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AppleのWWDC23での発表まとめ

2022.09.30 Fri2022.10.04 Tue

iPhone 14 Pro Max実機レポート

「iPhone 14 Pro Max」は機能アップに加え、すべてに滑らかな操作感を実現。使う楽しみが増えた1台!

TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー)

日本時間の9月8日未明に行われたAppleスペシャルイベントで発表されたiPhone 14シリーズのうち、筆者はPro Max(256GB)モデルを購入し、約2週間が経過した。ここでは、特筆すべき機能や実際の使用感を中心に、「Dynamic Island」の挙動やアクションモードでのテスト撮影結果の動画を交えてインプレッションをお届けする。

写真撮影を意識して選んだ「iPhone 14 Pro Max」

筆者はこれまでiPhone 12 Pro Maxを愛用し、その通常進化系の13シリーズはスキップしていた。実は発表されるまでは14シリーズも見送るつもりだったのだが、ProとPro Maxのみに実装された常時表示ディスプレイと、隠し球ともいえる新UI要素のDynamic Islandを見て考えを改め、購入することを決定した経緯がある。

どちらの機能も、来年秋の発表が予想されるiPhone 15では全モデルに搭載されそうなので、新技術を小出しにするAppleの巧みな商品企画戦略に乗せられた感は否めない。ただし、本来は標準モデルとProモデルでは、それなりの仕様の差があって当然といえる。iPhone 13シリーズでは全モデルで同一のA15 Bionicチップを搭載して基本性能も同一だったが、iPhone 14シリーズでは標準モデルがA15 Bionicのまま(ただし、GPUコアが5コアで1つ増えている)なのに対し、ProとPro MacはA16 Bionicを搭載するなど、新規機能以外でも(わずかながら)性能差が設けられた。

筆者がiPhone 14 ProではなくiPhone 14 Pro Maxを選ぶのは、画面サイズの大きさが主な理由であり、特に写真を撮るにも見せるにも適しているからである。個人的には、筐体のサイズ感や重量はあまり気にならないが、iPhone 14 Pro Maxモデルは、iPhone 12、13シリーズのときと比べて、226g → 238g → 240gと確実に重くなっており、名実ともにMaxなモデルだ。しかし、たとえばバッテリー容量は13 Pro Maxの16.75Whに対して14 Pro Maxは16.68Whと僅かながら減っており、2gの増加は後述するカメラシステムのサイズ変更による可能性が高い。かつ、バッテリー容量が減っているにも関わらずバッテリー駆動時間は伸びており、これはおそらく4nmプロセスを採用したA16 Bionicの省電力性能が上がったためだろう。

iPhone 14 Pro Maxの全体的な使用感は、すべてが滑らかでストレスを感じないということに尽きる。それは単に処理が速いというだけでなく、様々な画面遷移のアニメーション効果が考え抜かれていて、情報の海をスムーズに泳いでいるような、そういう感覚が得られるということだ。加えて、購入動機につながった常時表示ディスプレイの扱いや、Dynamic Islandのアイデアも素晴らしく、一度使うと以前の製品には戻れない感を強く受けている。このほか衝突事故検出機能なども他に類を見ないAppleならではの機能だが、さすがにこれは試す機会がなく、また、そういう機会が訪れないことをねがいたい。

実用的な常時表示可能ディスプレイ

スリープ状態でも情報表示が可能な常時表示ディスプレイは、すでにApple Watch series 5で実現されていたが、今回、初めてiPhoneにも応用され、14 ProとPro Maxだけに導入された。

実際には、Androidのスマートフォンにも常時表示ディスプレイ搭載を謳う製品は存在するが、消費電力的には不利な技術ということもあり、広く普及しているとはいいがたい。しかし、Appleの場合は、常時表示時にリフレッシュレート(画面書き換え頻度)を1Hz(1秒間に1回)まで落として、極力電力を消費しない仕様を実現したことに特徴がある。筆者も、常時表示によるバッテリー消費が気になったことはなく、常に時刻やウィジェットの情報を確認できることによる実用的なメリットが大きいと感じている。

また、スクリーンを下にして置いたり、Apple Watchを装着したユーザーがiPhoneから離れると非表示になるなど、ディスプレイの状態はインテリジェントにコントロールされており、無駄な表示が続くことはない。

