断線しても繰り返し復活する「ゾンビケーブル」、そのユニークな仕組みとは?~「ゾンビケーブル」レビュー
TEXT:山口真弘(ITライター)
ケーブルの断線の多くは、コネクタの付け根部分で発生します。コネクタの抜き差しを繰り返しているうちに、その付け根に過剰な力がかかって内部が断線したり、あるいは外側の被覆が破れて最終的に断線に至るというわけです。スマホなどの充電ケーブルは、この傾向が特に高いでしょう。
今回紹介する「ゾンビケーブル」は、こうしたケーブルの欠点を解消すべく作られた、ユニークな製品です。一般的なmicroUSBタイプや、iPhoneやiPadに使えるLightningタイプなど複数のモデルがありますが、今回は片方がUSB Type-Cになったタイプを紹介します。
もしケーブルの付け根に断線が発生すれば、レバーを外してケーブルをコネクタから抜き、断線した箇所をハサミでカットした上で、再度コネクタに差し込んでレバーでロックします。こうして断線箇所を除去することで、元のように使えるようになるというわけです(カットできるのはUSB Type-C側のみ。Type-A側は不可)。
もちろんカットしたぶんケーブルは短くなりますが、1回につきせいぜい数センチ程度で、実用上は何ら問題ありません。ケーブルの長さが尽きるまでは、何度カットをしても使い続けられることから、ゾンビケーブルという名前がつけられているというわけです。
似た構造のLANケーブルと違って加工時に専用のかしめ工具を使うこともなく、またケーブル先端をストリッパーで剥くこもなくそのまま差し込むアバウトさゆえ、きちんと認識するかどうか不安ですが、試した限りでは問題ないようです。ケーブルはフラットタイプで、かつ表裏もありませんので、向きを気にせず手軽に使えます。
ひとつは、熱可塑性ゴムでできたフラットケーブルの外皮はかなり硬く、よほどのことがない限り、断線自体が起こりそうにないことです。どちらかというとレバーで押さえたケーブルがコネクタから抜けかけて接触が悪くなる確率のほうが高そうで、利用に際してはそちらも念頭に入れておく必要があります。
もうひとつは、充電速度があまり高速ではないことです。テスターで測ってみると、一般のケーブルと比べて抵抗値がかなり高く、それゆえ通常のUSB Type-Cケーブルと比較した場合、時間がかかる可能性があります。
USB Type-Cと言えば、USB PD(USB Power Delivery)という急速充電規格を利用できることが特徴の一つです。本製品は両端がUSB Type-C、いわゆるC-Cケーブルではなく、一方がUSB Type-AのいわゆるA-Cケーブルですので、もとよりUSB PDには対応しないのですが、一般的なA-Cケーブルと比べても充電速度が遅いとなると、利用できるシーンが限られるのがもったいないところです。
そもそもケーブルの断線は、人に繰り返し踏まれたり、足を引っ掛けられることで簡単に起こってしまうものです。本格的に対策しようとすると、モールなどで保護する必要がありますが、そうなるとコストもかかります。敢えて断線しても構わないので、その後の修復しやすさを重要視した本製品は、面白いコンセプトだと言えます。
前述のように本製品は抵抗値が高く、充電速度があまり期待できないのがもったいない限りですが、フラットタイプのケーブルであれば、頑張ってもこれくらいが精一杯なのかもしれません。まずはどこで使うかを決めてから、購入を検討してみてください。
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn
2019.11.19 Tue