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最新アート&デザイン情報

2023.10.24 Tue

中銀カプセルタワービルを松竹が再活用!新たなアートスペース「SHUTL」が東銀座に

取材・文:星久美子 画像提供:松竹

SHUTL外観(撮影:archipicture 遠山 功太 提供:松竹)

季節も移ろい、今年も芸術の秋がやってきました。編集部がこの秋注目するアートスポットは、2023年10月7日に東銀座にオープンしたばかりのアートスペース「SHUTL(シャトル)」。2022年に解体された黒川紀章の名建築「中銀カプセルタワービル」の一部を再活用し、伝統と現代の新たな接続方法を生み出す実験的なスペースです。オープンに先立ってメディア向けの内覧会にお邪魔してきました。

名建築「中銀カプセルタワービル」のカプセルを再利用

歌舞伎座や新橋演舞場などが位置し、伝統文化が息づく街・東銀座に新たなアートスポットがオープンしました。その名は「SHUTL」。歌舞伎や映画配給で知られる松竹が運営する新スペースで、スケルトンの外観から見える大きなふたつのカプセルは、かつて銀座8丁目にあった建築家・黒川紀章の代表作「中銀カプセルタワービル」の一部なんです。

広報の松本さんに伺うとシャトルには「宇宙に放たれる飛行体の「シャトル」、離れた土地をつなぐ往復便の「シャトル」、織物において縦糸と横糸をつなぐ杼(ひ)の「シャトル」をモチーフに、現代の表現者が日本文化と出会い直し、自らの表現と伝統を結びつけることで、「未来のオーセンティック」を生み出す実験場・ラボになる」という意味が込められているのだとか。

中銀カプセルタワービル(提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト)

1972年に竣工した「中銀カプセルタワービル」は、2本の主柱に140個のカプセル型居住空間が取り付けられた集合住宅。1960年代、高度経済成長を遂げる日本において、生き物が新陳代謝して変化・成長するように、建築も新陳代謝(メタボリズム)するという概念から生まれた建築運動「メタボリズム」を代表する作品のひとつとなっています。

建物の完成当初、生き物の細胞が生まれ変わるように、カプセルは古くなったら一基ずつリプレイスすることを想定していました。しかし実際には一部のカプセルが交換困難だったことなどから交換は実施されず、老朽化により2022年に惜しまれつつ解体。解体工事の際、松竹はオリジナルの内装を保持した状態のカプセルと、内装を取り払ったスケルトン状態のカプセルを取得し、保管をしていたのだそう。

「東劇ビルに本社を構える東銀座エリアを日本文化の発信拠点にしようとしていた松竹は、新しく始めるスペースのキーとして、東劇ビルと同時代である1975年竣工で近郊エリアを代表する建築物の中銀カプセルタワービルのカプセルを取得しました。古い建物をただ保存するのではなく、地域の中で過去から未来にかけて継続して文化の醸成に寄与し続けてきた松竹だからこそできるカプセルの活用法があると思い、保存・再生プロジェクト様にコンタクトさせて頂きました。」と松竹株式会社不動産本部の藤井さんと山﨑さん。

今回、「日本文化の伝統を継承、発展させ、世界文化に貢献する」という松竹グループのミッションのもと、東銀座エリアを日本文化の発信拠点として発展させるべく実験的な取り組みとして、歴史的建築物に新たな命が吹き込まれました。

撮影:archipicture 遠山 功太 提供:松竹

こちらはオリジナル・カプセルの内部。当初はビジネスマンのセカンドハウス/オフィスとして構想された8.5㎡のコンパクトな住居空間でした。備え付けのベッドやテレビ、ダイヤル式の電話なども竣工当時の姿に修復されています。

撮影:archipicture 遠山 功太 提供:松竹

こちらは解体したカプセルの姿を残したスケルトン・カプセル。生々しい壁面塗装と剥き出しの鉄骨に囲まれた、わずか10㎡のミニマルな空間が広がっています。

伝統と現代の新たな接続方法を生み出す“実験場”に

SHUTLが目指すのは、現代の表現者が日本文化と出会い直し、自らの表現と伝統を結びつけることにより、新たな表現方法を模索することのできる、開かれた創造活動の実験場(ラボ)。自主企画の展示を開催するほか、アーティスト・クリエイターの表現の場としてのレンタルスペースとしても開放します。カプセル1基から借りることができ、憧れの名建築に自分の作品を展示することも可能です。

