第4回 士業向け最強Web活用術 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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中堅、中小企業のサイトでも使えるWeb企画
ビジネスを助けるサイト運営のノウハウ

加藤洋一
(株)ユニークセリング・プロポジション
url : www.katoyoichi.com
mail : info@katoyoichi.com
広告制作会社専門コンサルタント、ブランディングブログアソシエーション主宰。Web制作会社を経営した経験をもつ。自らが実践した下請けに一切頼らない経営ノウハウをコンサルティング。業績を大幅アップさせている。


第4回
士業向け最強Web活用術
~個人をブランド化するWebサイトの仕掛け方~
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この連載では、大企業と違ってWebサイトにかける潤沢な予算がない中堅・中小企業の会社でも、
独自の強みを生かしたWebサイトの使い方をすれば十分に勝負できることを、
実践的な手法を交えて解説していく。
ところで、個人ブランドを構築するサイトには、さまざまなWebサイトに応用できるテクニックが多い。
今回は、現在活躍されている士業の実践例をもとに解説する。
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士業の取り組みに見られるパーソナルブランディングの可能性

パーソナルブランディングから学ぶ中小企業のブランドづくり
今回は、個人を売り物とする場合のWebサイトについて書きたいと思う。なぜこのような切り口で書く必要性を感じたかというと、今後の企業活動においても、より個人にフォーカスされたブランドづくりが必要になってきている時代と考えるからである。「社長」はおろか、「営業所の所長」、「工場長」といったように今までは光が当たっていない人たちにもこのような考え方は応用できる。

「パーソナルブランディング」とか「個人ブランド」などいろいろな呼び方があるようだが、ブログが普及して1億総情報発信時代などと言われたりしている中で、企業がこれを利用しない手はないのである。

今回は、特にこの必要性がある業界の「士業」にフォーカスして執筆したい。このような業界以外にも応用できることがあると思うので参考にしていただきたい。

素人っぽいWebサイトがいまだ氾濫している未成熟な業界
士業とは、個人や企業が抱える専門的な問題解決や、業務の代行を目的に国家資格等を有した専門家のことを指す総称である。長くクローズな業界であったためか全体的に見るとまだまだネットでの情報発信はお世辞にもうまいと言えない業界だ。いかにも「ホームページビルダー」のテンプレートをそのまま使って自分でつくりましたよ、といった感じが氾濫しているのである。リアルな世界では著名な先生でも「これだったらWebサイトとして情報発信しないほうが信頼が保たれますよ」という、笑うに笑えない状況も結構あるのだ。

無料サービスを利用した個人ブログでもよいのか?
最近では若い先生をはじめ、無料や低価格のブログサービスを活用している方も多い。これらで情報を発信することが悪いことだとは言わない。うまく活用できると大きな利益につながるはずだからだ。しかし、士業の多くがこのような情報発信をした場合、みんな似ている個人ブログの形式では、埋もれてしまう可能性が高いのである。

二極化が始まっている
どんな業界でもそうだが、低価格サービスを活用する方、これではダメだとしっかりとブランドを意識して情報発信する方と分かれるのが現状だと思う。これを読んでいる制作会社の方は、クライアントとしてこのような案件があった場合は後者の対応をしてあげるべきだと私は考える。

士業のマーケットと広告自由化の余波
士業のマーケットだが、下記をご覧になっていただければわかるとおり、意外に多い。

弁護士    約2万人
公認会計士    約2万人
税理士    約6.6万人
弁理士    約6千人
司法書士    約1.8万人
行政書士    約3.8万人
正確な数ではなく、あくまで目安の数値)

これらの大半がWebサイトを必要としている可能性が高いのである。そして数年前に税理士業界の広告自由化という規制化枠が撤廃したように、次々と士業の業界も競争原理主義が導入されていっている。これは同時にWebサイトの活用を強いられるといっても過言ではない。
余談ではあるが、法曹界に属する弁護士業界も近いうちに米国という黒船により、競争にさらされることになる可能性が高い。また士業の先生を相手にビジネスをするということは、それぞれ顧問先企業がいることも忘れてはならない。


