実売4千円台、パン・チルトやスケジュール録画にも対応したネットワークカメラ~TP-Link「Tapo C200」レビュー
TEXT:山口真弘(ITライター)
スマホの普及で、大幅な進化を遂げたデバイスはいくつも存在します。ネットワークカメラはその最たる例で、かつてはルーターの設定に手を加えなければ外出先からの参照すら不可能でしたが、今はスマホを使ってどこからでも手軽に、カメラの映像をライブで見られるようになりました。
こうした進化の一方で大幅な低価格化も進み、いまや5千円も出せば十分な機能を持った製品が手に入ります。今回は、現在Amazonで売れ筋のネットワークカメラのひとつである、TP-Linkの「C200」を紹介します。
スマホアプリは、画面の上半分を使って映像を表示するモードのほか、全画面表示にも対応します。ライブ視聴時の遅延は約数秒と、この手のカメラの中では優秀です。もちろん外出先からモバイル回線を経由して観ることも可能です。
本体にはスピーカーとマイクが内蔵されており、室内の音をリモートで聴いたり、スマホから呼びかけることも可能です。体調の悪い家族が室内で寝ている場合に簡単なコミニケーションを取ることもできます。
microSDへの録画機能も搭載します。動体検知に対応していますので、カメラの視野の中で何かが動いた場合に、スマホに通知を送信しつつ、一定秒数の間、自動的に録画します。ナイトビジョン搭載で夜間の監視にも対応しています。
さらにスケジュール録画にも対応しています。動体検知機能と組み合わせ、例えば昼間は常時録画、夜間は動体検知での録画といった具合にスケジュールを設定できます。平日のみ有効にするなどの、柔軟なスケジューリングにも対応します。
これらスケジュール録画のデータは、スマホアプリにタイムラインで表示されるので、指定の時間の様子を手早く参照できます。もちろん手動での録画データ、およびキャプチャデータについても、アプリ上で表示できます。
しかしパン・チルト機能は、単に被写体を中央に捉えるだけではない、2つの大きな利点があります。ひとつはカメラをリモートで動かすことで、防犯用途で「しっかり監視しているぞ」とアピールできることです。固定画角のカメラにはできない芸当です。
もうひとつは、未使用時にカメラを完全に背中側に向け、部屋の様子を物理的に映せなくできることです。ネットワークカメラは、撮られる側からすると、監視されている不安が常につきまといます。第三者のハッキングの可能性も考慮すると、プライバシーモードが有効でも、100パーセントの安心はできません。
しかしパン・チルト機能でカメラの向きを背後に向けてしまえば、物理的に撮影は不可能になります。本製品にはカメラの向きをメモリーする機能がありますので、使用時・未使用時に向ける角度をそれぞれ設定すれば、ワンタッチで切り替えられるようになり、手間もかかりません。
またパン・チルトのモーター音以外に、赤外線のオン・オフの「カチッ」という切り替え音も、かなり響きます。静かな部屋に設置する場合、就寝している赤ちゃんやペットが目を覚ますきっかけになりかねませんので、なるべく音が響かないよう、設置場所や置く面の素材には、工夫したほうがよさそうです。
そのため、災害でカメラを喪失した場合はもちろん、悪意ある第三者によってカメラが盗難に遭ったり、microSDごと破壊されると、過去にさかのぼって録画データが失われてしまいます。カメラ本体が行方不明になっても録画データを安全に参照できるクラウド型のネットワークカメラにはないリスクです。
そうした点からも本製品は、防犯用途で映像を確実に記録しておく用途より、外出先もしくは別の部屋から、室内をライブで参照する用途のほうが適しています。機能は豊富、操作性もこなれた本製品ですが、こうした特性については、製品選定にあたって把握しておきたいところです。
山口 真弘(やまぐち まさひろ)
ITライター。PC周辺機器メーカーやユーザビリティコンサルタントを経て現職。各種レビュー・ハウツー記事をWEBや雑誌に執筆。最近は専門であるPC周辺機器・アクセサリに加え電子書籍、スマートスピーカーが主な守備範囲。著書に『ScanSnap仕事便利帳』(ソフトバンククリエイティブ)『PDF+Acrobat ビジネス文書活用[ビジテク] 』(翔泳社)など。Twitter:@kizuki_jpn
2020.11.24 Tue