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第11回 自動再生される音声の問題点


Webサイトで情報を魅力的に表現する方法のひとつに、音声の再生があります。一押し商品を動画と音声の両方で紹介したり、BGMを繰り返し再生しているWebサイトもあります。訪れた利用者にそのWebサイトの魅力を伝えるために、音声を自動再生して聞かせるというのはひとつの手段かもしれません。しかし同時に、Webアクセシビリティの実践という点からいえば、十分に注意しなければならない項目でもあります。今回は、自動再生される音声が、利用者にとってどのような問題になるかを考えていきます。

(解説:辻 勝利)

著者近影
[プロフィール]
つじ・かつとし●株式会社ミツエーリンクス アクセシビリティ・エンジニア。先天性の全盲で、インターネットをライフラインとして日常的に使用する。2001年よりWebアクセシビリティに関わる仕事に従事し、数多くの企業や自治体のWebサイトの音声読み上げ環境での検証を行う。現在は、アクセシビリティBlogでの情報発信や講演を通して、Webアクセシビリティの更なる普及・啓蒙活動を行っている。


Webアクセシビリティ上の問題


筆者をはじめとするスクリーン・リーダーや音声ブラウザの利用者にとって、Webサイトにアクセスすると自動的に再生される音声は、コンテンツの表現方法以上の大きな影響を与えます。このような音声は、スクリーン・リーダーなどが画面を読み上げる音声と同時に再生され、読み上げ音声を上回るようなボリュームで聞こえてくることもあるからです。読み上げ音声が聞こえなくなり、場合によってはそれ以降の操作ができなくなってしまった結果、ウィンドウを閉じなければならないケースもあります。

架空のWebサイト「www.webaccessibility.inc」にスクリーン・リーダーのJAWSを使用してアクセス。ページの読み上げが開始されると程なく、Webサイト上のBGMが再生される。初めのうちはなんとか読み上げ音声を聞くこともできるが、最終的に音楽のボリュームが大きくなり、読み上げ音声が聞こえなくなってしまう

Webサイトの中には、自動再生されている音声を停止したりボリュームを調整できるボタンを配置しているものもありますが、読み上げ音声と自動再生の音声が同時に聞こえてしまうと、それらのボタンを探すことすらできないようなときがあるのです。音声が自動的に再生されるページでは、目的の情報を探すための作業効率が著しく低下すると言っても過言ではありません。

また、聴覚障害をもつ利用者は、音声が再生されていること自体を知ることができません。Webサイトによってはスピーカーのアイコンなどを用いて、音声が自動再生されていることを表示している例もありますが、音声に気がつかないことで、たとえばオフィスなどの大きなボリュームで音を再生すべきでない環境では、問題になる場合もあります。もし重要な情報が自動再生される音声だけで提供されているとすれば、聴覚障害者や音を出さない設定でWebサイトにアクセスしている利用者には、情報が伝わらない可能性もあるのです。

音声の自動再生はすべきでないのか


上記の例から考えますと、理想的には音声の自動再生はすべきでないといえるでしょう。ただ、コンテンツをより魅力的に表現するための手段のひとつであるからには、絶対に使用しないというのは現実的ではないでしょう。それでは、どうすれば自動再生される音声を含んだコンテンツが、多くの利用者にとって使いやすいものになるのでしょうか?

まず、自動再生の音声は、可能な限り利用者の意思で聞く/聞かないを選択できるようにすべきです。

具体的な方法としては、ページが表示されてから3秒程度音声を再生し、そこで停止するようにします。利用者自身が音声の再生を希望するのであれば、再生ボタンなどを利用して続きが再生できる仕組みを提供すれば、根本的な解決にはならないものの、情報を発信する側と利用者双方にとって、より理想的なWebサイトになるでしょう。

ひとりでも多くの利用者がWebサイトを快適に閲覧できるよう、音声を自動的に再生させる場合には、なぜそれが必要なのか、自動再生させる以外に音声コンテンツを提供する手段がないのかについても、十分に検討してください。


次回につづく
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