第7回 Web屋さんも準備しておいたほうがよいセールスレターテクニック! 後編 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第7回 Web屋さんも準備しておいたほうがよいセールスレターテクニック! 後編

2024.5.17 FRI

【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて
中堅、中小企業のサイトでも使えるWeb企画
ビジネスを助けるサイト運営のノウハウ

加藤洋一
(株)ユニークセリング・プロポジション
url : www.katoyoichi.com
mail : info@katoyoichi.com
広告制作会社専門コンサルタント、ブランディングブログアソシエーション主宰。Web制作会社を経営した経験をもつ。自らが実践した下請けに一切頼らない経営ノウハウをコンサルティング。業績を大幅アップさせている。


第7回
Web屋さんも準備しておいたほうがよい
セールスレターテクニック! 後編
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この連載では、大企業と違ってWeb サイトにかける潤沢な予算を用意できない中堅・中小企業でも、
独自の強みを生かしたWebサイトの使い方をすれば十分に勝負できることを、
実践的な手法を交えて解説していく。
今回は、前回に引き続きセールスレターテクニックについてだ。
初めての人でもすらすら書けるようになるライティングスキルを紹介する。
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6つのステップで、初心者でもセールスレターが書ける

前号をご覧になっていただいて、セールスレターというものが何となくおわかりいただけただろうか? 今回はもう少し突っ込んで、セールスレターのライティングスキルについてのコツを紹介したい。セールスレターを書く、書かないは別にして、読み手の感情を動かすという意味では、Webを構築する際のコンテンツづくりに役立つはずだ。ぜひ参考にしていただきたい。

「否定3原則」を心得て2人称で書いていく
まず、絶対心構えとして覚えておいていただきたいことが3つほどある。これを「否定3原則」と呼ぶ。

1. お客さまは読まない
2. お客さまは信じない
3. お客さまは行動しない


ご自身に置き換えて考えてみてもらってもわかるだろう。お客さまは忙しい。しかも世の中、広告だらけ、情報だらけである。その中で「否定3原則」は当たり前であるが、どうも書き手となった瞬間から都合のよい解釈を起こしてしまう。

1. お客さまは読んでくれる
2. お客さまは信じてくれる
3. お客さまは行動してくれる


お恥ずかしい話ではあるが、私自身もセールスレターを何本も書いているのにもかかわらず、そういった思考にはまっていくことがある。

言い換えれば、上記の3つをクリアすればお客さまは行動を起こしてくれるのである。ライティングする前にPCにこの「否定3原則」を貼り付けて置くぐらいの覚悟が必要だ。

もう1点ある。書くにあたってできるだけ2人称で書いたレターのほうができあがりがよい。これを実行するためには、クライアントの理想のお客さまを知ることが重要だ。そのお客さまに近く、自分の想像できる方の名前を「否定3原則」と同様に貼っておくとよい。手紙は従来、書く相手を選定しているから感情移入しやすい。この環境を強制的につくり出すということになる。これを実践すると驚くほど書きやすいことがわかるはずだ。

ステップ形式で書くセールスレター
書き方は千差万別である。書き手の好きなように書けばよいのであるが、あくまでもひとつの型を覚えておくと応用しやすい。したがって、私自身が研修で使っているレジュメの一部を説明したい。いろいろな書き方をやってみたが、次のようなステップで行うと比較的初めての方でも書きやすいということがわかっている。加藤式ライティング法とでも名づけておこう(笑)。【1】をご覧いただきたい。STEP0からSTEP6までの7段階で構成されている。具体的にひとつずつ説明していこう。

【1】加藤式ライティング法 Copyright(c)2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.
【1】加藤式ライティング法
Copyright(c)2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.


STEP0:USP策定
あくまでも訴求するポイントがぼんやりしているとよくない。一貫性があって初めて読み手に物語として伝わる。要するにぶれないポイントが必要となる。そして訴求されるべき点は売ろうと思っている商品・サービスのUSP※1であるべきだ【2】。

【2】USPと起承転結 Copyright(c)2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.
【2】USPと起承転結
Copyright(c)2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.


