6月10日は「時の記念日」に制定されています。その記念日にちなみ、セイコーグループ株式会社が「セイコー時間白書2024」を発表しました。「タイパ(タイムパフォーマンス)」などに関する興味深い意識調査が含まれています。
70%以上が「時間に追われている」と実感
「時の記念日」は、1920年に制定され、2020年で100周年を迎えました。天智天皇が671年6月10日(現在の暦での日付)に、水時計によって日本で初めて時を計ったことに由来しています。
セイコーグループでは、2017年から「時の記念日」にちなんだ「セイコー時間白書」を毎年発表しています。時間についての意識や実態を生活者に問う調査です。本記事では、その「セイコー時間白書」の2024年版から、気になる部分を抜粋して紹介していきます。
| 「セイコー時間白書2024」調査概要 | |
| 調査時期 | 2024年4月12日(金)〜4月15日(月) |
| 調査手法 | インターネット調査 |
| 調査委託先 | マクロミル |
| 調査対象 | 全国の15〜69歳の男女1,200人 (男女各600人/各年代別に男女100人ずつ) |
| ※構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100%にならない場合あり | |
「定点観測」として毎年実施されている設問では、普段の時間の感覚として「時間に追われていると感じる」という答えが2023年から6.3pt増え、70.8%にも達しました。「1日24時間では足りない」と感じる人が60.8%もいます。
普段の時間の感覚
「最近の生活を象徴するのにふさわしい言葉」を答えてもらう質問では、2023年と同じく「ばたばた」が1位となりました。コロナ禍からの規制緩和をきっかけに「ばたばた」と忙しさを感じる人は増えているようです。また、最近の生活を象徴する心情にまつわる言葉の1位は「イライラ」で17.5%でした。
最近の生活を象徴する時間にまつわる言葉
最近の生活を象徴する心情にまつわる言葉
効率化で無駄を省くことを望む「タイパ」
「セイコー時間白書2024」では、普段の生活での「タイパ」に関する意識についても詳しく調査が行われました。今回の調査は15〜69歳の男女1,200人を対象としたものですが、58.0%が「タイパを意識して行動している」と答えています。
「タイパ」という言葉は一般的に、「最近の若者はタイパを重視する」という文脈で使われがちです。本調査では年齢ごとの回答結果は示されていませんが、必ずしも「タイパ」を意識するのは若者だけに限らず、忙しすぎる「現代」を生きる人々に共通する特徴ではないかとも感じます。「タイパ」を重視する考え方の社会への定着についての問いでは、60.5%が「社会に定着したと思う」と答えています。
「タイパ」を重視する理由については、「効率よく情報を得たいから」(64.5%)、「無駄なことに時間を割きたくないから」(62.6%)、「空いた時間・作った時間でやりたいことがあるから」(55.6%)といった答えが上位に並びました。
「無駄なことをしたくない」とシビアに割り切ったり、物事を切り捨てたりする志向が増えていることは、現代では強く実感できます。ポジティブに表現すれば「効率的」、ネガティブに捉えるならば「余裕がない」状態です。
“タイパ疲れ” も感じている人が半数超え
一方で、今回の調査では「タイパ」を何よりも重要視することや、「何でも効率化」について、人々が違和感も覚えている傾向も見てとることができます。52.9%が「何においてもタイパの良さを求められることに違和感を感じている」と答えています。
「時には立ち止まってひとつのことを考えたい」という回答の数値も73.8%と非常に高く、「何もしない時間を増やしたい」と考える人も約半数にのぼりました。これらの結果から、「セイコー時間白書2024」では「“タイパ疲れ” の兆し」が指摘されています。
もちろん、「タイパ」を重視する人の中には、シンプルに「効率を追求するのが性に合っている」という人もいるでしょう。一方で、少なからず「(忙しすぎて)タイパを重視せざるを得ない」という人もいるのかもしれません。読者の皆さんは「タイパ」についてはどのように感じているでしょうか?
タイパ重視派が好む「AI」は人間にゆとりをもたらす?
もう1つ、クリエイターも注目の面白い内容が、「タイパ」とAIの関係性についての調査です。「時間効率を高めるために意識していること」に関して、「生成AI機能を使って時間効率を高めている」「時間効率を高めるためにChatGPTを使ったことがある」と答えた人は、全体の中でも「タイパが最重要課題」と考える人たちに特に多いことが分かりました。
たしかにAIは、作業のスピードを飛躍的に速めるための強力なツールです。とはいえ、それが最終的に「空いた時間・作った時間でやりたいことをやる」という結果につながるかは、やや疑問が残ります。
AIを推進する流れの中で「面倒な作業はAIに任せて、空いた時間を人間が自由に使う」という理想は、初期の頃からかなり主張されてきました。しかし、それが可能であるならば、AIに限らずテクノロジーは発展すればするほど人間は自由な時間が増えるはずです。
たとえば産業革命とその後、パソコンやスマホとインターネットが普及する前と後など、過去に比べてはるかに技術的には進化している「現代人」は、昔と比べて、果たして自由な時間が増えているのでしょうか?
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「セイコー時間白書2024」は、現状を振り返り、さまざまなことについて考えてみるきっかけとなる実に面白い調査でした。今回の記事では触れませんでしたが、クロノタイプ(体内時計)やスマホの使い方、「リベンジ夜ふかし」などにまつわる、多くの興味深いアンケートが実施されています。
この調査結果は、千葉大学大学院 人文科学研究院教授の一川誠氏によるコメントも含め、セイコーグループのWebサイトにて無料で詳しく公開中です。ぜひ忙しい中でも少し時間を確保してみて、調査結果に目を通しながら「時間について考えるひととき」を過ごしてみてはいかがでしょうか。
出典:「セイコー時間白書2024」
https://www.seiko.co.jp/csr/stda/archive/2024/detail.html
セイコーグループ株式会社
URL:https://www.seiko.co.jp/
2024/06/10