士業向け最強Web活用から学ぶ個人営業術

個人ブランドを確立するためには?
個人をブランド化させるために必要な要素をまとめておくと、次のとおりとなる。

1. 見込み客に来てもらうSEO対策
2. どんな先生なのか? が一瞬でわかるトップ
3. 信頼を獲得するコンテンツ
4. 再訪問を促すコンテンツ


つまりコンテンツとして必要となるものである。それでは、ひとつずつ詳しく説明していこう。

1 見込み客に来てもらうSEO対策
士業の方を探している検索キーワードといえば、基本的に「士業名+地域名」でよいと考える。例を挙げると「税理士+名古屋」という感じだ。前述したとおり、まだWebサイトの活用に未成熟な業界なので簡単なタイトルタグのチューニングレベルで、同商圏の中で十分に上位表示が可能な業界もある。ただ、業界やポジションによっては、キーワードアドバイスツール【1】で検索需要が少ない場合は置き換えが必要である。例として販促に特化しているコンサルタントの岡本氏のSEO対策はユニークだ【2】。

【1】オーバーチュアのキーワードアドバイスツール。画面は「税理士 名古屋」で調べた結果
【1】オーバーチュアのキーワードアドバイスツール。画面は「税理士 名古屋」で調べた結果

【2】販促コンサルタントの岡本氏Webサイト(www.1ap.jp/)
【2】販促コンサルタントの岡本氏Webサイト(www.1ap.jp/


氏は大阪というエリアで「中小企業専門販促コンサルタント」というポジションを取っている。通常であれば、「販促コンサルタント」というキーワードでSEO対策をすればよいと思いがちである。しかし、キーワードアドバイスツールで検索需要を調べると、全国で1カ月に検索されるであろう数が、たった25件という結果だったそうだ【3】。これでは仮にトップで表示されても、問い合わせにつながらない。そこで氏は【4】のように思考したそうだ。

【3】執筆時現在のキーワードアドバイスツールの結果も10件と心許ない
【3】執筆時現在のキーワードアドバイスツールの結果も10件と心許ない

【4】検索キーワード決定質問法(アカウント・プランニング社発行『資格を活かす為の士業向け自分宣伝術』参照)Copyright(c) 2006 Branding Blog Association All Rights Reserved.
【4】検索キーワード決定質問法(アカウント・プランニング社発行『資格を活かす為の士業向け自分宣伝術』参照)
Copyright(c) 2006 Branding Blog Association All Rights Reserved.


まずは自身のポジションを考えて、その人たちの悩みにフォーカスして質問をしてみる。その質問に対して書き出していく。次にその検索キーワード自体に検索の需要があるか? をチェックしていく。最後にその検索キーワードをクリックせざるを得ない文章としてタイトルタグに埋め込むといった具合だ。

このような応用例を使えば前述した基本パターンに当てはめると次のようになる。

「税理士に頼む前に+大阪」
「会社設立を頼む前にみるページ+大阪」

といった具合だ。効果は実証済みなので試してみてほしい。

2 どんな先生なのか? が一瞬でわかるトップ
Webサイトのトップデザインは一瞬で信頼させることが重要なのは言うまでもない。個人ブランドを打ち出すWebサイトにおいても、その点をより鮮明に打ち出していかなければならない。その場合に重要になるのが次の3点だ。

(1)キャッチコピー
(2)先生の顔
(3)プロフィール


(1)のキャッチコピーは、後述するサービスにも関連してくるが、どんな問題を解決してくれるのか一瞬で伝えて、かつ興味をもってもらい「もう少し詳しく読んでみよう」と思わせなければならない。

実際の事例で説明しよう。名古屋の税理士である米津氏【5】は、前述した税理士+名古屋というキーワードで「Yahoo」、「Google」ともに上位に露出している。そしてトップページのキャッチコピーで「税理士は何業だとお考えですか? 私は、税理士もサービス業である、と考えています」と興味を引かせ、さらに詳しい説明に引き込んでいるのである。

【5】よねづ税理士事務所Webサイト(www.yonezu.net/)
【5】よねづ税理士事務所Webサイト(www.yonezu.net/


続いて社会労務士の福田氏【6】は、Webサイト屋号にて「人事・労務の悩み110番」として、キャッチコピーに「もっと会社を大きくさせたい社長様へ! 私が全力でお手伝いいたします」と人事系の問題を解決し、業績を上げるということを一瞬でわからせるようにしてある。

