web creators特別号 |
HTML5・スマートフォン・SNS・Webアプリケーション Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策 |
サイト構築&運用 5-06
アクセス解析によって効果的なWeb運営を (前編)
Webでは、アクセス解析によってほとんどすべてのユーザー行動を数値で把握することができる。このようにして知ったユーザー行動をもとに、Webサイト・サービスを改善していこう。
制作・文/江口崇(CEO, Dekilog)
アクセス解析の重要性
Webサイトを運用するにあたって、ユーザーがサイトをどのように使っているか、つまりアクセスの解析をすることは必要不可欠となっている。テレビや新聞では、視聴者や読者の行動を調べようとしても、大まかにしかわからない。だがWebでは、きちんとアクセス解析をすれば、ユーザー一人ひとりの行動をかなり正確に知ることができる。
自分たちが提供しているサービスが本当に受け入れられているかどうか、課題はないのか、あったとしたら何か、そしてそれを解決するにはどうしたらよいか、それらがわかれば、非常に効率のいいWebサイトの運営を行うことができるだろう。
実際にアクセス解析を行う場合、専用のツールを使うことが多い。Webサーバのアクセスログを直接解析するツールもあるが、一般的に利用されているのはWebビーコン方式と呼ばれるものだ。これは各ページにJavaScriptを記述したタグを埋め込んで使う。代表的なものにGoogle Analytics やSiteCatalyst、Visionalistなどがある。
目標を立てて効果を測る
アクセス解析を始める前には、まず目的を明確にして目標を立てる必要がある。ここで大切なのは「アクセスデータを分析する視点と切り口」だ。これがあって初めて解析に意味を持たせることができる。ここでまず行うべきなのは、目的を明確にすることである。目的があやふやだと、しっかりとした分析ができないので、できる限り明確にする必要がある。
KGIとKPI
たとえばキャンペーンの応募ページを例に考えてみよう。ここでの目的は、とにかくたくさん応募数を獲得することか、もしくは新規の応募を増やして新しいユーザーを開拓するかになると思われる。目的が明確に把握できたら、次に目標を立てる。たとえば「新規顧客を100人獲得」など、具体的な数値を目標にする。これはKGI(Key Goal Indicator=経営目標達成指標)と呼ばれる。目標を立てたら、その目標をサポートする解析可能なポイントを設定する。これをKP(I Key Performance Indicator=重要評価指標)という。
キャンペーン応募ページの場合、キャンペーンページへの流入数、応募フォームのあるページの閲覧数、応募完了した人の数、応募完了者のうちの新規ユーザーの数、などが考えられる。これらKPIがKGIの達成を支える要素となる。
注意したいのは、これらの指標はあくまでも1次的な指標=目標=KGIを構成する2次的な指標にすぎないということだ。これらの数値自体の意味よりも、目標がどの程度達成されているかの数値のほうが本質である【01】 。
【01】目標、KGIの達成をサポートする、計測可能な要素をKGIをして設定、それぞれのKGIについて施策を設計、実施する
改善する
Webサイトは、運営と改善を続けることがとても重要である。日々どのように進化していくかが、そのWebサイトの価値を高めていくことにつながる。では、どのようにして改善していくべきなのかについて解説しよう。
例として、キャンペーン応募ページのKPIを見て改善することとする。
たとえば応募完了者数が目標に達しなかった場合についてだ。
ページへの流入が少ない
【02】のケースではそもそもキャンペーンページへの流入が少ないことが原因と考えられる。この場合の改善策は、いかにしてキャンペーンページへの流入を増やすかになる。サイト自体の問題以外に、プロモーションの問題も考えられるので、幅広い対策が必要なケースだろう。【02】キャンペーンページの遷移図とKPI。
キャンペーンページへの流入が少ないケースについて。
応募完了まで達成できない
【03】のケースでは、十分と思われる流入があるのに、応募フォームで脱落するユーザーが非常に多く、結果的に応募完了が達成できていない。これは応募フォームのユーザビリティや内容に課題があり、応募に至らないことが原因と考えられる。この場合の対策は、より応募しやすくなるようにフォームを修正することになる。応募フォームまで来ているのであれば、応募する意思があったものと思われる。それを逃しているのは非常にもったいないので、早急な対策が求められる。【03】キャンペーンページの遷移図とKPI。
応募フォームで脱落するケースについて。
新規ユーザーが少ない
【04】のケースでは、応募完了者数が目標に達しているものの、新規ユーザーが少ないことが課題だ。これはキャンペーンへの流入方法に問題があるか、キャンペーンそのものが新規ユーザーにとって魅力的ではないなどの問題があると考えられる。この場合の対策は、キャンペーンの内容自体を変更する必要があると考えられる。
その一方で、これは既存ユーザーにとっては魅力的な内容であることも考えられる。ある意味、貴重なサンプルケースとも言えるので、有効に活用するようにしたい。
こうやって目標設定、実施、分析、確認、改善のプロセスを繰り返していく。これがアクセス解析の活用方法だ。
データ・数値ありきで行動するのではなく、目標を達成するための情報としてアクセス解析を活用することが大切だ。プロセスが成功しても油断してはいけない。Webの世界では、たとえ今の時点で効果的な改善策であっても、半年後にそれが通用するとは限らない。また、改善策としては正しくても、プロセスのサイクルが遅いがために、効果が薄くなってしまうこともある。
このプロセスを何度も繰り返すことにより分析の精度を高め、常に対策を実施していかなくては、効果は薄い。何よりも、続けていくことこそが重要なのだ【05】。
【04】キャンペーンページの遷移図とKPI。
新規ユーザーが少ないケースについて。
【05】目標設定、実施、分析、確認、改善のプロセスを繰り返していく。
(後編に続く)
[目次に戻る]
【本記事について】
2012年1月28日発売のweb creators特別号「Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策」から、毎週記事をピックアップしてご紹介! HTML5・CSS3によるコーディングから、次々と生まれてくる新しいソーシャルサービス、Webアプリケーション、スマートフォンやタブレット端末への対応など、いまWeb制作で話題になっているトピックを網羅した内容になっています。
※本記事はweb creators特別号『Webサイト制作最新トレンドの傾向と対策』からの転載です。この記事は誌面でも読むことができます。