第2回 Eコマースサイトの売り上げを構成するもの | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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文=島元大輔文=島元大輔
大阪のWeb制作会社でWebディレクターとして活躍後、(株)キノトロープに入社。数多くの企業Webサイト構築プロ ジェクトにかかわる。その後、 (株)ライブドアに入社、現在は(株)セシールに在籍。著書として「だから、Webディレクターはやめられない」(ソシム刊)。 url.blog-project.cecile.co.jp/


第2回
Eコマースサイトの売り上げを構成するもの


Eコマースサイトを分析する場合、さまざまな分析方法が考えられるが、今回は“売り上げ”について検証していきたい。売り上げを構成する要素である「購入者」「単価」「リピート回数」について、掘り下げて解説していく。


Eコマースサイトの“売り上げ”について


売り上げの構成要素
Eコマースサイトの売り上げを構成する要素は、「購入者」「単価」「リピート回数」の3つで、これらを掛け合わせた数値がイコール売り上げとなることは前回説明した。これら3つの数字をそれぞれ増やしてやれば、売り上げもそのぶんアップするのだが、現実はそんなに甘くはない。購入者数が増えると単価が下がったり、単価を上げると逆に購入者数が減ったりする。非常に密接に関係するこれらの数値を全体的に上げるにはどうすればいいか、その手法を紹介する。ただそこには、玉手箱のようなものはなく、ふだん耳にしている事柄が多いことに気づくだろう。重要なことは、これらの手法を目的をもった施策として意識することだといえる。

購入者数を増やす手法
購入者について掘り下げると、会社や商材によってさまざまだが、一般的には以下のように定義されることが多いだろう。

(1)新規購入者 …まったく新しい顧客
(2)継続購入者 …1年以内に購入経験がある顧客
(3)休眠購入者 …1年以上購入がない顧客


こうした購入者の数を増やすためには、顧客ごとに施策を変えていくのが一般的である【1】。

(1)新規購入者 … SEO、アフィリエイト、リスティング、純広告、モール出店
(2)継続購入者 …メールマガジン、ハガキなどの紙媒体
(3)休眠購入者 …メールマガジン


たとえば、単価やリピート回数は同じなのに、購入者数が減っているという分析結果が出ている場合は、新規顧客の獲得か継続顧客の維持ができていないということなので、新規顧客の獲得を続けながら、引き続き買っていただく継続顧客をつなぎとめておく施策をとる。購入してもらえない顧客数以上に新しい顧客を獲得できれば、自然と購入者数は増えるはずだ。また、休眠顧客は継続顧客が脱落した結果であるので、基本的には継続顧客に対する施策と近いものとなる。

購入者の詳細内容
【1】購入者の詳細内容


単価を上げる手法

購入者数を増やすことも非常に大切なことだが、それだけコストがかかることも事実だ。単価を上げることは売り上げ全体に影響を与えるので、インパクトは大きい。たとえば、5万人の購入者がすでにいて、単価を100円上げるということは、それだけで500万円の売り上げアップにつながる。しかし、この100円という大したことがないように思える数値が、実は非常に高いハードルとなる場合があるので注意したい。

単価を上げる手法としては、おもに以下のふたつが考えられる。

(1)購入商品数を増やす
(2)商品自体の価値を上げる


(1)についてはクロスセル、(2)についてはアップセルといわれる販売アプローチを行う。たとえば、Amazonで商品を購入しようとすると「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」と、別の関連商品を提案されるが、これがクロスセルだ。Webサイトに訪れる顧客全員に追加で商品をお薦めすることで、1人当たりの平均購入点数を増やすことが可能になる。それに対してアップセルは、パソコンの買い替えを考えている人に対して、今よりも上位スペックの商品を薦めることだ。ワンランク上の商品を購入してもらうことが商品自体の価格アップにつながる。これは、商材によって有効に使うことができる施策である。

リピート回数を増やす手法
リピート回数と単価とのバランスは非常に難しい。単純に何度も買ってもらうためにメールやキャンペーンを打ったとしても、1回当たりの購入単価が下がっては、コストがかさんで結局利益が下がったということになりかねない。単価を維持しながら、リピート回数を増やす施策を考えなければならない。

リピート回数を増やす施策として、広く活用されているのがロイヤリティプログラムだ。常連客に対して、一般の顧客とは違う手厚い特典やサービスを提供するプログラムである。顧客を囲い込むことで得られる効果は大きいといえる。

また、Webサイトへのアクセスを促進する施策もひとつの手法として挙げられる。たとえばゲームコンテンツなど、本来の目的とは少し違うように見えるものでもコンテンツの魅力でWebサイトへアクセスを促し、購入へつなげることが可能だ。もちろん、その効果は企画内容によるものが大きいため、中長期的な戦略を立てたうえで施策を打っていく必要がある。

サイトリニューアルの意義
Eコマースサイトをテコ入れするために、サイトをリニューアルするという話を耳にする。何をテコ入れするかにもよるが、サイトリニューアルによって得られる効果としては、コンバージョン率の向上、サイトイメージの向上、運用作業の軽減(コスト削減)が考えられる。しかし、いずれもかなり力を入れて行わない限り、爆発的な効果は得られないし、そのぶんコストもかかる。そのため、リニューアルという発想の前に、ほかに改善できる方法はないかを考える必要がある。

1. コンバージョン率向上のために
コンバージョン率の向上のためにサイトリニューアルを行うことはあるが、本当にリニューアルをしたことによって、コンバージョンがアップするのかを見ることが大切である。サイト全体をリニューアルしなくても、主要導線(カート→レジ→入力画面→確認画面→完了画面)をつくり替えることで、コンバージョンアップを実現することができる。リニューアルという形式をとるよりも仮説・実行・検証を繰り返しながらマイナーチェンジを繰り返す方法が適切な場合もある。

2. イメージ向上のために
サイトデザインを変更することで、イメージアップを狙う方法がある。しかし、この部分の効果を測るのは非常に難しいのが現状だ。また、サイトリニューアルを行うことのみでイメージ向上を図ることは難しい。商品自体の質の向上、サービスの向上、あるいは企業イメージの向上、すべてにおいてバランスをとる必要がある。サイトリニューアルだけでは本質的なイメージの向上にはつながらないのが現実である。

3. 運用作業の軽減
サイトリニューアルの要因としていちばん多いのが運用作業の軽減ではないだろうか。全社的なシステム改変に巻き込まれることなども含めると、外的な要因で行われることもある。この場合、気をつけなければならないのは、コストをかけすぎないことである。運用作業の軽減=コスト削減のために行っているのに、そこにコストをかけすぎるといったい何のためにリニューアルを行っているかわからなくなってしまう。

今回は売り上げを構成する3つの要素(購入者数・単価・リピート回数)を解説した。それぞれ掘り下げて分析を行うことにより、今、問題がどこの部分にあるかを把握することが重要である。もちろん、これらはWebマーケティングのごく一部のことなので、今後はさらに掘り下げた内容をお伝えしていきたい【2】。

マーケティング構成図

【2】マーケティング構成図


本記事は『Web STRATEGY』2008年 1-2月号 vol.13からの転載です


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