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第3回 Webアクセシビリティのガイドライン


Webサイトのアクセシビリティを高めるためには、(X)HTMLの仕様に忠実なページを作成することが必要です。さらに、今回紹介するガイドラインに準拠することで、支援技術の利用者を含めたサイトのユーザーに、伝えたい情報をより効率よく伝達することができます。

(解説:辻 勝利)


[プロフィール]
つじ・かつとし●株式会社ミツエーリンクス アクセシビリティ・エンジニア。先天性の全盲で、インターネットをライフラインとして日常的に使用する。2001年よりWebアクセシビリティに関わる仕事に従事し、数多くの企業や自治体のWebサイトの音声読み上げ環境での検証を行う。現在は、アクセシビリティBlogでの情報発信や講演を通して、Webアクセシビリティの更なる普及・啓蒙活動を行っている。


ガイドラインと対応状況の変化


1999年5月にW3C(World Wide Web Consortium)の「WCAG(Web Content Accessibility Guidelines) 1.0」が勧告文書として公開されてから、Webアクセシビリティを高めようという動きは徐々に世界中で活発になってきました。

なかでも、大手企業が自社サイトのWebアクセシビリティを向上させるため、積極的にガイドラインに準拠したり、独自のガイドラインを作成したりと、Webアクセシビリティについての意識が高まったことは大きな進歩でした。

その後、我が国では2004年6月に「JIS X 8341-3」が公開され、それまであまりWebアクセシビリティに積極的ではなかった自治体サイトのアクセシビリティ対応が加速しました。

さらに、2006年4月にはW3Cの「WCAG 2.0」の最終草案が公開され、現在勧告に向けて調整が行われています。

また、このほかにも各国には独自のWebアクセシビリティに関するガイドラインがあります。Webサイトを構築する際、アクセシビリティに対応するにはどのガイドラインに準拠したらよいのかを検討する必要があるでしょう。

それぞれのガイドラインの特徴


上記のように、さまざまなWebアクセシビリティのガイドラインがありますが、ここで、それぞれのガイドラインにどのような特徴があるか、紹介しましょう。

WCAG 1.0

このガイドラインは、Webアクセシビリティを実装する上で対応すべき14の項目から構成されています。なかでも「音声や画像を含むコンテンツには、代替手段を提供しなければならない」という項目は有名です。

画像に代替テキストが設定されていないページは視覚障害者にとってアクセスしづらいものですし、音声のみで情報提供を行っているページは聴覚障害者にとって情報入手が困難なものです。

代替テキストが設定されていないページをLynxで表示したもの
2つのバナーに代替テキストが設定されておらず、テキストブラウザで表示させた際、何のバナーなのかわからない

JIS X 8341-3

次に2004年6月に、我が国初のWebアクセシビリティに関する規格として公布されたJIS X 8341-3ですが、上記WCAG 1.0の項目を網羅しつつ、日本語に固有の問題についても言及されている点が特徴です。

例えば、画面レイアウトを整えるために、単語中にスペースを用いて文字と文字の間隔を調整している場合があります。この場合、スクリーン・リーダーや音声ブラウザによっては正しい読上げができないため、CSS(Cascading Style Sheets)を用いてレイアウトを行うことが求められています。

都道府県一覧で、画面上の表示を統一するために単語中にスペースを入れて表現した例
都道府県名の漢字と漢字の間にスペースを入れているため、別々の単語として読み上げられてしまう

WCAG 2.0最終草案(2006年4月27日付)

現在W3Cによって、勧告に向けた作業が続けられているのがWCAG 2.0です。

WCAG 2.0は、支援技術などの特定の技術に依存しておらず、(X)HTMLのような現在利用可能な技術と合わせて、策定が進められているCSS3のような技術やFlashやPDFなどのW3C以外で開発された技術についても対応できるようになります。

さらに、WCAG 1.0では準拠しているかどうかを明確に判断できなかったガイドライン項目についても、具体的な基準を設けることで準拠しているかどうかのテストが可能になります。

例えば、WCAG 1.0のガイドライン項目に次のようなものがあります。

「2.2 前景色と背景色の組み合わせは、色の識別が困難な人やモノクロ画面を使用している人などに対しても十分なコントラストを与えるようなものにする。」

これは、WCAG 2.0では次のように変更されます。

「WCAG 2.0 達成基準 1.4.1
テキストあるいはダイアグラムとそれらの背景は、少なくとも5:1の輝度コントラスト比を保つこと」

今回はWebアクセシビリティに関するガイドラインとその特徴について解説しました。アクセシビリティ対応を謳っているWebサイトの中には、ガイドライン項目を重視するあまり、利用者の使い勝手について軽視されているケースも少なくありません。Web制作に取り組む方には、ガイドライン項目への対応と共に、利用者の使い勝手についても十分検討してほしいと思います。

次回は、Webアクセシビリティの現状についてお伝えします。


次回につづく
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