[Column]
カイシトモヤさんに聞く、印刷スキルを高めるコツ 紙+インキで失敗しないために“印刷の練習”をしよう
紙、インキ、製版処理等、さまざまなアプローチで色に変化を与えるカイシさん。学ぶ機会の少ない製版・印刷スキルをこれから身につけるにはどうしたらいいのでしょうか。カイシさんに聞きました。
▶︎ 自主制作で “印刷の練習” を
「どの紙にどう印刷したらどういう結果になるのか。その経験を積むには、自主制作をするのが一番いいと思います。 いまのネット印刷は用紙もたくさん選べるので、いろいろな紙で印刷をして、用紙ごとに印刷適性を試してみることです。あとは依頼できるところは限られてしまいますが、僕と同じように校正機を持っている印刷会社さんにお願いをする、UV インキやインクジェット印刷も機会があるならまず試してみる……機会を逃さず、そうした経験を積むことが大事だと思います」 自主制作とはつまり、クライアントは自分自身。自らテーマを決め、デザインし、印刷物として発注することになります。「自腹だとやはり重みが違うんですよね。
失敗も成功も、その経験は自分に返ってきます。仕事では当たり前のことですが、“この紙を使ってみたい”、“このインキを使ってみたい” と思っても、それがクライアントワークなら、印刷にかかるコストは相手のお金なんです。 いま思い返しても胸が痛いんですけど、印刷経験がない時代、“こういう印刷をしてみたい” という自分の欲望に負けた結果、思ったような印刷に仕上がらないことがあったんです。そのとき、被害を受けるのはクライアントなんですよね。それからは、印刷も事前に練習しておくことが大事だと考えるようになりました」
▶︎ 本番で失敗しないために
「プロ野球にたとえると、練習せずに“公式戦で経験積めばいい“なんて誰も言いませんよね。デザイナーに置き換えると、試し たこともない印刷をクライアントワークの本番でやるのは、“公式戦で練習しよう”って言っているようなものなんです。 製版も印刷もそうそう練習できるものではありませんが、自主制作を通して、練習をしておくことは、デザイナーとしてすごく重要だと思います」
▶︎ 印刷会社はものづくりの仲間
印刷会社と印刷物をつくりあげるなかで、カイシさんが大事にしていることがもうひとつあります。 「印刷会社に敬意を持つことです。自分たちの設計したものを、かたちにしてくれるのは印刷会社の方たちです。まず、その方々に敬意を持たないといけない。クライアントの声を聞いてコミュニケーションとして反映させるように、印刷会社に対しても丁寧にディレクションをすることが大切です。印刷会社は一緒にものづくりをする仲間ですから。 入稿するときも“これでデザイナーの仕事は終わり” と考えるのではなく、“バトンを渡した” と捉えることができれば、バトンを受け取る側が不満を感じないようにデータのつくりかた、受け渡しかたも変わってくる。そう思っています」
おしえてカイシ先生!
デザイン賞の受賞作を見ているとアートのような作品も見かけます。
アートとデザインの違いはどこにあるのでしょう?デザイン賞は新しい表現を開拓する、いわば基礎研究。
その積み重ねが、次世代のあたらしい表現へとつながっていく。
デザイン賞の年鑑には街中で見慣れないような、奇抜で情報が伝わりにくいものを見かけることがあります。こういった一見難解な作品がなぜ評価を受けているのか、不思議に思う人もいるはずです。
賞で強く評価される基準に「新しいかどうか(新規性)」が挙げられます。デザインの活動も科学分野のように、基礎研究と応用研究に分けられます。基礎研究は新しく理論を探求していくこと、応用研究は基礎研究で得られた知見を、社会に活用していくことを指します。
グラフィックデザインでは新しい表現を開拓していくことが、基礎研究の大きな題目となっています。基礎研究で開拓された表現様式(賞で見かけた表現)は、時間を置いていずれわかりやすく翻訳され、応用研究=実用的な広告・パッケージなどに反映されていきます。そのうちいくつかは“ 街でよく見るトレンド表現” に変わるかもしれません。
絵画はもともと宗教の道具として発達し、富裕層の肖像画など実用を経て、純粋に表現の開拓を目指すファインアートへ発展していきました。写真も記録が主目的でしたが、いまは芸術表現としても成熟しています。プロダクトデザインの名作椅子は美術館の収蔵作品になり、グラフィックデザインも著名なポスターが美術品としてコレクションされるようになりました。
デザインもアートもその成果物ではなく、私たちの受け止めかた、またそれを受容する社会のありかたによって、解釈される姿が大きく変わっていきます。
アートやデザインがどのように社会で機能するのか、どのような体験を人々にもたらすのか。それぞれの役割をていねいに考えていけば、そこに大きな定義の差を求めなくてもよいのではと考えています。
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2025.01.14 Tue