よくありがちなのは訴求するポイントがバラバラで読み手に伝わりにくいというパターンだ。その場合「否定3原則」の「お客さまは信じてくれない」が発動することだろう。

わかりにくいと思うのでもう少し例を挙げたい。黒澤明監督の「生きる」という映画をご存じだろうか? 主人公である公務員の課長が何の張り合いもなく仕事をこなしていた。その状態を生きているのに死んでいる状態と皮肉っている。その主人公がガンを宣告されてから熱心に働き、良い公的な仕事をした。ガンを宣告されてからの短い時間を一生懸命生きた。この対比を描いた作品である。

この映画のテーマ(訴求点)は恐らく「生き甲斐」だ。その訴求点が根底に一貫してストーリー(脚本)があるから視聴者に伝わるのである。ちなみに映画「踊る大走査線」のテーマは「現場と管理側との乖離」だろう。このように、USPはそのセールスレターで語る一貫したテーマになっていなければならないのである。


※1 Unique Selling Proposition。1961年にアメリカにおける広告の巨匠ロッサー・リーブスがまとめたものであり、辞書にも掲載されている。「顧客に便益を約束すること」


STEP1:構成を決める
USPを決めたら続いて構成を決める。映画の話で説明するとわかりやすいので続けるが、「スターウォーズ」を見たあとどうなったか? 「タイタニック」を見たあとどうなったか? 恐らく多くの方が感情を動かされたのだと思う。そしてその構成が毎回同じものが多いということをご存じだったろうか? ハリウッドで公開される映画のシナリオは、神話の法則という原則を使われているらしい。詳しいことは、「神話の法則―ライターズ・ジャーニー」という良書があるので、そちらに譲る。

おとぎ話や神話といったたぐいの構成は太古より人の心を動かすために世界各地で使われているということだ。良いセールスレターを書くための学び方は、物語、映画などの秀作を読む。そして構成がどうなっているかということを学んでもらいたい。

日本の読み物でオーソドックスな構成が起承転結である。そのほかにいろいろな構成のパターンがあるが、いずれにしても文章を書く前の構成は、いちばん重要なので意識してつくらなければならない。

STEP2:目次=見出しをつくる
構成が決まったら本でいうところの目次を考える【3】。

【3】広告制作会社経営者向け研修案内セールスレター構成 Copyright2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.
【3】広告制作会社経営者向け研修案内セールスレター構成
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セールスレターの場合は、目次は必要ないので目次=見出しとなる。【3】は前号で紹介した「広告制作会社経営者向け研修案内セールスレターDMバージョン」の見出しである。私の出したDMの構成は、「起承転結」を使っている。ポイントは本の目次を読んで内容がある程度流れるように把握できるように、見出しを見るだけで内容がわかるようになっていなければならない。

それから、実際に目次を書き出す場合のコツを伝えたい。そもそも構成=ストーリーである。ストーリーとは「変化について語るもの」ということがわかる。人は皆、変化があるから心を動かされるというわけだ。そのような変化はビジネス以外にもたくさんある。たとえば次のようなものが考えられる。

支配→解放
事件→解決
経営悪化→V字回復


つまりAからBに変わるということをセールスレターでも書かなければ、感情を動かせないということになる。「起承転結」の場合、変化を語るクライマックスは「転」である。「転」を決めなければストーリーが描けない。言い換えれば「転」が決まれば、あとはおのずとストーリーが決まってくる。その変化させるものが商品・サービスそのもの、またはそれに役立つものということであればよいのだ。

よく書き出すことに苦しんでいる方を観察すると、いきなり「起」=ヘッドコピーを書き出そうだとか、「転」を決めずに筆が止まっていることが多い。したがって、次のとおりに思考すれば書きやすいはずである。

1. 転を決める
2. 結を決める(オファー=特典)
3. 起部分のヘッドコピーを考える
4. 承を書いていく
5. 肉づけしていく
6. 見出しをブラッシュアップしていく



STEP3:ライティングする
見出しが決まったら、いよいよ書き出す作業に移る。コツは見出しを眺めながら書けそうなキーワードや図版などを配置していく。これらを書き出していくと次の発想の導火線となる。キーワードが文脈となり、次々に文章が完成していくことになる。前号で紹介した各パーツが、STEP2で決めた見出しのどこに配置すればよいのかわかるようになるので、パーツごとに書き出してもよい。

順序は関係なく、見出しを眺めながら書ける要素から書けばよい。前号でも紹介したが、どうしても文章が苦手な人はICレコーダを片手にしゃべってみる口頭筆記がお勧めだ。録音できたものを再生して文章に変換していくと、思いのほか書けるものである。

以上のように、このステップが作業としていちばん多い。これを繰り返してレターを完成に近づけていくことになるわけだが、下手でもいいから、とにかく書いてみること。これに尽きる。

STEP4:寝かす
レターを書き上げたときはホットな状態なので冒頭で述べた「否定3原則」をすっかり忘れていることが多い。そのままWebにアップしたのでは、効果は得られないことが多い。こけることが多いというわけだ。

