
第4回 万能のユーザビリティは存在しない
Webユーザビリティの理想形について聞かれることがあります。しかし、すべての人のすべての目的を完全に満たす手法はありません。たとえば、初心者やシニア向けにわかりやすくしようとすると、上級者には冗長になる場合があります。また、サイトを最初に使う場合と、何度も使う場合など、使用頻度によっても求められるものが異なります。このため、サイトの目的やユーザー層を考慮し、そのWebサイトごとに最適なユーザビリティのカタチを考えることが重要になります。
(解説:石田優子)
サイトの目的を長期的に考える
通常、ひとつのサイトには複数の目的があります。大規模な企業サイトの場合など、製品情報提供、投資家向けの情報提供、リクルーティング、オンラインショッピング、オンラインサポートなど、目的は多岐にわたります。
このようなときは、現時点では何に注力したいのか、今後は何を伸ばしていきたいのかといった、サイトの短期、長期の目的と戦略をあらかじめ検討しておくことも重要です。いったんサイト構造や導線を設計してしまうと、後でそれを根本的に見直すことが難しくなります。CMSなどを導入してしまうとなおさらです。
よく深い階層に入ると迷路のようでナビゲーションに一貫性がないサイトがあるのですが、これは業務拡大とともに建て増しを重ねた店舗と似ています。通常、サイトのコンテンツは時間がたつに連れて増え、規模拡張していくわけですから、拡張の方向性とスケジュールを初期段階から考慮するとともに、ユーザーの反応などに合わせて臨機応変な対応がとられるような柔軟性のある設計が求められます。

ナビゲーションに一貫性がなく、深い階層に入ると迷路のような構造になっているサイトは、建て増しを重ねた店舗がわかりにくい建築構造になっているようなもの
目先にだけにとらわれず、将来像まで含めて、そのサイト全体の目的を考える必要があるでしょう。
短期限定サイトの場合
目的が多岐にわたるサイトの場合は、先に述べたような理由で、後からナビゲーションやメニュー構成を変更しにくいようなデザインに振り切ったサイト、たとえばフルフラッシュの採用などは難しくなります。オンラインショッピングサイトのように、目的がひとつでも、取扱商品のカテゴリや業種が増える可能性が高い場合も、同様に後付けのしやすさが求められます。
その一方、短期のプロモーションサイトなどは、話題性、新規性を打ち出した、実験的な試みやデザインも可能です。フルフラッシュや動画を使うと検索エンジンでヒットしにくいので、長期運用するサイトの場合は注意が必要ですが、短期限定サイトならば、それも問題になりません。デザイナーとしては腕のふるいやすい分野でしょう。
しかし、はじめてそのサイトを閲覧するユーザーが多いことを考えると、直感的な操作のしやすさと内容把握のしやすさは、むしろ通常のサイトよりも重要になります。
特にテキストリンクを使わない画像主体のページなどでは、どこをクリックできるのかを明確にしておかないと、運営サイドが閲覧してほしいページが見過ごされたままといった状況もおきかねません。ページ数が多いサイトならば短期限定でもサイトマップのようなものも必要でしょう。
サイトのユーザー層を考える
ターゲットユーザー層を考える場合、職業、男女、年齢など、要素はいろいろあります。ビジネスマン向けなら信頼度の高い雰囲気、若い女性向けならば柔らかな配色とイラストなど、表面のデザインに関わる部分も多いですが、ユーザビリティの面から考えると、ユーザーの「ITリテラシー」と年齢層が重要でしょう。
シニア向けのサイトの場合、文字を大きくすることは誰しもが考えますが、それだけでは不十分です。ログインという概念がわからない、ログイン名とパスワードを覚えられないといったことがよく問題として挙げられています。年齢が若くてもパソコンを始めたばかりの人などは同じようなところで戸惑います。
また、最近はブログを取り入れるサイトも増えてきましたが、ブログという概念を把握していない人の方が全体ではまだ多数派です。
一般のサイトの場合、制作サイドが考えるよりも、ユーザーのリテラシーを低く見積もっておいた方が取りこぼしが少ないでしょう。
技術・情報系のサイトなど、ユーザーのリテラシーが高いと思われる場合は、Ajaxのドラッグアンドドロップによる操作の簡便化やRSS配信などの情報更新も有用ですが、ユーザーテストなどで想定に間違いがないかの検証は必要です。
次回につづく