
第10章 広告クリエイター杓井一夫のライフハック37℃
第5回 すべての仕事は、「人」から「人」へ
クリエイターに限らず、世の中にあるおよそすべての仕事の中で、まったく他人と関係せず、個人で完結する仕事を、僕は思いつきません。芸術家だって、作品を認め、世に出してくれる人がいてはじめて仕事として成立する。僕たちクリエイティブの仕事も、人に頼まれ、人と話し、協力し、時にケンカし、人のためにモノを作り、人に見てもらい、人のココロを動かし、人から評価される。だから、面白い。
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[プロフィール] 杓井一夫(しゃくいかずお) 株式会社フロンテッジ クリエイティブディレクター |
仕事はひとりでやっているのではない。
20代のまだ若造コピーライターだった頃、僕は広告の仕事に没頭していた。コピーは表現技術。技術なんだから訓練すれば上達すると信じ(もちろんそれは当たっていますが)、それを磨き、明けても暮れてもコピーのことを考えていました。
今考えると、その頃は猛進するあまり、たとえばグラフィック広告のその平面だけを見て、TV-CMの15秒の映像だけを見て、そこに関与している人間や、その先にいる人間を見ていなかったように思います。
広告はチームで作るものだから、仕事の仲間とはそれなりに楽しく協調してやっていましたが、人のために仕事をしていなかった。自分の仕事は、100%自分のために存在した。ま、若い頃ってそんなもんかな。
きっかけは、あるコピーの賞をとった時です。まわりの人たちが、びっくりするくらいに喜んでくれました。幸せなことに、クライアントも大喜び、お祝いパーティなんかを開いてくれちゃいました。若造を「ああ、この人たちのために、これからもっといい仕事しちゃうぜ!」と舞い上がらせるのに十分な華やかさでした。
今考えると、その頃は猛進するあまり、たとえばグラフィック広告のその平面だけを見て、TV-CMの15秒の映像だけを見て、そこに関与している人間や、その先にいる人間を見ていなかったように思います。
広告はチームで作るものだから、仕事の仲間とはそれなりに楽しく協調してやっていましたが、人のために仕事をしていなかった。自分の仕事は、100%自分のために存在した。ま、若い頃ってそんなもんかな。
きっかけは、あるコピーの賞をとった時です。まわりの人たちが、びっくりするくらいに喜んでくれました。幸せなことに、クライアントも大喜び、お祝いパーティなんかを開いてくれちゃいました。若造を「ああ、この人たちのために、これからもっといい仕事しちゃうぜ!」と舞い上がらせるのに十分な華やかさでした。