【6】福田社会保険労務士事務所Webサイト(www.fukuta.info/)
【6】福田社会保険労務士事務所Webサイト(www.fukuta.info/


前述した販促コンサルタントの岡本氏は、「自己流から一流の広告へ、プロの広告テクニックを徹底伝授」として興味を喚起し本文を読ませるようにしてある。

以上のように、みなそれぞれ一瞬にしてどんな先生かがわかり、さらに興味を抱かせてWebサイトのコンテンツを読んでいくように導線をつくり込んであるのだ。


3 顔写真などで信頼を獲得するコンテンツに
(2)先生の顔」に共通する項目は、どの先生も自らが「製品」、「サービス」であることや、ネットの世界では直接会わないため、不安を取り除くということが重要だということだ。そこで顔写真を前面に出す行為がもっとも重要になる。顔を出すことで逃げも隠れもしないということを、お客様にアピールすることができる。仕事を頼みたいと思う人が何歳ぐらいなのか? どんな感じの人なのか? などが解決できないとお客様は不安になるので問い合わせができない。

この顔出しと同時に重要になってくるのが(3)のプロフィールづくりである。プロフィールには前号「他社にはない強みのつくり方」を行ってもらいたい。その要素やパーソナリティを出し、思いを伝えることが重要になってくるのである。

そのほかに、「セミナー・講演実績」【7】、「マスコミ・取材実績」【8】といったものをできるだけ記載していくことが、信頼獲得のためのコンテンツとなるはずである。

【7】販促コンサルタントの岡本氏Webサイト「セミナー・講演実績」(www.1ap.jp/seminar/)
【7】販促コンサルタントの岡本氏Webサイト「セミナー・講演実績」(www.1ap.jp/seminar/

【8】販促コンサルタントの岡本氏Webサイト「マスコミ・取材実績」(www.1ap.jp/press/)
【8】販促コンサルタントの岡本氏Webサイト「マスコミ・取材実績」(www.1ap.jp/press/


4 再訪問を促すコンテンツ
個人ブランドを向上させるためのWebサイトに限らず、どんなサイトにもオファーが大切である。ここでいうオファーとは特典のことであり、来訪したお客様に次の行動を促す際に提案すべきものである。ふだん意識せずして使っている値引きなども、立派なオファーといえる。

話は少しずれるが、オファーを勉強したい場合は次のサイトをお勧めする。「オファー/DMファクトリー」(www.dmfactory.jp/knowledge/foundations11.html)という、郵便局がダイレクトメールを勉強するために情報発信しているサイトである。

こうやって調べるとオファーは実に99種類もある。これらをサイトで活用していくことが重要であると考える。

士業の先生のオファーでよく見られるのが次のようなものだ。

「フリー・インフォメーション(情報の無料提供)」……あまり費用がかからず、しかも柔軟に対応できる仕組みであって、1枚の製品カードから複数のシリーズ・カタログの提供まで、さまざまな情報提供方法がある。

「フリー・ブックレット(無料小冊子)」……業界の特殊な問題に関して、社内の専門家の知識やノウハウを整理し、それをまとめて小冊子をつくり、希望者に配布する仕組み。

これら情報提供はともすれば、自身の仕事を失うのではないかと心配される方もいるのだが、そうではない。出し惜しみなしの高いクオリティを無料情報としてオファーすると、必ずあとでリターンがあるといっても過言ではない。なぜなら人は、何かをもらうと機会があったときに返さなくては、という心理が働くのである。

心理学の世界で「返報性の法則」というものであり、これを活用するためにクオリティの高い「フリーインフォメーション」をレポートとして用意しておきPDF化しておく。それにパスワードをかけておき、「ダウンロードするためにはメールアドレスを残してください」と仕掛けしておく。随時レポートをアップしていきメールでお知らせすれば再訪を促せるし、信頼を獲得できると一石二鳥だ。またどんなレポートが人気かがわかるので、サービスを改善していく市場調査としての役割にも使えるのだ。


まとめ

筆者もコンサルタントであり、個人のブランドを構築していかなければならない立場である。実際に本稿で説明したテクニックは自らもさまざまな形で実践しているものばかりだ。さらに冒頭で申し上げたとおり、ほかの業種でのWebコンテンツに応用できることが多いのである。ぜひ参考にしていただきたい。

本記事は『Web STRATEGY』2007年9-10 vol.11からの転載です
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