これを回避させる方法は熟成させる。最低でも1日、2日おいたあとに、書いたレターが紙であれば、実際にDMのパッケージにしてみる。WebであればテストページにアップしてメールアドレスのURLから飛んでそのページを読んでみる。すべては「否定3原則」をもっているお客さまになりきった状態を強制的につくってみるとよい。そしてお客さまになったつもりで読んでみる。そのうえで、ここが引っかかる。行動しない。いまいち信じてもらえないなど、客観的な視点で気づかされることになる。これを繰り返して熟成していく。

STEP5:実施する
実際にパッケージングしてDMを実施する。Webの場合は、サイトにアップする。アクセスログ解析ソフトを活用してクリック率、コンバージョンレートなどを調査していく。

STEP6:修正する
Webの場合は特に効果の計測はしやすい。そこから発生される仮説を基にレターを改善していく。この流れを繰り返していくことになる。


見出しをつくり、セールスレターのライティングを実践

実際にやってみよう
実際に自社の売りたいサービスのレターを書いてみよう。まずは見出しをつくってみよう。見出しができたら実際に書いてみよう。

ここまで書いてきたことを整理してもなかなか書けない方もいることだろう。

そこで、私自身がいかに発想して書き上げていくか。そのプロセスの見本を紹介したい。私が本誌の販売部からMdN社のWebサイトに設置するセールスレター部分を任された※2と仮定してSTEP0~3の一部まで書いていくプロセスをご覧いただきたい。


※2 あくまでも架空の話となる。実際のUSP調査など精緻に行っているわけではない。オファーも存在しない。


STEP0:USP策定
過去の連載で説明した「USP穴埋め式作成法」を活用して本誌のUSPを抽出したものが【4】。従って訴求する点を【5】とする。

【4】本誌USP穴埋め式作成法TMの結果 Copyright(c)2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.
【4】本誌USP穴埋め式作成法TMの結果
Copyright(c)2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.

【5】本誌USP(訴求点) Copyright(c)2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.
【5】本誌USP(訴求点)
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STEP1:構成を決める
いろいろな構成があるが、今回も起承転結を使うこととする。この場合のストーリーに必要な変化はHTMLコーダー、デザイナーといった下流を任されている職種から上流職への変化である。

STEP2:目次
見出しをつくる。

STEP3:ライティングする
訴求するテーマにおける「転」を決める。【6】の「1」のように上流職に変化するために必要な雑誌と見出しをつくってみた。

【6】STEP0~3プロセスの見本 Copyright(c)2007 U.S.P, INC & Yoichi kato All Rights Reserved.
【6】STEP0~3プロセスの見本
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次に「結」を語る。【6】の「2」にあるように行動を促すオファーに見本誌を持ってきた。そのあとに語るべきことでわかる範囲でどんどんライティングを行う。【6】の「2」の下にあるように文章が浮かべばどんどん書き出していく。注文フォームなどは定型文も多いので活用していく。

続いて「起」=ヘッドコピー部分を考える。【6】の「3」のように訴求点や「転」から発想していき、ボディコピーを読ますためのヘッドコピーを持ってくる。見本では、対象読者がハッとすることを意識して書いてある。書いてしっくりこない、新たな発想が生まれたりしたらブラッシュアップしていく。

起こすことができたら、「承」に移行して「転」まで盛り上げていく。【6】の「4」のように「起」と「転」の間をつなぐ見出しを入れてみる。書いていくうちに細分化されていくと思うので、さらにそれも追加していく。この細分化はほかの部分でも起こるたびに追加していく。また、このように追加していく作業で発想されるキーワードや文章、図版などをとにかく入れてみる。

【6】の見本では「ただ、言われたことをこなすデザイナーやHTMLコーダーだけなら中国・インドの人材のほうが安いのです」という見出しに対して、Webデザイナーの人口が増加傾向にあると発想したので伸びていくグラフを置いてみた。そうすることによって、そういえば「中国人・インド人」にWebの外注をしている数値も上がっているのかも? と発想が広がる。これらを文章に仕上げていくことが重要だ。これらの繰り返しでSTEP4から6につなげていく。

誌面の関係上でかなり端折っているが、大まかなライティングの手順がわかっていただけただろうか? 少しでも腹に落ちれば幸いである。ぜひ参考にして実践してみてほしい。

型を覚えたら、反復練習
セールスレターは学ぶと非常に強力な武器となる。型は覚えた。あとは反復練習しかない。訓練を行っていくとクライアントがもっているすばらしい商品・サービスの魅力を引き出して売り上げに貢献させることは、そんなに難しくならないだろう。ぜひトライしていただきたい。

最後に私的なことで恐縮だが、本稿で私の連載が終わることになった。読者の皆様の発展をお祈りしております。またいずれかの機会でお会いしましょう。


本記事は『Web STRATEGY』2008年3-4 vol.14からの転載です
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