第15回 リッチメディアのユーザビリティ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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タイトル画像、Webユーザビリティ―信頼を生む“使いやすさ”のデザイン

第15回 リッチメディアのユーザビリティ


「リッチメディア」とは、テキストや静止画だけでなく音声や動画などを複合したメディアを指します。Flashやストリーミングビデオなどもリッチメディアですが、Java、Ajaxなども含めて、動的で多くはインタラクティブ性を持つコンテンツ全体を指します。従来のWebユーザビリティはどちらかというとテキスト主体の静的ページを対象として語られることが多かったのですが、今後はリッチメディアのユーザビリティの研究も重要な課題でしょう。

(解説:石田優子)

著者プロフィール用イラスト [プロフィール]
いしだ・ゆうこ●クロッシングフィンガーズ代表。ユーザーエンパワーメントという手法により、ユーザー視点に立ったサイト構築、コミュニティ運営のコンサルティングなどを行っている。近著に『Webユーザビリティ・デザイン Web制作者が身につけておくべき新・100の法則。』がある。
(イラスト:MIKAさん)
クロッシングフィンガーズ:http://www.crossingfingers.org/
KeiYu HelpLab:http://www.keiyu.com/


表現の自由とユーザビリティの兼ね合い


重くて閲覧しづらいとユーザーが敬遠していたようなナローバンドの時代から、リッチメディアはクリエイターの心をひきつけてきました。HTMLのテキスト以上の表現力を、リッチメディアが持っていたことがその魅力でしょう。

もともと論文のような資料の情報交換用に作成されたHTMLはレイアウトやデザインに制約が大きく、なんとかクリエイターが思うような表現をしたいということで、テーブルをレイアウトに使ったり、透過GIFを使ったり、イレギュラーな工夫がされてきました。現在ではXHTML+CSSでのデザインが主流となりましたが、スタイルシートで表現できることにも限界があります。

このさらなる自由な表現を求める気風に、Flashなどを使いはじめた制作者にとってはいかに独創的な表現をするかが重要で、それがユーザーにとって使いやすいものなのかといった観点がいささか欠けていたことが、リッチメディアはユーザビリティが悪いという評判につながった理由のひとつだと思われます。

しかし、ユーザビリティを最初から念頭に置いてデザインすれば、ときにはXHTMLベースのデザインよりも使いやすく、わかりやすいユーザーインタフェースを提供することも可能です。音声や動画はテキストよりも多くの情報を伝えることもできます。

単にリッチメディアを使うというだけでなく、これからは個性とユーザビリティのよさを兼ね備えたデザインを、いかに実現するかが個々のデザイナーの腕の見せ所になるでしょう。

リッチメディアを使う上での注意点


リッチメディアは何らかのプラグインやブロードバンド環境を前提としたものが多く、環境が整わないユーザーにとっては使いづらいものとなります。この環境の問題は、将来的には解消されていくでしょうが、今のところは、すべてのユーザーを対象にする必要があるサイトなどでは、静的コンテンツのページも用意しておく必要があるでしょう。

その上でリッチメディアを用いるとして、重要なのは、ユーザーがコントロールできる仕組みをできるだけ用意しておくことです。

いきなりサウンドを大音量で鳴らしてボリュームコントロールやサウンドオフができない、あるいはウィンドウを全画面で開き、ウィンドウサイズを変更できない。動画を途中で中断し、前に戻ったり、早送りしたり、興味を持った部分を繰り返して視聴することができない。

このような制作サイドの“押し付け”に出会うと、ユーザーは強引にコンテンツに付き合わされることになって、イライラしてしまうでしょう。

ウィンドウを全画面で開いた場合など、初心者ユーザーはどうすればウィンドウを閉じることができるかわからず立ち往生してしまいます。仕事場で大音量のサウンドが流れたりするのも、閲覧する側には迷惑となります。

YouTube、動画再生画面例
人気のYouTubeには、サウンドのボリューム調節、ウィンドウサイズの拡大、縮小、動画の停止や、自由位置からの再生などのコントロールがついている
テレビからビデオ録画、そしてHDDレコーダと人気が移ってきたように、自分の好きな時間に自分の好きなように利用できる、このユーザーのコントロール権を、ネットではさらに大切にする必要があります。

リッチメディアの利点


ポッドキャスティングや動画投稿サイトが人気を呼ぶ背景には、テキストなどと比較して、よりリアルに近い体験ができることがあるでしょう。

もちろんざっと一読して情報が得られるテキストがよい場合もありますが、印刷物とテレビ、ラジオ、電話がすみ分けているように、静的コンテンツとリッチメディアのどちらがユーザーにメリットがあるか、よりよい体験を与えるかで選択し、リッチメディアが有利ならば積極的に採用することも考慮してよいでしょう。

たとえば、現在注目されている技術のひとつにPIP(Person in Presentation)というFlashと人物映像を組み合わせたものがあります。このPIPを使った入力フォームでは、入力項目の内容を人物が身振りを交えた声で説明し、さらに字幕がつき、入力ミスをすればその都度知らせる仕組みのものがあります。

入力に慣れた人ならばHTMLフォームのほうがすばやくて便利かもしれませんが、初心者にとっては、人物が常にガイドしてくれることが安心感につながります。

オリックス・クレジット、申し込み画面
オリックスVIPローンカードの申し込み画面では、Flashと人物映像を組み合わせたPIPによる入力フォームが採用されている。肉声で解説してくれるので安心感があり、またFlashフォームでは入力エラーをその都度知らせることができるので、ユーザーがミスしにくい
(画像提供:オリックス・クレジット株式会社

このようにリッチメディアは先端技術を好む層に向けてだけでなく、PCに不慣れな層のユーザビリティを高める働きもします。見た目の派手さや流行だからというだけで採用するのではなく、ユーザーの立場からとらえることが、リッチメディアが効果を発揮する決め手となることを忘れないでください。


次回につづく
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