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クリエイターのライフハック できる人の仕事術を盗め。


第10章 広告クリエイター杓井一夫のライフハック37℃

第3回 「それ、大賛成です!」 ~ピンチを乗りきるコトバ~


クリエイティブの仕事は、クライアントからの発注で成り立っている限り、そのハードルを飛びこえ、ピンチを乗りこえることの繰り返しです。本当にそればっかりです。無理難題、どんでん返し、ツルの一声、予算縮小、再プレゼン、とんでもない修正依頼、などなど・・・。そんなとき、僕の37℃の平熱が、40℃くらいに上昇するのを防ぎ、前向きに仕事に立ち向かうための、魔法のコトバがあります。今回は、仕事の危機をヒョイと乗りきるコトバと考え方です。





[プロフィール] 杓井一夫(しゃくいかずお)

株式会社フロンテッジ クリエイティブディレクター
1963年、神戸市出身。18歳で上京。大学卒業後、コピーライターとなり、広告代理店数社をへてクリエイティブディレクターへ。
東京コピーライターズクラブ新人賞、朝日広告賞部門賞、読売広告大賞部門賞、フジサンケイ広告大賞金賞、日本新聞広告賞優秀賞、クリオ国際広告賞、IBA国際広告賞など受賞。TCC会員。



「それ、大賛成です!」と言いきる強さ。


僕がそのコトバを初めて聞いたのは、もう10年以上前でしょうか。あるファーストフード系企業への、社長プレゼンの席上です。当時在籍していた広告代理店のチームのボス(業界でもわりと名の知れたクリエイティブディレクター)が、言い放ったのです。ボスがプレゼンテーションした企画に対して、クライアント社長が「いや、オレはこうしたいんだ!」というような、やや否定的なことをおっしゃいました。

それに対して我らがボスは、
「それ、大賛成です!」
と、ぬけぬけと答えたのです。大賛成の「大」に思いっきりアクセントをつけて・・・。

僕たちスタッフの誰もが、ココロの中でズッコケました。たしかに、企画を全否定されたわけではないけど、どう考えても別の企画だよなぁ。けっこう自信を持って提案したのに。社長が言ってることの方がいいとは、正直思えないし。ボスってば、調子よすぎだよ!若い僕は、ヘコみました。

ボスはというと、僕たちに、社長の意を最大限に反映した企画を作り直させ(なにしろ大賛成なわけですから)、次回プレゼンを無事乗りきりました。



「それ、大賛成です!」は、それ以来、伝説のフレーズです。どんな無理難題にも、大賛成です!と言って応える。いや実際は、なかなかそこまで言いきれる度量はありませんが・・・。

でも、思い通りに行かないからといってヘソを曲げても、何の得にもならないでしょ。モチベーション下がったまま作業に取り組んでも、いいことなんてないでしょ。

もちろん、いいなりになるのとはちがう。大賛成ってことは自ら望んでそうするのだから、クライアントの意向も上手に取り込みながら、広告としていいものにするのが、プロの腕の見せ所なのです。



「面白くなってきましたね!」と楽しむ余裕。


もうひとつ、僕がよく使うコトバに「面白くなってきましたね!」というのがあります。こちらも、大変な状況、絶体絶命ピンチの時に使うのは言うまでもありません。

もともとは、いっしょに仕事をしていた営業担当のコトバです。クライアントからのむちゃぶりオーダーを受けて、彼は「いやーシャクイさん!面白くなってきましたよー」と、笑顔で僕のところにやって来る。まったく!こいつ!笑うしかないですよね。

そうなのです。落ち込んでもしょうがないのです。どんなピンチも、笑い飛ばしてくぐり抜ける方がぜんぜん健康的です。楽しめます。(ホントかよ!)





このふたつのコトバは、実際クチにだしてみると、そういう気分になるから不思議です。そういう意味で、魔法のコトバ。コトバって、大切ですよね。

そして、人をポジティブに向かわせるこれらのコトバの中には、ちょっと大げさに言えば、僕の、クリエイティブに向かう基本的な姿勢があるのかなと思うのです。



クライアントの願いをかなえてあげたい。


そもそも、僕が広告を作る時の基本姿勢はこれです。僕はアーティストではないので、自分の思いを表現したいなんて気持ちは、ほとんどありません。自分はこれがやりたい、という意識もそんなに強くない。クリエイターとして、それでいいかどうかはよくわかりません。おそらく賛否両論あるでしょう。

でもこれだけは言えるのです。

すべての広告には、目的があります。仮に、「商品をたくさん売る」というのが目的だったとしたら、表現のすべては、そのためにあるべきです。仮に、僕がそれを無視して、面白いからという理由だけで広告を作って、面白いからという理由だけで話題になって、広告賞をとったりなんかしても、商品がまったく売れなかったら、その広告の価値は、本当はゼロだと思うのです。

「作品」を作るのではなく、「効果」を作るのが、僕たちの仕事なのだから(賞をもらえるとすごく嬉しいですが・・・)。

じゃあその「効果」って目で見えるの?って話も、一方であります。「モノが売れる仕組み」の、広告はほんの一部です。インターネットの進化と盛り上がりを横目で見てると、ますますマス広告ってビミョーですよね。

広告のおかげでモノが動いたのかどうか、本当はどんな調査をしても正確にはわからない。ましてやブランディングなんて、何をもって成功と言えるの? 極論すると、これはいい広告だ!なんて、もはや誰にも決められないと思うのです。

それだったら、ココロが動いたことを間近で見たほうがいい。

広告を依頼してくれた方の、「こういうのがやりたいんですよー!」という願いをかなえてあげたい。プレゼンテーションしたその担当者に、「いいのができましたねー!」と言われたほうがいい。とっても単純ですが、僕はそう思う。




このあたり、さまざまなクリエイティブの世界で、さまざまなクリエイターによって、考え方もホントさまざまでしょう。若いクリエイターが、いつか必ず思い悩むことでもあります。

「それ、大賛成です!」と放言して、僕のココロに呪文を植えつけた、当時のボスの呪われた?DNAが、きっと僕の中には色濃く残っているのでしょうね。(H堂のOさん、感謝しております。)



[あとがき]
突然ですが、カラオケでは奥田民生を歌います。「イージュー☆ライダー」と「さすらい」。そんなの歌ってるから、フラフラと落ち着きがないのでしょうか。 そういうわけで、次回は転職の話などしてみます。いえ、何が言いたいかというと、音楽もときにピンチを乗りきるチカラをくれる。そんなとき僕は 「CUSTOM」熱唱です。大迷惑です。


次回もお楽しみに!
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