米Appleは、10月28日に発表した2021年7~9月期決算で純利益が前年同期比62%増の205億5100万ドル(約2兆3千億円)となり、7~9月期の売上高、純利益ともに最高記録を更新しているが、その好調なAppleに対しEU(ヨーロッパ連合)が強力な包囲網を構築しつつある。
まず、iPhoneの独自規格として長く批判の対象になっているLightningポートだが、これに対しては、EUの執行機関・欧州委員会が、スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイス(電子機器類)について、充電規格をUSB Type-Cに統一することを義務付ける法案を提出している。
この法案が通れば、AppleはLightningポートのままのiPhoneやAirPods、iPod touchをEUの各国で売ることができなくなり、Androidスマートフォンと同じ、USB-Cポート搭載のiPhoneを開発しなければいけなくなる(毎年のように新型iPhoneはUSB-Cになるという噂はあるが)。
これに対しAppleは、iPhoneを始めAirPods、iPod touch、iPadなどは既に10億台以上のLightning対応デバイスが流通していて、充電器やケーブルといったアクセサリー全体のエコシステムがLightning対応で完結していると反論。
これをUSB-Cに変えるということは、アクセサリー製品の買い替えによって大量の電子廃棄物が発生し、さらには各社が同じ充電規格を用いることで技術革新を阻害すると主張している。
この法案が最速で効力を発揮するのは2024年半ばとされていて、Appleにはまだ数年の猶予があり、今後は全デバイスのUSB-C対応が図られるかもしれない。
また、AppleはiPhoneのアプリなどを自社サービスの公式サイトApp Storeを通してのみダウンロードできるようにしているが、EUではこれに対しても、デジタル市場法(デジタルマーケット法:DMA)として、App Store以外からのアプリのインストール(サイドローディング)を可能にするように法整備を進めている。
この動きに対しAppleはソフトウェアエンジニアリングの責任者クレイグ・フェデリギ氏をWeb Summit 2021カンファレンスに登壇させて反論。
外部からのダウンロードはセキュリティの安全性を破壊し、データを詐取するウイルスやスパイウェアが跳梁跋扈する「マルウェア界のゴールドラッシュ」が起こってしまうとし、また、とんでもない事態が起こることを示唆する「パンドラの箱を開けるようなもの」と、最大級に強い表現でサイドローディングへの対応に拒絶感を示している。
実際には、App Storeのみを経由するダウンロード方式はセキュリティがしっかりしているという側面はあるものの、他方ではアプリ開発者やサービス提供者はApple税と揶揄される15~30%もの高額な手数料をAppleに支払わなければならず、人気FPSゲーム「フォートナイト」の開発元Epic Games (エピックゲームズ)社はアップルを反トラスト法(独占禁止法)違反で訴えたように、Appleに対する反感は世界中の企業から噴出している。
本件は、開発者によるAppleに対する集団訴訟では和解、Epic Gamesらの連合との訴訟は係争中となっており、今後、AppleはApple税について既存のやり方を修正し、新しい収益システムの構築が必要になるだろう。
なお、日本では、Appleのシステムが独占禁止法に違反する疑いがあるとして公正取引委員会がApple社と協議を重ね、リーダー(閲覧)アプリと定義されるサブスクリプションサービスについては、自社Webサイトにユーザーを誘導し、Apple税を回避できるようにするというルール変更について合意している(ルール変更は2022年からを予定)。
リーダーアプリはデジタル版で発行されている新聞や雑誌、書籍、それにオーディオ、音楽、ビデオの購入済みコンテンツ、もしくはサブスクリプションコンテンツとなっていて、残念ながら「フォートナイト」のようなゲームアプリは含まれていない。
しかし、世界に先駆けて日本でApple税回避の道が作られたことで、今後は世界各国でアプリ内課金のすべての儲けが開発者の懐を潤すようになるかもしれない。
また、Appleが導入した、ユーザーの許可なしに異なるWEBやアプリをまたいでユーザーを追跡できないようにする、アプリトラッキング透明性(App Tracking Transparency:ATT)機能により、ユーザーの追跡が難しくなったFacebookはターゲティング広告の有効性が大きく低下し、80億ドル(約9000億円)もの損失が生じたとしている。
Facebookは社名をMeta(メタ)に変えて今後はメタバース(仮想空間)に注力するとしているが、広告で損をさせられたAppleとの対立姿勢も明確にしており、Facebookページのクリエイターに対し、30%ものApple税を回避する方法を近日中に提供開始すると発表。
その方法とは、決済をFacebook Payで支払えるようにユーザーをWebサイトへと誘導し、Apple税を支払わずに、すべての購読料がクリエイターの収入になるようにするとしている。
これは、企業は別サイトへと誘導するのはNGだが、ユーザーがクリエイター個人に購読料を支払うのは禁止していないという、Appleの規定の抜け穴を活用したものとなっている。
以上のように、巨大テック企業の宿命とはいえ、欧州とアメリカで国家や企業との対立の構図ができあがってしまったAppleは、今後、難しい舵取りを強いられるだろう。
silicon
URL:https://www.silicon.co.uk/mobility/mobile-apps/apple-eu-dma-pandoras-box-425451
THE VERGE
URL:https://www.theverge.com/2021/11/3/22761620/facebook-apple-app-store-fees-subscription-links-creators
2021/11/08