第2回 店舗経営者向け最強Web活用術 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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中堅、中小企業のサイトでも使えるWeb企画
ビジネスを助けるサイト運営のノウハウ

加藤洋一
(株)ユニークセリング・プロポジション
url : www.katoyoichi.com
mail : info@katoyoichi.com
広告制作会社専門コンサルタント、ブランディングブログアソシエーション主宰。Web制作会社を経営した経験をもつ。自らが実践した下請けに一切頼らない経営ノウハウをコンサルティング。業績を大幅アップさせている。


第2回
店舗経営者向け最強Web活用術
~Webx携帯メディアミックス~
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店舗ビジネスにおいて、ただつくるだけのWebから脱却せよ。
コミュニケーションという最強の武器を渡す具体的方法を示す。
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店舗経営者のWeb活用は相変わらず下手である

パンフレットに毛が生えただけのWebサイト
あらゆるビジネスを成功させるにはWebサイトを活用することが重要なのは言うまでもない。そしてその方法論は、100のビジネスがあれば、100通りあるはずだ。本来であれば個々のケーススタディを説明したいのだが、誌面の関係上無理がある。

今回は、大きなくくりとして地域に密着し実店舗でビジネスを行っている、店舗ビジネス向けのWeb活用について述べるつもりだ。ひと口に店舗ビジネスといってもさまざまであり、Webサイトの活用方法もさまざまである。思いつくところでは「飲食」、「小売り」、「美容院」、「エステサロン」、「スクール」、「ホテル」といったところだろうか? ほかにもあるだろうが、これらのビジネスを成功させるにおいて共通することがある。いや、この概念はどんなビジネスにおいても普遍のものだ。前号もこの図は出させていただいているのでおなじみだと思うのだが、それほど重要な図なのだ【1】。店舗ビジネスにおいてもマインドシェアの獲得が重要なのである。

【1】マインドシェア獲得レベル図 イズ・アソシエイツ発行『販売促進スペシャル第4号』参照。(c)2006 Branding Blog Association All Rights Reserved.
【1】マインドシェア獲得レベル図 イズ・アソシエイツ発行『販売促進スペシャル第4号』参照
(c)2006 Branding Blog Association All Rights Reserved.


偏見かもしれないが、店舗ビジネスの経営者のWeb活用はお世辞にもうまいとはいえない。もちろん業界によっては取り組みがうまいところもあるが、全体的に見てみると下手なのである。具体的には、店舗のパンフレット程度(ロゴ・商品・サービス・店舗案内)の情報をWeb化したようなサイトが多いのである。もちろんこれらも重要ではあるが、これだけでは最低限の情報発信であり不十分と言わざるを得ない。

ここで読者の方に質問したい。先ほどの【1】において、このようなパンフレットの情報程度のWebサイトがマインドシェア獲得レベルの最上位である「常連客」になるために役立っているだろうか? 恐らく難しいだろうと思う。なぜなら、ほとんどの店舗ビジネスは成熟業界であり、他店との差別化が難しい業界だからだ。これらのことに店舗経営者の方は、潜在的には気づいているのにやれていないのが現状だ。なぜできないのか? 私は、次項のような問題点が背景にあるからだと考えている。

良いものを提供すれば来店されると思っている幻想
私は、サラリーマン時代に飲食店のオーナーに厨房機器を販売する営業をやっていたことがある。恐らく1,000人以上の経営者と面談を行った経験がある。このことを前提として話したい。

店舗ビジネスに共通していえることは、「待ち」の営業であることだ。そしてその根底にある考えは、良いものを提供していれば来店されるという考えである。もちろん良いものを提供することはもっとも重要なことである。しかし私の経験上、一部の例外を除けば、現代のような情報社会においては、これだけでは生き残れないと感じるのだ。通常、店舗ビジネスにおいて重要なのは【2】の要素である。

【2】店舗経営に必要な3つの要素。(c)2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.
【2】店舗経営に必要な3つの要素
(c)2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.


売り上げに関連する大きな3つの要素は、「商品」、「サービス」、「ハコ」の3つである。繁盛店は例外なくこれらの要素が高いレベルにあるはずだ。成熟化時代の消費者の目は厳しい。したがって、この3つがある程度の水準で提供されていないと話にならない時代になってきているのだ。だから、良いものをつくって待っているだけでは、他店との差別化がされにくく経営は厳しいと考える。これらの要素を有機的に結びつけ、他店との差別化を図るのがコミュニケーションであると私は考えているのだ。

まんじゅうを売るだけでよいのか?
ここでもうひとつ読者に質問させていただきたい。あなたがお客だとして店舗に行って買っているものは何か? 商品だけだろうか? 商品だけを購入するのであれば自販機で十分である。気づいていないかもしれないが、商品以外の要素も含めて購入しているはずだ。

店舗ビジネスの特徴は、人と人とのコミュニケーションが介在されていることであり、それを含めたサービスが商品を売っていくのである。まんじゅうを売っている小売店だったら、まんじゅうができるまでの思いだとか、子どもが○歳になった記念日をお祝いするときにこのまんじゅうを食べると△△する昔話があるだとか、そういった思いがお店の人と来店される人との間で交わされるのである。このような思いを含んだ商品やサービスを購入しているのである。読者の皆さんもそういわれてみれば思いあたる節がないだろうか?

