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第14回 画像認証とWebアクセシビリティ


コンピュータと人間を区別するための自動化された認証方式「CAPTCHA 」(キャプチャ)は、Webサイトのセキュリティを高めるための有効な技術です。別名「画像認証」とも呼ばれるこの技術ですが、同時に、Webアクセシビリティの面から考えると大きな課題を含んでいます。

今回は、このCAPTCHAの問題点を解説しながら、Webアクセシビリティを高めつつCAPTCHAを実装していくにはどのような方法があるのかをご紹介します。

(解説:辻 勝利)

著者近影
[プロフィール]
つじ・かつとし●株式会社ミツエーリンクス アクセシビリティ・エンジニア。先天性の全盲で、インターネットをライフラインとして日常的に使用する。2001年よりWebアクセシビリティに関わる仕事に従事し、数多くの企業や自治体のWebサイトの音声読み上げ環境での検証を行う。現在は、アクセシビリティBlogでの情報発信や講演を通して、Webアクセシビリティの更なる普及・啓蒙活動を行っている。


CAPTCHAとは


CAPTCHAは「Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart」の頭文字をとったもので、Webサイトで何らかの情報を送信しようとしているのが、人なのかコンピュータなのかを判断するためのテストを自動的に行う技術です。

主として、ユーザー登録や商品購入、Blogや掲示板への書き込みなどが、「人」によって行われようとしているのか、あるいは「悪意のあるコンピュータプログラム」による不正なものかを判断する目的で用いられています。

一般的なCAPTCHAは、画面上に歪曲したり、覆い隠したような文字や数字の画像を表示し、その文字や数字を利用者に視覚で判別させた上でキーボードから入力させることで、情報を送信しようとしているのが「人」なのか「コンピュータ」なのかを判断します。

CAPTCHAを利用することで、アカウントの不正取得や、無作為に掲示板に書き込まれるSpamメッセージを防ぐことができるため、セキュリティ面で有効な技術とされています。

Webアクセシビリティ上の問題


CAPTCHAは「人」と「コンピュータ」の違いを判断し、コンピュータによるWebサイトでの不正な操作を規制する有効な技術です。しかし、この技術はWebアクセシビリティの側面から捉えた場合、大きな課題を残しています。

本連載の第2回にあるように、スクリーン・リーダーや音声ブラウザのような、筆者をはじめとした視覚障害者が使用している支援技術は、Webサイトのテキスト情報を音声や点字に変換して利用者に伝えるコンピュータ上のソフトウェアです。

一方、CAPTCHAに記載されているのは文字(数字)情報ですが、支援技術には画像としては認識されるものの、テキスト情報ではないため、内容を利用者に伝えることはできません。そのため、利用者は「人」であるにも関わらず、「人」なら通過できるはずの画像認証を通過できないという問題が起きます。

筆者にも、Webサイトのユーザー登録ページで入力フォームにすべて情報を記入し終えたあとや、ショッピングサイトでバスケットに目的の商品を入れて注文画面に進もうとしたときなど、重要な局面でこのCAPTCHAに悩まされた経験があります。結局、そこから先に処理を進めることができず、作業を断念しました。

入力フォームに表示されたCAPTCHAの例
画面上の6個の英数字は画像としてスクリーン・リーダーに認識されるため、内容を利用者に伝えることができない

現在取り組まれているアクセシビリティ対応


このように支援技術利用者には利用が困難なCAPTCHAですが、完璧とはいえないまでも解決策は存在します。画面に表示されている画像の代わりに、音声で情報 を提供するという方法です。

すでに、Googleのアカウント作成ページやHotmailの新規登録ページなど、一部の Webサイトでは、ユーザー登録やBlogへの投稿・コメントの書き込みなどに、この音声によるCAPTCHAの技術が実装され、筆者をはじめとした視覚障害者のコンピュータ利用者に活用されています。

しかし、音声を用いた認証方法では、視覚と聴覚の両方に障害のあるコンピュータ利用者には、その認証を通過するのは困難という問題が依然としてあります。

また、このほかにも画像を使った認証ではなく、数値計算などの簡単な質問を利用者に行い、その結果が正しければ「人」であると判断するような認証方式も研究されています。

ただ、残念ながら現時点では、誰にとっても利用可能な完璧なCAPTCHAは存在しません。上記の計算結果を問うような認証方式では、認知障害者にとっては利用しづらいものとなる可能性があるからです。そこで現在想像しえる解決策として、ユーザー自身がどのCAPTCHAを利用するかを選べるようなWebサイトが必要なのではないでしょうか。

Webサイトのセキュリティを高めるということはもちろん重要なことですが、その結果Webサイトにアクセスしようとしている人までも排除してしまわないよう、コンテンツ提供者の方は新たな技術を採用する際、十分に検討してください。


次回につづく
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