集まっています。作品とともに「ブース周りの雰囲気」を堪能できるのも「デザフェス」の魅力の1つです。
イベントならではのライブ感
「デザフェス」では、ライブ感も重視した構成が展開されています。ステージやパフォーマンスエリアでは、音楽、ダンス、演劇、ファッションなどの各種のショーを楽しむことができました。
「ワンコインランウェイ」も独特な企画で、名前の通りにワンコイン(500円)で当日参加できるランウェイです。この「ワンコインランウェイ」は、ファッションを披露するだけでなく、自分たちや “推し” のブースを多くの人に知ってもらうためのアピールの場としても活用されていました。
ライブペイントも見どころの1つで、大きな壁にアーティストが絵を描いていく過程を間近で見ることができます。ライブペイントで表現された絵のジャンルも、ポップなアートから精細な描画までブースごとに多種多様でした。キャンバスが大きいこともあり、ダイナミックに作品が完成していく様子は圧巻です。
テクノロジーで進化する表現
会場では、3Dプリンタで造形した作品を発表しているブースも多く見られました。3Dプリントサービスを活用するだけでなく、自宅に3Dプリンタを導入して作品づくりを楽しんでいるアーティストも多いようです。
AIを活用した出展も見ることができました。画家風のAIアートを中心に展示を繰り広げていたデイシンのブースでは、来場者の画家から「やはりAIアートはのっぺりとしている」「こちらはあまり良くないけれど、こちらのAIアートは良いね」といった数々の鋭い指摘を受けたそうです。来場者から貴重なアドバイスや感想をもらえるのも、「デザフェス」の醍醐味と言えるでしょう。
そのほかにも、ディスプレイや大掛かりな機械装置など、高度な技術を用いた表現のブースがいくつも見られました。長い歴史のある「デザフェス」ですが、最も大きな変化はこのような「テクノロジーと組み合わせたアート」が格段に増えたことでしょう。表現の幅を広げるテクノロジーの存在について、あらためて考えるきっかけにもなるイベントでした。
来場者の立場から見た「立ち寄りやすいブース」
出展者は「どうしたらブースに立ち寄ってもらえるのだろう」と頭を悩ませることも多かったのではないでしょうか。会場はとても広く、ひと通り回ってみるだけでも膨大な時間がかかるもの。せっかく素敵な作品を携えてイベントへ参加するのですから、より多くの人に自分のブースに興味を持ってもらうことは重要です。
各ブースでは「こんにちはー」とにこやかに声をかけてくれる出展者も多く、とても好印象でしたが、さらに加えて「何をやっているか」が明確なブースには足を止めやすかったです。それはたとえば「ボールペンで絵を描いています!」「かわいい動物モチーフの雑貨を作っています!」といったものでした。
また、会場の広さゆえに「お目当てのブース」のみを訪れる来場者も多いため、日頃からSNSでファンを獲得していく活動も重要でしょう。実際に各ブースで来場者が「いつもSNSで応援しています!」と出展者に声をかけているシーンを見かけることが多かったです。
もちろん「自分は作品の魅力のみで勝負する!」という表現活動も1つのスタイルで、否定されるものではありません。次回以降の「デザフェス」や同様のイベントに出展しようと考えているクリエイターの皆さんに、上記はあくまでも1つの参考として受け取ってもらえればと思います。
ちなみに来場者にとっては「早めに会場へ行く」というのが鉄則のように思われがちですが、意外に終盤の時間帯もオススメの「穴場」だったりします。時間帯によっては会場はとても混雑するため、落ち着いて1つ1つのブースを見ることが難しいこともありました。しかし、終了時刻に近づくにつれて、かなり自由に会場内を動き回りやすくなり、ブースをゆったりと見てまわることができました。
とはいえ、早めに撤収してしまう出展者や売り切れとなるアイテムも多いため、それなりのリスクはあります。特にお目当てのブースが決まっていない場合に限り「終盤に近い時間帯で気ままに会場を散策」といった楽しみ方も選択肢の1つとなるでしょう。
小学5年生と中学1年生のブース
「デザフェス」は、年齢も国籍も関係なく、誰でも気軽に「自分の表現」を発信できる場です。今回の会場には、小学5年生のS極さんと中学1年生のN極さんが「@コドモの事情」というブースを展開し、注目を集めていました。
もともとは小学5年生のS極さんの “推し” の絵師が出展していたことから「デザフェス」にも興味を持ち、「私たちも出ようよ!」と参加を決めたそうです。事前の準備では「どのような名前にしたら注目してもらえるか」といった工夫まで楽しみました。当日は「2人でずっと立っているのは疲れるから、じゃんけんで負けたほうが立って、誰かが立ち止まってくれたら交代しよう」などの微笑ましいやり取りもあったようです。
アーティストの作品に心を打たれて、「自分もやってみたい」とまた新しい表現の担い手が育っていく。アートはつながって広がって続いていく、ということを強く感じさせくれるブースでした。2人ともとびきりの笑顔で「楽しかった!」と教えてくれたのが印象的で、こちらまでとても幸せな気分に浸れました。
* * * * * * * * * *
「表現の自由」は、人間の営みの根幹を占める大切なものです。「デザフェス」は「自由に表現できる場を提供するアートイベント」として運営されています。「表現したい」という感情を何よりも重視し、その気持ちを応援しているイベントです。
記事の冒頭で触れた通りに、見過ごすことのできない問題が起きてしまったのはもちろん悲しいことですが、それとは別に今回の会場が多くの人たちの表現に対する真摯な「熱」を感じさせるものであったことは間違いありません。次回の「デザインフェスタvol.59」は、同じく東京ビッグサイト(西館&南館)で、2024年5月18日(土)~5月19日(日)の開催が予定されています。
イベント主催:デザインフェスタ有限会社
URL:https://designfesta.com/
2023/11/18