人の思いが伝わる情報発信を行うためのWeb活用を提案しなければならないのである。良いものを提供するのは当たり前、そのうえでお客様と積極的なコミュニケーションを育てないと勝ち残っていけないのである。そのための道具としてWebを活用していけばよいのである。


情報化時代を乗り切る店舗経営者のWeb活用術とは?

店長・スタッフの情報発信をさせる
店舗ビジネスの代表格である美容院という業界は、勉強を行っている業界である。来店したお客に対してのコミュニケーションは比較的上手なお店が多い。しかし、これでも不十分と言わざるを得ない。

来店してからのコミュニケーションスキルは優秀だが、来店時以外は皆無に等しい。店舗経営者も頭ではわかっているはずだが、ほとんどの店舗経営者がやれていないというのが現実なのである。なぜやらないかというと、商品やサービスの提供に忙しくて来店時以外のコミュニケーションにまで手が回らないというのが現状ではないだろうか?

私は、過去自らがプロデュースしたWebプロジェクトで何度も店長やスタッフの思いを情報として発信させることに成功している。アクセスログを解析しても、どのWebサイトも意外にスタッフの書いたコンテンツへのアクセスが多いのである。つまりこれらの思いが伝わって【1】のマインドシェア獲得レベルを押し上げていることに貢献していることが容易に推測できるのだ。

店舗ビジネスのUSPは、大抵が人にかかわっているところに潜んでいるケースが多いのである。


USP(Unique Selling Proposition)
その製品にしかない売りもの。特長。出典:三省堂「EXCEED英和辞典」


ふたつのメディアを駆使してマインドシェアを高める
店舗ビジネスにおいて、必要となるお客様とのコミュニケーション手段は次の3つである。

1. 来店時
2. Web
3. 携帯Web


店舗を離れた2.と3.においては、人によってコミュニケーション手段が違うことも理解しなければならない。ある人は携帯しか持っていないかもしれない。ある人の情報収集はPCのみで行われているかもしれない。つまり、店舗経営において売り上げに貢献させるためには、2.3.のコミュニケーションを可能とするメディアミックスを行えばよいのである。

両方を駆使する方には、Webと携帯Webでアプローチすることによりクロスメディアで対応することになる。もう一度【1】をご覧いただきたい。器に入れるイメージである上部に、いろいろなメディアが羅列してある。PC、携帯とふたつのメディアを器として持つことによりコミュニケーションアップの可能性が圧倒的に飛躍する。たとえば、携帯サイトのURLをQRコード化すると、さらに紙媒体とのメディアミックスが行いやすくなることは言うまでもない。


店舗経営者をもうけさせるための最強Web活用術とは?

多忙な経営者に情報発信させるコツ
結論から言おう。携帯を連動したCMS開発を行ってあげてほしい。前述したとおり、店舗経営者は忙しい。商品やサービスを提供することで目いっぱいの方がほとんどである。だからCMSを提供して「だれでも」「簡単に」「すばやく」を実現して情報発信に対するストレスをなくしてあげることが重要なのだ。

店舗の業種にもよるが、お客と携帯でのコミュニケーションが必須となっている。店舗ビジネスは、携帯を利用するコミュニケーションが相性が良いのである。考えてみてもらうとわかるのだが、これを従来の制作フローで行うことには無理がある。ただでさえ忙しい店舗経営者に携帯サイトもつくらせて、更新させるということは予想以上にストレスを与えることになるのだ。だから、ほとんどの店舗経営者は来店時以外のコミュニケーションを怠っているのが現状なのである。

携帯サイトのSEO時代到来?
それともうひとつだけ携帯サイトを連動させる必要性を申し上げよう。ソフトバンクの参入により、Yahoo!モバイルへアクセスさせる「Yボタン」が運用されだした。このことは、携帯でのWeb活用がおもに公式サイトを訪れていたことから、PC同様にキーワード検索により無償のサイトから情報収集する時代が当たり前になる時期に突入してきていると考えられる。実際にほかのキャリアでも検索窓が上部にきている。つまり近いうちに携帯サイトでのSEO対策という話も出てくるだろう。

実際に私のクライアントの携帯サイトは「名古屋+和食」で上位に出てくるようになっているが、アクセスログ解析を行うと、その検索キーワードで携帯サイトにアクセスしてくる数が増えてきているのである。

どのような仕様にすればよいのか?
実際の携帯連動型CMSの概念は【3】のとおりである。CMS開発にムーバブルタイプを利用して管理画面を制作してある。ここから、PCの素人でもブログを書くようにエントリーすると、PC版と携帯版のWebコンテンツが自動生成されるようになっている。

【3】携帯連動型CMS概念図。(c)2006 Branding Blog Association All Rights Reserved.
【3】携帯連動型CMS概念図
(c)2006 Branding Blog Association All Rights Reserved.


