欅坂46の元メンバーであり、武蔵野美術大学を卒業された佐藤詩織さんが“クリエイティブな人・コト・モノ”に出会う人気の連載企画。第5回目となる今回は、東京・神保町のカメラショップ「Lomography+(ロモグラフィー プラス)」へ。雑居ビルの2階に位置し、まるで秘密の隠れ家のような雰囲気のお店のドアを開けると、フィルムカメラや壁に貼られた写真の鮮やかな色彩が次々と目に飛び込んできます。日頃からビンテージのフィルムカメラで写真撮影を楽しんでいるという佐藤さんは、お店に足を踏み入れるなり大興奮! ストアのマネジメントを担当する関谷幸汰さんとフィルムの魅力について語り合い、指導を受けながらロモグラフィーのカメラでの撮影を楽しみました。
多重露光を初めて実践。驚きの仕上がりに盛り上がる!
関谷 では、撮影に挑戦してみましょう。ロモグラフィーのカメラの特性を引き出すためには、とにかく“楽しんで撮っていただくこと”だと思っています。ですから、まずは少し変わった撮影方法として「多重露光」に挑戦してみませんか? 同じフィルムに何度か露光をすることで画像の重なりが楽しめる撮影方法です。
佐藤 多重露光にチャレンジするのは初めて。ドキドキします。使用するのはこのインスタントカメラですか?
関谷 そうです。カメラのレンズを半月型の蓋で覆います。蓋はくるくると回る機構になっているので、まずはレンズの右半分を隠して一度ご自分を撮影して、次に左半分を隠してもう一度撮影してみてください。佐藤さんが2人いる写真ができあがりますよ。三脚を立てて、リモコンで撮影してみましょうか。
佐藤 難しそうですが、とにかくやってみますね。まずはファインダーを覗いた時に右半分にあたる場所に立って撮影しますね。えいっ。次は左に立って……シャッタを切ります。終わったらこの現像ボタンを押す……と。写真が出てきました。んんっ!? わあっ! すごい! すごすぎる!
関谷 綺麗に撮影できましたね! 蓋の形によっては4分割もできるので、上下左右で違うショットを一枚に収めることも可能です。ロモグラフィーのカメラには、多重露光のほかにも、フィルターをつけたりすることで特殊な撮影方法が可能なものがたくさんあるので、ぜひ試してみましょう。どれか気になるものはありますか?
佐藤 正直どれも気になるものだらけで悩んでしまいます。おすすめのカメラはありますか?
関谷 先ほど見た目が好きだとおっしゃっていた「LomoApparat」は、ピントなどを気にする必要がなく操作が簡単で、フィルムカメラ初心者にもおすすめの一台です。それから、この「Lomo LC-A+」は、ロモグラフィー創設のきっかけとなったカメラを模して作られた「LC-A」というカメラの系譜でブランドを象徴するものですね。
佐藤 なるほど。ロモを代表する2台ということですね。それはぜひ使ってみたいです!
関谷 いいですね。今日はせっかく晴れていますので、このお店の近くの神田すずらん通り商店街や古書店街方面に出かけてみましょうか。
フィルムカメラでの撮影三か条は、距離・指・フラッシュ
佐藤 素敵な雰囲気のエリアですね。ロモグラフィーのカメラで撮影するにあたって、注意点などはありますか?
関谷 ピントの調整が必要なカメラは、被写体までの距離をご自分で判断してレバーを動かすようにしてくださいね。撮影時の注意としては、レンズに指がかからないようにすること。レンズ付きのカメラの場合、ファインダーから見える景色はレンズが捉える景色と一致していないので、ファインダーからは確認できません。意識して気をつけるようにしましょう。それから日陰を撮影する場合、目で見えている以上に暗く映るので、フラッシュを使うようにするといいと思います。どれも初歩的なことですが、案外忘れがちなポイントです。
佐藤 今日はとてもよく晴れていますが、こんなに明るい日でもフラッシュが必要なんですか?
関谷 例えば、目の前のお店の軒先のテント屋根は下に影ができていますが、今カメラに入れているISO感度(※)が400のフィルムの場合には、何が写っているのか分かりにくくなるかもしれません。はっきり写したい場合や、判断に迷うときはフラッシュ撮影をするといいですね。とはいえ、楽しんで撮っていただけたらそれが一番だと思います。
佐藤 確かに、失敗したと思っても、ロモグラフィーのフィルムなら味わい深くなりそうですもんね! 一体どんな仕上がりになるんだろう……!