やがて、アイデアって誰かとかけ算した方がふくらむ、とか、人に喜んでもらうのって意外と快感、とか、仕事を自分のためだけにやるのはもったいない、なんてことを、僕はゆるやかに知っていくのです。
実際の仕事の流れの中でも、アウトプットより「人」が決め手になることが、いろんな局面であると思います。僕の少ない経験から、人との関係を作るのに有効な方法論をお話ししてみます。
実際の仕事の流れの中でも、アウトプットより「人」が決め手になることが、いろんな局面であると思います。僕の少ない経験から、人との関係を作るのに有効な方法論をお話ししてみます。
最初のつかみ、最後のとりで。
1、プレゼンは、見た目が9割!?
僕たちクリエイティブディレクターの最重要仕事のひとつ、プレゼンテーション。特に競合ともなれば、広告代理店各社は色とりどりのプランを広げ、仕事獲得に必死です。
ちょっと暴言ですが、提案内容に圧倒的な差がある場合は別として、コンペティションの勝敗は、プレゼンテーターの「見た目」で決まるのではないかとひそかに思っています。見た目といっても姿形だけでなく、話し方や笑顔、眼のチカラ、声のトーンなど。最初のつかみは「人」で決まる。(おいおい、かなり暴言だなぁ。)
たとえば、話が抜群に面白く、5分に1度は笑いをとる芸人タイプ。また、どっしり構えて、丁寧にわかりやすく導く頼れるボスキャラ。あるいは有名クリエイターのオーラを放ち、説得力に満ちた話術で魅せる名人など。要は、自分のキャラと武器をいかに見つけるか。これはもう経験を積みながら、自分なりの方法を身につけるしかありません。
え、僕?えーと、残念ながら笑いがとれるタイプでもなく、まかせて安心のカンロクもオーラもない。僕にできるのは、一生懸命話す。それだけ。テンション高く、汗かきながら、情熱ほとばしり、僕が何でもやります!という泥臭いプレゼンです。(マネしないでね。)
2、信じてもらえれば「人」はがんばる。
以前あるゲームソフト会社のCM制作で、企画や演出のコンテが決まり、さあ撮影!となった時に、宣伝部長からいろいろと質問され、つっこまれた。「本当にこれで大丈夫ですか?」と笑いながら。予想外の展開に僕はあせり、あたふたしてしまいました。
後になって「いやーいろいろ言ってすいません。シャクイさんに『大丈夫、まかせてください』って言って欲しかっただけなんですよ。」とのこと。あ、信頼してくれてたんだ。僕は嬉しいやら、あたふたして恥ずかしいやら・・・。
そのCM、すごくがんばりました。部長が気にしていた点すべてに、僕なりのベストの答えを用意して仕上げました。最後のとりでも結局「人」です。人は信じてもらえれば、それに応える。宣伝部長は、そのCMのクライアント側の責任者。その人の大事な仕事を、僕は大切につくり、その人に手渡したのです。
3、「人」へも、アフターケアを。
広告に熱い気持ちでとりくんでくる担当者とがっぷり仕事をした時、たとえば新聞広告が掲載された日など、僕は直接電話かメールをすることがあります。話す内容はたわいもなく、「朝刊見ました!掲載うれしいですね。うちの社内でも評判いいですよ。」くらいのこと。
クリエイターって、打ち合わせ以外は営業を通してしかやりとりしないので、こんなことでもすごく喜んでくれる。戦友の絆が生まれる。次の仕事も「シャクイさん、よろしく!」となります。
僕たちクリエイティブディレクターの最重要仕事のひとつ、プレゼンテーション。特に競合ともなれば、広告代理店各社は色とりどりのプランを広げ、仕事獲得に必死です。
ちょっと暴言ですが、提案内容に圧倒的な差がある場合は別として、コンペティションの勝敗は、プレゼンテーターの「見た目」で決まるのではないかとひそかに思っています。見た目といっても姿形だけでなく、話し方や笑顔、眼のチカラ、声のトーンなど。最初のつかみは「人」で決まる。(おいおい、かなり暴言だなぁ。)
たとえば、話が抜群に面白く、5分に1度は笑いをとる芸人タイプ。また、どっしり構えて、丁寧にわかりやすく導く頼れるボスキャラ。あるいは有名クリエイターのオーラを放ち、説得力に満ちた話術で魅せる名人など。要は、自分のキャラと武器をいかに見つけるか。これはもう経験を積みながら、自分なりの方法を身につけるしかありません。
え、僕?えーと、残念ながら笑いがとれるタイプでもなく、まかせて安心のカンロクもオーラもない。僕にできるのは、一生懸命話す。それだけ。テンション高く、汗かきながら、情熱ほとばしり、僕が何でもやります!という泥臭いプレゼンです。(マネしないでね。)
2、信じてもらえれば「人」はがんばる。
以前あるゲームソフト会社のCM制作で、企画や演出のコンテが決まり、さあ撮影!となった時に、宣伝部長からいろいろと質問され、つっこまれた。「本当にこれで大丈夫ですか?」と笑いながら。予想外の展開に僕はあせり、あたふたしてしまいました。
後になって「いやーいろいろ言ってすいません。シャクイさんに『大丈夫、まかせてください』って言って欲しかっただけなんですよ。」とのこと。あ、信頼してくれてたんだ。僕は嬉しいやら、あたふたして恥ずかしいやら・・・。
そのCM、すごくがんばりました。部長が気にしていた点すべてに、僕なりのベストの答えを用意して仕上げました。最後のとりでも結局「人」です。人は信じてもらえれば、それに応える。宣伝部長は、そのCMのクライアント側の責任者。その人の大事な仕事を、僕は大切につくり、その人に手渡したのです。
3、「人」へも、アフターケアを。
広告に熱い気持ちでとりくんでくる担当者とがっぷり仕事をした時、たとえば新聞広告が掲載された日など、僕は直接電話かメールをすることがあります。話す内容はたわいもなく、「朝刊見ました!掲載うれしいですね。うちの社内でも評判いいですよ。」くらいのこと。
クリエイターって、打ち合わせ以外は営業を通してしかやりとりしないので、こんなことでもすごく喜んでくれる。戦友の絆が生まれる。次の仕事も「シャクイさん、よろしく!」となります。

さあこの仕事、誰のためにしようか?
100%自分のために仕事をしていた若造は、今は誰のためにしようかと考えたりもします。熱意と意思のある担当者に出会うと、その人を喜ばせるために。社内の担当営業を男にしてやろう!という時もあれば、がんばるアートディレクターやコピーライターに、こいつに一花!と思う時もある。広告に接する人を元気にしよう!なんて気もなくはないですが、わりと身近な誰かを想うことが多い。立場がそうさせるのか?いや、それだけではないような気がします。
人のためにしたことは、いつかめぐりめぐって、自分に還ってくるというのが、"宇宙の法則"らしいですよ。もちろんそれを期待しているわけではありません。自分のためだけに生きるのって、なんだか、ちょっと、つまらないような気がするのです。(オトナでしょ。)
人のためにしたことは、いつかめぐりめぐって、自分に還ってくるというのが、"宇宙の法則"らしいですよ。もちろんそれを期待しているわけではありません。自分のためだけに生きるのって、なんだか、ちょっと、つまらないような気がするのです。(オトナでしょ。)

[あとがき]
昨年からサッカーやってます。地元のクラブのオーバー40のチーム。この歳で、グランドを風切って疾走するとか、汗だくのヘトヘトなのが、すっごい爽快!(実は体育会系!)スルーパスがきれいに通った時も、すっごい快感。これも、"人から人へ"なんだよなぁ。試合では、ゴール前への絶妙のクロスをイメージして、サイドを駆け上がる僕。(ヤルナー!)でもイメージだけなの。
昨年からサッカーやってます。地元のクラブのオーバー40のチーム。この歳で、グランドを風切って疾走するとか、汗だくのヘトヘトなのが、すっごい爽快!(実は体育会系!)スルーパスがきれいに通った時も、すっごい快感。これも、"人から人へ"なんだよなぁ。試合では、ゴール前への絶妙のクロスをイメージして、サイドを駆け上がる僕。(ヤルナー!)でもイメージだけなの。
次回もお楽しみに!