私はこの概念を、パッケージングした経験もある。特別にこのときの仕様図をお見せしよう【4】。基本設計はご覧のとおりである。ほとんどが、ムーバブルタイプのブログ機能を使ってエントリーを追加できるようになっている。これとほぼ同様に携帯サイトの仕様書があると思ってもらっていい。ポイントはメールアドレスのみを無料会員として収集する仕組みを連動させている点だ。

【4】携帯連動型CMS仕様。(c)2007 U.S.P, INC & Chirashiya.com All Rights Reserved.
【4】携帯連動型CMS仕様
(c)2007 U.S.P, INC & Chirashiya.com All Rights Reserved.


携帯連動型CMS事例
実際にこれらの仕様で運用されている携帯連動型CMSサイトをご覧いただきたい【5】【6】【7】。これらは、一見するとまったく違った仕様に見えるが、【4】とほとんど同じ仕様上で動き店舗ビジネスの売り上げ向上に成功している事例である。

【5】「おばんざい鼓」Web(www.tsuzumi.com/)、携帯(www.tsuzumi.com/m2/)
【5】「おばんざい鼓」Web(www.tsuzumi.com/)、携帯(www.tsuzumi.com/m2/

【6】「ビーライン」Web(www.b-linenagoya.com/)、携帯(www.b-linenagoya.com/m2/)
【6】「ビーライン」Web(www.b-linenagoya.com/)、携帯(www.b-linenagoya.com/m2/

【7】「まるこほーる」Web(www.marcohall.com/)、携帯(www.marcohall.com/m2/)
【7】「まるこほーる」Web(www.marcohall.com/)、携帯(www.marcohall.com/m2/


ポイントは店舗のスタッフが情報発信をストレスなく行っていることが挙げられる。そしてメールアドレスを店舗で獲得して、来店時におけるコミュニケーションのみならず、来店時以外にもこの携帯連動型CMSを活用して、積極的なコミュニケーションを行っていることだ。つまり「待ち」だけではなく「攻め」のコミュニケーションも行っているのである。そしてこの携帯連動型CMSを武器にもつと、さらにメディアミックスやクロスメディアを有機的に行えることは前述してきたとおりだ。

メディアミックスの方法
それでは、実際にどうやって携帯連動型CMSを活用しているかを説明したい。まずPC用、携帯用と分け隔てなくメールアドレスを取得するために、PC・携帯サイト双方に無料メール会員登録のページがある。次に会員登録をするとメール配信システムにより自動返信メールを返している。あとは蓄積されたメールアドレス宛てにPC・携帯用に分け隔てなく、CMSで更新したコンテンツのURLを落とし込み、メール送信するだけである。当然のことながら来店時におけるコミュニケーションでメール会員も募集している。

そのほかにもフリーペーパーの広告や記事にPC用のURLはもちろんのこと、携帯サイト用のQRコードを印刷したり、店内で配布しているパンフレットなどにも同様に行っている。このようなことを行えばまちがいなく【1】でいうマインドシェアの獲得レベルが上がり、売り上げに貢献するのだ。実際に事例で紹介した店舗はそれぞれこの武器を活用して売り上げアップに結実させている。


まとめ

いかがだったろうか? ただつくるだけは当たり前。実際このようなところまで掘り下げてクライアントに行動させるための武器を提案し、使い方までアドバイスするということは、コンサルタントの領域である。Web制作会社は、今まではつくるだけで許されてきた。しかしこれから生き残るためには、これらのマーケティング戦術まで駆使した提案をしてこそ生き残れるだろう。今回の記事を参考にしてWeb活用の提案に落とし込んでいただく材料になれば幸いである。

最後に携帯を連動させるCMS開発を御社が行っていれば問題ないが、外注するパートナーが必要だという場合に探すリストを紹介したい。ムーバブルタイプを開発しているシックスアパートのパートナーリスト(www.sixapart.jp/pronet/partner/)を参考にするとよいと思われる。携帯連動CMSを開発するためのプラグイン開発を行っているパートナーを選びたい。

また本稿で説明した事例を実現するためには、PCおよび携帯メールに自動返信する機能とたまったメールアドレスに一斉配信をするメール配信システムが必要だ。これについては優秀なもので低価格で利用できるものがたくさんある。ぜひ、御社の提案する内容に合わせたシステムを検討していただきたい。


本記事は『Web STRATEGY』2007年5-6 vol.9からの転載です
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