「SHUTLのスペースレンタルを検討していただいているクリエイターの皆さんへは、ここでしかできない表現をやっていただきたいと考えています。実際にカプセルを使って企画を行う経験はなかなかない機会だと思いますので。様々な条件にあわせて、私含めSHUTLチームで誠心誠意サポートできればと思います」とスペースマネージャーの黒田さん。

撮影:archipicture 遠山 功太 提供:松竹

「FREEDOM SPACE」と名付けられた2基のカプセルの間に位置するスペースは、美術品の展示・販売や映像上映、パフォーマンス、ワークショップなどの活用を想定。建築にとどまらず、デザインや工芸、ファッション、アート、映画や舞台芸術など、ジャンルレスな表現の舞台として活用できます。

空間には自然光が差し込み、ギャラリーと東銀座の街とがシームレスにつながっている印象を受けました。駅からのアクセスもよく、ふらっと気軽に立ち寄れるアートスポットとして親しまれそうです。スペースマネージャーの黒田さんは、「SHUTLは様々なモノ・コトの実験場をコンセプトとした場所ですので、SHUTLがお客様にとって何かと初めて出会うきっかけをつくる場になれたらと思っています。自主企画でもレンタルでも、ここでしか出会えないコンテンツに注目し楽しんでいただけたらと考えています」  とのこと。

撮影:archipicture 遠山 功太 提供:松竹

また、敷地内に位置する「OUTER SPACE」は、ライブペインティングやDJイベントなどにも活用できそう。

かつて居住空間だったカプセルは、現代の作家によって新解釈される表現の場に。これからさまざまなアーティストとのコラボレーションによって、既成概念にとらわれない自由な表現が広がっていきそうです。

オープニング展は「伝統のメタボリズム〜言葉と文字〜」

そんなSHUTLのオープニングを飾る自主企画展示第1弾は、コミュニケーションやアーカイブにおける基本要素である「言葉」と「文字」の輪郭と変化に着目した「伝統のメタボリズム〜言葉と文字〜」展。

最果タヒ+佐々木俊《詩の波紋と共鳴》(2023) 撮影:山根かおり

他者と繋がり、生活するうえで不可欠な要素である「言葉」と「文字」が、これからどのような変化を遂げていくのか。そして未来のオーセンティックとなり得る新しいコミュニケーション手段がどのように出現していくのか。といった問いから、現在形の「言葉」と「文字」のありようを見つめ、伝統が更新される予感を可視化する展示です。

参加アーティストは、デジタルネイティブ世代の詩人として現代詩手帖賞・中原中也賞等を受賞し、詩という表現ジャンルで多彩な活動を展開する最果タヒさんと、最果タヒさんの装丁をはじめ、広告、展示デザインなどを手がけるアートディレクター・佐々木俊さん(画像左)。


2010年からSNS上で匿名のアーティストとして活動し、泣き笑いの絵文字を用いた代表作《The Laughing Man》(画像左)をはじめ、さまざまなメディアを駆使したコンセプチュアルアートで国内外から注目を集める松田将英さん。

最後にSHUTLのロゴデザインをはじめ、関西から日本のみならず世界にその存在感を発揮している新進気鋭のデザイナー三重野龍(画像右)さん。これら3組のアーティストが、今回のテーマに応答した作品を発表します。

週末のお出かけは、伝統と現代アートの新たな出会いに思いを巡らせてみませんか? 

SHUTL(シャトル)

住所:東京都中央区築地4-1-8(東劇ビル隣)
アクセス:東京メトロ「東銀座駅」5出口・徒歩3分、東京メトロ「築地駅」2出口・徒歩4分
問い合わせ先:03-5550-1567
公式サイト:https://shutl.shochiku.co.jp/
Instagram:@shutl_shochiku
Facebook:@shutl.shochiku
X(旧Twitter):@shutl_shochiku

展覧会 DATA

SHUTLオープニング展示シリーズ 第1期「伝統のメタボリズム〜言葉と文字〜」
出展作家:最果タヒ+佐々木俊、松田将英、三重野龍
会期:2023年10月13日(金)~11月5日(日)
開廊:13:00〜19:00(月・木・金・土・日・祝)
休廊:火・水
入場料:無料
※展示・イベント最終日は17時まで
※企画内容によって時間変更あり
※年末年始はCLOSE
※施設メンテナンス等で臨時休廊あり
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