※ISO感度とは、フィルムの感光度を数値で表したもの。数値が高いほど、暗いシーンでも撮影に適している。400は中間あたりの数値で汎用性が高い
ロモを通じて、フィルムの新たな魅力に出会った一日
関谷 たくさん撮影しましたね! 今日はいかがでしたか。
佐藤 ロモのカメラやフィルムにはいろんな仕掛けがついて、加工しなくてもおしゃれな写真を撮れることがとっても新しいなって感じました。フィルムカメラを触ったことがない若い世代の人でも興味を持ちやすい楽しいカメラだと思います。
関谷 ありがとうございます。仕上がりが楽しみですね。いろいろなカメラを使ってみましたけれど、どれが印象深かったでしょうか?
佐藤 多重露光にはとにかく驚きました! 発想次第でいろんな面白い写真にできるんじゃないかなって思います。でもそれ以外もどれもほんとうに興味深くて……。今日はフィルムカメラの新しい一面を見た気がしました。フィルムの楽しさは知っていたつもりですが、こんな“今っぽい”加工ができる仕掛けがついていたら、なんかもう……“無敵”じゃんって思いました! ますますフィルムカメラのことが好きになってしまいます……!
関谷 それはよかった。メーカーとしてとても嬉しいお言葉です。今日撮影したフィルムはこのあと現像に出しますが、受け取り時に現像写真と一緒にもらう「ネガフィルム」は必ず保管しておいてくださいね。若い方でフィルムカメラを始める方が増えてきたのですが、データしか受け取らない方が多いみたいなんです。ネガさえあればいつでもデータ化し直したりプリントできますし、それがフィルムカメラの楽しみの一つですから、保管しておいていただけたらメーカーとしてとても嬉しい限りです。
佐藤 そうなんですね、わかりました。今日はありがとうございました!
フォトギャラリー
今回、ロモグラフィーのカメラで使用したカメラとフィルムを紹介します! 参考にしてみてください。
■カメラ/Lomo LC-A+ 35 mm Film Camera
■フィルム/2021 LomoChrome Metropolis 35mm ISO 100–400
※撮影時はISO感度を400で設定
■カメラ/LomoKinoムービーカメラ
■フィルム/LomoChrome Color ’92 35mm ISO400
■カメラ/LomoApparat 21mm
■フィルム/LomoChrome Turquoise 35mm ISO 100–400
■カメラ/Lomo’Instant Automat Camera Sundae Kids Edition
■フィルム/Fujifilm Instax Miniフィルム
Lomography+ / SHOP DATA
オーストリアに本社を置くフィルムカメラブランド「Lomography(ロモグラフィー)」による、世界で唯一の直営店。同社オリジナルのフィルムカメラやフィルム、インスタントカメラやレンズなどが所狭しと並ぶ店内は、ファンならずとも興奮必須の濃密空間。
営業日の月曜日には、ロモグラフィーで撮影を楽しむ“ロモグラファー”が日本各地のみならず、外国からも来店するとか。各種商品はインターネットでも購入できるが、店舗では、カメラやレンズを実際に手に取って使用感を確かめることができる点が嬉しい。また、定期的にワークショップを開催しているそうなので、興味のある人は公式サイトやSNSをチェックしてみて。
DATA
店舗名 | Lomography+(ロモグラフィー プラス) |
住所 | 東京都千代田区神田小川町3-16-1 共和神田ビル2F |
営業時間 | 12:00~18:00 |
定休日 | 不定休(営業日カレンダーをご確認ください) |
アクセス | 都営新宿線・都営三田線・半蔵門線「神保町駅」A5出口より徒歩4分 |
問い合わせ | help@lomography.jp |
公式サイト | https://www.lomography.jp/ |
プロフィール
- 関谷幸汰
- ロモジャパン オンラインマーケティング 兼 Lomography+マネジメント担当
- 現在25歳。株式会社ロモジャパン オンラインマーケティングを担当し、ECサイトの運営や「Lomography+」のマネジメントも兼任。カナダへ短期大学留学後、東京・三軒茶屋のテンプル大学 アート学科専攻へ編入。同校在学中に「Lomography+」(当時は秋葉原エリア)に勤務し、翌年から現職。フィルムカメラは常時携帯しているため、夜の撮影にも使えるフィルム「Color Negative」がお気に入り。
2023.08.24 Thu