ロック画面でのウィジェット表示はiOS 16によるものなので、対応機種であれば可能だが、やはり常時表示ディスプレイとの組み合わせによって、その真価が発揮される。Apple純正のものに加えてサードパーティ製のウィジェットもサポートされており、筆者はウェザーニュースの「3時間ごとの天気」と「4日間の天気」を表示するようにした。ロック画面は、長押しで選択、追加、カスタマイズが可能な状態となるので、複数を用意して状況や気分に応じて使い分けている。

iOS 16で実現された機能だが、ロック画面には新たにウィジェットが置けるようになり、時刻表示のフォント、カラー変更など、カスタマイズの幅も広がった。ウィジェットよりも下のスペースは通知の表示に使われる
スリープ時にもロック画面+ウィジェットが表示されるようになっている。バッテリー消費を抑えるため、自動でスクリーンの輝度が落とされ、画面書き換え頻度も1Hz(1秒に1回)になるものの、とても便利である
ロック画面の長押しにより、別のロック画面の選択や追加、カスタマイズが可能となる。また不要なロック画面は上方向にスワイプすると削除ボタンが現れる
カスタマイズを選択すると、プリセットされている日付や時刻をアレンジしたり、その下のスペースにウィジェット(サイズにより最大2〜4個)を追加できる

さまざまな可能性を秘めた「Dynamic Island」

iPhone 14 Pro Maxを購入したもう1つの理由が、新しいユーザーインターフェース要素のDynamic Islandの存在だったわけだが、これは、スクリーン上のデッドスペースを逆転の発想で変幻自在な情報表示エリアへと昇華させたものだ。

iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Maxでは、他のナローベゼルのiPhoneでノッチに収められていたFaceTimeカメラとFace IDのメカニズムを小型化し、独立したピル型と丸型のパンチホール内に移設した。この場合のノッチとは、スクリーン上端にある下向きの出っ張りを指し、パンチホールとは、スクリーンをパンチで打ち抜いた黒い穴のように見えるために、そう呼ばれるエリアを意味している。

フロントカメラのためのパンチホール自体は、これまでもノッチを避けたいスマートフォンメーカーによって採用されていたが、ノッチに比べて目立たないとしても、その部分は何も表示できないデッドスペースに変わりなかった。Dynamic Islandの実体は、状況に応じてサイズと形状が変わる黒背景の情報表示エリアなのだが、変形の起点をそのデッドスペース部分としたところに工夫がある。この工夫によって、あたかもパンチホールがそうした情報表示のために存在していて、表示すべき情報がない場合に黒い背景だけが見えているかのように錯覚させるのだ。

Dynamic Islandは、情報を表示するだけでなく、必要に応じてタップや長押しに反応するようになっている。現時点でDynamic Islandは、Apple MusicやApple Pay、Apple Map、バッテリーレベルと充電状態、AirDropをはじめとするほとんどの純正のアプリや機能でサポートされているほか、アメリカではライドシェアサービスのLyftやフライト情報サービスのFlightlyなど一部のサードパーティアプリも対応しており、今後は、他のアプリもアップデートによって順次、機能を拡張してくるものと思われる。

また、Dynamic Islandは、一度に直近の2つのアプリの情報を表示することができるが、表示が1つのときには長めのピル型として、2つのときには短いピル型と丸形に分かれるようになっている。

以下に、筆者の日常使いにおけるDynamic Islandの挙動をいくつか紹介してみたので、参考にしてほしい。

Apple Musicでの楽曲再生時のDynamic Islandの挙動を示す。たとえば、ホーム画面に戻るためにアプリ画面を上にスワイプした場合、Dynamic Islandに吸い込まれるように遷移して楽曲再生中の表示になる。この状態でDynamic IslandをタップするとApple Musicに切り替わり、長押しすると拡大してコントローラーが表示される。なお、Dynamic Island内の赤い丸は、この記事のためのスクリーンレコーディング中であることを示している。

Dynamic Islandは、iPhoneが充電中であることや、アプリ購入時のFace IDの認証が完了したことを示したり、AirDropの送り手と進行状況の確認にも利用される。

iPhoneでナビゲーションを行っている場合には、マップアプリを閉じても最小限の指示がDynamic Islandを利用して示され、長押しするとより詳しい表示となる。原稿執筆の時点では、長押しを含む完全な対応は純正のApple Mapのみのようだが、順次、サードパーティ製のマップアプリもサポートしてくるものと思われる。

大谷 和利(おおたに かずとし)
テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)、『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社現代ビジネス刊)。
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